【映画】「エベレスト3D」感想・レビュー・解説

内容に入ろうと思います。
1953年に初めてエベレスト登頂が成功して以来、多くの登山家がエベレストにアタックしてきた。彼らの4人に1人は、命を落とした。
やがて、エベレスト登頂をビジネスにする者が現れ始める。1996年、エベレストには20以上のパーティがひしめき合い、大混雑の様相を呈していた。
その一つが、AC社率いるパーティだ。ベテランガイド何人かで、顧客を登頂させる。雑誌記者のジョン・クラカワーも同じパーティに属し、登頂の様子を取材することになった。
エベレスト登頂には、長い準備が必要だ。ベースキャンプと、より上のキャンプとを往復することで高度に順応させ、それから決行の日を迎える。しかしその高度順応で思わぬ状況に見舞われる。あまりにもパーティが多く、登山路が渋滞するようになったのだ。AC社の隊長であるロブは、他のパーティと話し合い、登頂日をズラそうと話を持ちかけるが、話を聞く者はほとんどいなかった。唯一、あるパーティと協力して登頂を目指すことになった。
5月10日。その日がやってくる。エベレストは、14時までに頂上から下山しなければ危険だ。彼らは、アタックを始める…。
というような話です。

ジョン・クラカワーが同じパーティで登るという話が出てきた時、もしかしたらこれは実はなのかなと思いましたが、最後まで見てやっと実話だと判明しました。エンドロールは英語だったのでよくわかりませんでしたが、恐らく、ジョン・クラカワーのベストセラー「空へ エベレストの悲劇はなぜ起きたか」がベースとなっているのではないかと思います。

物語は、実に淡々と進んでいきます。どんな面々が登ろうとしているのか、ベースキャンプはどんなところなのか、高山病やその他もろもろの症状の怖さなどを描きながら、淡々とエベレスト登頂のための準備の場面を描いていきます。

最初の方で重きを置かれるのは、やはりメンバーの人となりの描き方でしょうか。過去2度エベレストにアタックして失敗した郵便局員、家族を残して挑戦する者、世界7大山(表現は間違ってるでしょうけど)の6つを制覇し、最後の一つであるエベレストに挑戦しようとしている難波康子、もうすぐ子供が生まれる身である隊長のロブ。主にこの4人を軸に、どんな背景を持った人間が登ろうとしているのかを描いていきます。

印象的だったのは、ジョン・クラカワーが問いかけた「何故山に登るのか」という問いとその答えだ。多くの者が、家族などを犠牲にし、多額のお金と恐ろしくしんどい思いをしながらエベレストを目指す。何故そこまでして登るのか、と。それに対して郵便局員であるダグは、「登れるからだ」と答える。登れるのに登らないのは罪だ、と。この答えはちょっと印象に残りました。

基本的に物語は、至極順調に進んでいきます。特段トラブルらしいトラブルもないまま、ベレスとの頂上へたどり着きます。しかし、トラブルの予感はそこかしこに感じさせます。まだ酷い状況にはないけど、これはちょっとマズイことになるぞ、という予感が。そして、登頂後、彼らは悲劇に見舞われることになります。

この映画を、どんな映画だと思って見に来たかによって評価は違うだろうけど、やはりどうしても前半は退屈ではあります。それは、この映画が3Dだったということとも、多少は関係するでしょう。わざわざ3Dにするぐらいだから、もっとスペクタクル的な映像なのではないか、という予感を抱いてくる人は多いのではないかと思います。この映画は正直、後半まで行ってもさほどスペクタクル的な映像はなく、なんでこれは3Dだったんだろう?と若干感じました。そういう意味で、特に前半はより退屈に感じられる人も多くいるかもしれません。
後半は、もちろん事実に沿った流れだろうから、物語的に見て強い展開があるわけではありません。とはいえ、事実が持つ重みみたいなものがじんわりと伝わってくる展開になっていきます。エベレストという極限の状況の中での、人々の極限の決断が描かれていく。フィクションではないので、人はあっさり死ぬし、ヒーロー的な行動を取れる者も多くはない。もちろん、打てる手はほとんどないという状況の中で出来ることを可能な限りやりきろうとする者もいる。エベレスト登頂をビジネスにしようとした者を嘲笑うかのように襲い掛かってくるエベレストという自然の脅威と、その中にあってはほんの僅かな存在でしかない人間の有り様が、現実の重さを感じさせる。

映画を見ながら僕は、どうやって撮ってるんだろうか、と感じる場面が実に多かった。実際に撮っているのか、CGなのか、それさえ僕には判断できないけど、どちらにしても凄いな、と。実際に撮ってるのだとすれば、空気が薄くてヘリコプターすら飛ばせない場所で、どうやってあんな全景の絵が撮れるのか。CGだとしたら、役者は一体どんなセットで演技をしているのか。そして、全然CGと思えない迫力ある映像をどう作ったのか。いずれにしても、普通には体感不可能な映像を見ているという興奮みたいなものは、映画を見ながら感じました。

自然の圧倒的な存在感を実感させられる映画です。

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