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【能登半島地震】ウクライナ避難民も被災…不安抱える外国人

※文化時報2024年2月6日号の掲載記事です。写真は日本航空高校石川提供。

 能登半島地震では多くの外国人も被災した。ウクライナから戦火を逃れて日本航空高校石川(石川県輪島市)で高校生活を送っていたヴァレリア・ロトリエヴァさん(18)は暮らしている市営住宅で地震に遭い、軽傷を負った。能登地方の企業や工場で働いていた東南アジアからの外国人技能実習生=用語解説=は金沢市などに2次避難し、慣れない土地で不安な日々を送っている。(山根陽一)

命あれば希望あり

 元日の地震が起きた時、自宅にいたロトリエヴァさんは母のナタリアさん(40)と共に、部屋着のまま靴も履かずに飛び出した。地面が大きく揺れ、立っていられない。「倒れた瞬間、アスファルトの地面が大きく割れ、亀裂から水が流れているのが見えた」。はったまま、何とか壁に向かって進み、立ち上がった。気が付けば腕も膝も傷だらけだった。

被災直後の日本航空高校石川(同校提供)

 ロトリエヴァさんはロシアからの侵攻を受けて2022年に来日。同年6月から、ウクライナ避難民を受け入れる日本航空高校石川に通っている。昨年7月には公益財団法人全国青少年教化協議会(理事長、服部秀世・曹洞宗宗務総長)主催のウクライナ問題の報告会に出席し「自由になることを諦めない。一日も早く平和を取り戻したい」と語っていた。

 同校国際部で留学生を担当する安寅奎(アンリンス)さんは「平穏な生活を求めて来日したのに、大きな自然災害に遭遇した。だが、4月から金沢市の大学への進学が決まっており、前向きな気持ちは変わらない」と明かす。

 ロトリエヴァさんは1月7日、系列校の日本航空高校山梨(山梨県甲斐市)に避難したが、一日も早く輪島市に戻ることを願っている。「避難場所を確保してくれた学校に感謝したい」と語り、「地震で家具は壊れたが、命は救われた。今の希望は通常の生活に戻って勉強を続けること」と前を向いた。

現在は日本航空高校山梨に通うウクライナ避難民のヴァレリア・
ロトリエヴァさん(中央)と母のナタリアさん(右)
=日本航空高校石川提供

受け入れの不備露呈

 石川県珠洲市、七尾市、能登町、穴水町には、インドネシアやベトナム、ミャンマー、ラオスなどから多くの外国人技能実習生が訪れており、水産業や食品加工業などに従事している。多くは金沢市内などに避難したものの、ライフラインの復旧が見通せず、被災した職場に戻ることができていない。

 外国人支援を行うNPO法人YOU―I(ユーアイ、石川県野々市市)は、多言語相談窓口サイトを開設して日本語が不自由な外国人の孤立防止に努めているが、実情は厳しいという。

 技能実習生は基本的に職種の変更が認められておらず、雇用主が被災した場合でも、すぐに異なる職業に就けるわけではない。母国への仕送りどころか日々の生活も困難で、将来への不安を募らせている。

 山田和夫代表理事は「今回の地震で、外国人受け入れ政策の不備があぶり出された」と指摘。「海外からの人材あっせんは、これまで人をモノのように扱い中間マージンを受け取るだけのビジネスだった。外国人支援に本気で乗り出さなければ、日本は選ばれない国になる」と訴えている。

【用語解説】外国人技能実習生
 開発途上国の「人づくり」に貢献するため、技術や知識を学び、母国の発展に寄与してもらうための在留資格「技能実習」で来日した外国人のこと。名目上は「労働力として雇用するための人材」ではないとされているが、実質的には雇用の調整弁として受け入れられている。低賃金や長時間労働などの劣悪な労働環境が近年、社会問題になっている。

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