【映画】「ビジランテ」感想・レビュー・解説

内容に入ろうと思います。
とある田舎町。市議会議員を務める神藤二郎の父で、かつて土地の有力者の一人だった男が死んだ。かつて男は、毎晩のように三兄弟を殴っていた。それに耐えきれなくなり、兄である一郎は子どもの頃に家を飛び出した。それから姿を見ていない。三郎は父とは関わらず、地元でデリヘルの店長をしている。
父の死が、ある問題を引き起こした。
父が所有していた膨大な土地の内、下ノ橋地区の土地を含む敷地に、アウトレットモールを誘致する計画が持ち上がっている。二郎は議会の有力者から、その土地の相続だけはちゃんとやれ、と言われていた。しかし、30年ぶりに戻ってきた兄・一郎が、なんと公正証書を持っていた。つまり、遺産の相続権は一郎にあるということになる。
大々的な計画として動き出しているアウトレットモール誘致の計画のためには、なんとしてもその土地が必要だ。しかし一郎は、頑としてその土地の権利を手放さない。土地の相続などに興味のない三郎も、この騒動に巻き込まれ、様々な勢力が蠢く中、三兄弟を取り巻く状況が激変していく…。
というような話です。

いわゆる、ノアールと呼ばれるような世界観で、もちろんそういう作品だと思って観に行ったんだけど、やっぱりちょっと合わなかったかなぁ。どうしても物事に理屈を求めてしまうから、色んな人間の行動原理が捉えにくいとすっきりしない。もちろん、現実の世界というのはむしろそうで、なんだかよく分からないまま日々色んなことが起こっているんだけど、せめて物語の中でぐらいは、ある程度は理屈が欲しいと思う。この映画では、何故一郎が下ノ橋地区の土地に固執したのかとか、二郎の妻は一体何をしているのかとか、三郎は三兄弟で集まって一体なんの話をしようとしていたのかとか、他にも色々あるんだけど、そういうことが少なくとも僕にはイマイチ理解できなかった。もちろん漠然と想像出来る部分もあるけど、まったく分からないものもある。個人的には、何故一郎があの土地に固執したのかという部分が一番謎だった(映画から読み取れるのかなぁ、この点って)。

個人的に気になったのは、本編ではなくエンドロール。最初は意識してなかったんだけど、後から思い返すと、エンドロールには役者の名前しか表記されてなかった。つまり、作中の役名が一切記載されていなかった。そんなエンドロール、正直見た記憶がないから、印象的だった。

そう考えると、三兄弟の名前が一郎・二郎・三郎だったことも意味があるのかもしれない。ほとんど個性を感じさせない名前をつけることで、「名前をつけること」「名前を持つこと」全般に対しての意味のなさみたいなものを出そうとしているのかなぁ、とか。ただそれが、映画全体に対してどんな役割があるのか、そういう分析は僕には出来ないのだけど。


三兄弟役のそれぞれの役者の演技は、やっぱり迫力があって、雰囲気が出てて凄いなと思いました。そんなアホみたいな感想しか書けないのが残念ですが。

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