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袴田事件から学べ

※文化時報2023年3月31日号掲載の社説です。

 国家による究極の人権侵害である冤罪と、裁判をやり直す再審に対し、宗教界は今こそ目を向けるべきだ。

 1966(昭和41)年に静岡県で起きた一家4人殺害事件で、東京高裁は13日、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さんの裁判をやり直す再審開始決定を出した。検察側は20日、最高裁への不服申し立てに当たる特別抗告を断念すると発表。袴田さんは無罪となる公算が大きくなった。

 再審開始の決め手となったのは「犯行時の着衣」とされた5点の衣類だった。袴田さんが働いていたみそ工場のタンクから、逮捕の約1年後に発見され、証拠として採用されたものだ。

 ところが、衣類に残っていた血痕には赤みがあったにもかかわらず、再現実験を行うと、化学反応で消えることが分かった。これによって、東京高裁は「衣類が1年以上みそ漬けになっていたことに合理的な疑いが生じている」と判断。捜査機関が証拠を捏造した可能性が「極めて高い」と指摘した。

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