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石で作られてるものはシンプルに古そうに見えて脳汁が出る 特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」を観てきたレポ

個人的伝説的名作ゲーム「サルゲッチュ」をご存じだろうか。
頭にパトランプを付けたら知能を得たサルがタイムマシンをつかって歴史上様々なところに散らばったのを一匹ずつ捕まえていくゲームだが、その中に
「ナンデココニいせき」「ダレガタテタいせき」というステージがある。
名前の通り遺跡をモチーフとしたステージなのだが、やたら古そうに見える。グレーに黒でノイズが入ったような石造りの建物や装飾が出てくるのだが、もうそれだけで格段に古く見える。
石で作られているものは、シンプルに古そうに感じる。

東京国立博物館で2023年6月16日(金)~2023年9月3日(日)に開催中の特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」は、まずシンプルに「石で作られたシンプルに古いものがめちゃくちゃ観れて脳汁が止まらねえ!」となる。石で作られたシンプルに古いものが好きな人は観に行くとよい。ものすごい数の古いものが並んでいてゾクゾクする。

そもそも、「人間が作ったもの」が1000年規模で遺り、現代にその姿を見せてくれるだけで、僕はたまらないロマンを感じる。だから、「ハム語族」が出てきた瞬間に世界史を挫折した僕でも博物館めぐりをするのだ。恐竜の化石が数千万年の時を経て出てくるのとはまた違ったロマンがある。


さて、特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」。はっきり言おう。
僕はこの地域のことも歴史のこともびっくりするほどわからない。スペイン語の地域だから、大航海時代にスペインの植民地にされたりしたのかな、程度の認識しかない。だから品々を見てもアカデミックな感動が得られない。そこに後悔がとてつもなくあり、世界史の勉強をしたいと痛感した。オススメの書籍とかあったら教えてほしい。

そんな僕からでさえオススメできる展示物は、今回の企画のキービジュアルにもなっている「死のディスク」「赤の女王のマスク」「鷲の戦士像」だ。
まず展示そのものより着目したいのは、展示エリアの作り方だ。
展示品の保護もあるので照明が暗めなのは当たり前として、随所の壁に巨大な遺跡の写真が貼ってあり、目の前の展示物のバックボーンが体感として感じやすくなっている。
また、展示物ごとのエリアの作り方も非常によかった。壁際のショーケースに並べられている品々はあるコンセプトに沿って集められており、広めのエリア中央部に点在する品物はそのエリアの象徴的なものが360度眺めることができた。
随所に映像での展示もあった。「この企画はこういうものです」「このエリアの展示物はこういうものです」「こういうところから出土しました」というのが短めの映像でまとめられていたが、この映像で足を止める来場者が多く、人の流れにアクセントがついていた。この90秒間隔程度のアクセントがついているおかげで、うまくすると展示という展示に「人が少ない時間」があちこちに生まれ、「展示内ぜんぶ写真撮影OK」というのが最大限発揮されていた。たまたまかもしれないが、とてもおもしろかった。

観た人はわかるだろうし、観ていない人にその感動を味わってほしいので、展示物の写真は貼らない。
だが、僕がもっとも心震えた展示は、「赤の女王」だ。
今までの人生のなかで博物館や史跡などをめぐる中で、「写真撮影OK」の6文字があればたいてい何でも写真に収めて楽しんできたが、「赤の女王」関連の展示エリアだけは、その展示方法、遺物が放つ雰囲気、そして演出に、撮影を躊躇った。展示を直視するのさえ憚られた。あの空気感を演出したスタッフに心から拍手を送りたい。素晴らしい展示だった。


東京国立博物館は、開館から遊びに行き、1日中展示を見て、建築を見て、庭園を見て、「ああ、いま俺、学びを得ている」という実感が得られる非常に楽しく広大な施設だ。特別展「古代メキシコ」は大人2200円だが、特別展のチケットで常設展も観られるのでぜひ1度遊びに行ってみてほしい。
わからないものを観ても、「わ~!わからねえ!なんだこれは!古い!」だけでも良い。ここで見たものがいつかどこかで「あ、これあのときのあれだ!」となるコネクティング・ザ・ドッツがあるかないかで、人生の豊かさは絶対に変わってくるはずなのだから。

東京国立博物館
特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」
2023年6月16日(金) ~ 2023年9月3日(日)


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