【映画】「愛の渦」

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人間は理性的な生き物で、普段理性の皮を被って生きているけど、その皮を剥いでみても、結局あんまり変わらないよなぁ、という風に思った。

セックスのために集まった初対面の人間の関係性は、5時間という限定的なものだけど、結局、それぞれの社会性みたいなものを浮き彫りにしていく。というか、欲望が絡んでいるから、むしろその社会性がより強調されたような形で現れているように感じた。強い者は強く、弱い者は弱く、という風に。セックスという、あまりにもシンプルすぎる価値基準しか存在しない空間だからこそ、余計に、見た目や年齢などの分かりやすい評価軸で判断される。

もちろん、それだけの映画ではない。物語の中盤以降、それらの評価軸が様々に歪んでいったり、新たな要素が加わったりという中で、物語らしさが生まれていくのだけど、僕はこの映画を、「それがどんな空間であれ、たとえ欲望のみによって関係が規定される場であっても、複数の人間がいればそれは社会となり、人間は社会性とは無縁でいられない」というような映画だと受け取った。

だから、「あそこにいたのが本当の自分だと思ってます」というセリフは、僕にはしっくり来た。

ただ、もちろん、誰しもがきっと「別の自分として存在するため」にあの空間を目指しているのだと思う。だから、現実に「別の自分として存在する」という目的を達成することができたかどうかに関わらず、あの場にいた自分を「別の自分」と捉える感覚も、確かにその通りだな、と感じた。

社会性とは対極にある空間を描き出すことで、結果的に社会性を浮き彫りにしたり、異常さをより際立たせるところが、この映画でやろうとしていたことなのかなと思ったし、面白いと思う点だった。

内容に入ろうと思います。
毎晩マンションの一室で開かれている乱交パーティーに、男女4人ずつ、計8人が集まった。最初は探り探りの会話から始まり、徐々にセックスへと流れていく中、最後に残ったのが、無職の青年と大学生の女性。彼らはぎこちないながらもコミュニケーションを取り、セックスのために階下に向かう。そしてその中で、この2人には、何か特別な感情、あるいは関係性が芽生えていることを予感させる。
内紛がおきたり、あらたな参加者がやってきたりと波乱を迎えつつ、深夜0時から5時までの時間をそれぞれが過ごしていく。そして朝…。
というような話です。

面白かったかどうかという点からすると、凄く面白かったわけではないけど、全員が初対面でありながらこれからセックスをするつもり、という、通常はあり得ない環境の中での、8人それぞれの関係性の築き方に個性があって、しかも「ありそうー」って感じの描写だったので、そういう点は面白いなと思って見てました。前半の、みんなが慣れ始める前までの会話は、内容的にはまったく大したものではないのに全体的に緊迫感があって、ぞわぞわさせられました。

詳しくは書かないけど、途中の展開は、この異常な空間に見合う異常さが描かれていて、映画全体の構成として良かった気がしました。映画として成立させるためには、乱交パーティーの実際の感じに近づけすぎるとたぶん色々と無理が生じてくるだろうけど、でも乱交パーティーらしさも必要。そういう絶妙なバランスを、登場は短かったけどあの2人が担っているような感じがしました。

あと、どうでもいい話だけど、エンドロールを見て「新井浩文」の名前を見て(見ている時は新井浩文とは気づかなかった)、映画の内容が内容なだけあって、複雑な気分になりました。

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