「ワルキューレ FINAL LIVE TOUR 2023 Last Mission」を楽しみにしすぎて様子がおかしくなっている友人の保護者としてライブについて行ってみた

5月20日、有明アリーナという大きな会場でライブを観た。
ワルキューレ FINAL LIVE TOUR 2023 〜Last Mission~

と銘打たれたそのライブに、僕はついていった。マクロス全シリーズが大好きでワケわからなくなっている友人が、プラモデルや超合金のヴァルキリーを買い漁りすぎて生活費が足りなくなり週5の本業と週2の副業でお金を稼いで錯乱状態になりすぎた結果ライブチケットを2枚申し込み、見事当選し、誰も一緒に行く相手が見つからなかった結果、マクロスFのテレビシリーズをちょこっと観たことある程度の僕に白羽の矢が立った。

マクロスΔは、ライブに行くことになってからテレビシリーズを観た。「まぁ、面白かったな~」程度のふんわりした感想を持ち、キャラクター名もほとんど忘れた頃に5月20日がやってきて、僕はマクロスに関する予備知識の数々を忘れ去ったまま有明アリーナに来てしまった。本当は友人も劇場版を観せようとしたりしていたが、突然キングダム全巻読み直したくなったり突然ドクターストーンのアニメを観返したくなったり『完全教祖マニュアル』を読んだりしているうちに当日になってしまった。

おそらく、あの日に有明アリーナや全国のライブビューイングの会場に足を運んだ人の中でもっともライブに対する熱意の少ないまま向かった僕は最もヴァールに近い存在だっただろう。誰か俺を粛清してくれ。


すべてを忘れ去った僕が会場に入って最初に観たのは、ものすごいステージ。どう見ても「空母のエレベーター」な設備があり、テンションがあがる。
ライブ前に会場が若干モクモクと霧が立ち込めているのはなんなんだろう。どのライブに行ってもだいたいそんな感じになっている。コミケ雲みたいなやつなんか?

ライブについての感想の前に、前提を記しておく必要がある。

本来、僕は割と過激な思想を持っている。
「声優は声優。表に出て活動する必要はない」
昨今では当たり前になった声優が表立っての活動をすることに、僕は「必要ない」と思っている。
「顔を観てがっかりした」とかそういうことではない。
身体をつかって演技表現をするなら俳優。
歌を歌うなら歌手。
ダンスを踊るならダンサー。
全部やりたければアイドル。
「アニメ映画の話題作の声優に俳優をつかうな!」と普段から主張する僕が、自分の一貫性を保つために「声優は声優をやるべし」と思っている。
そういえば、声優の「アーティストとしての活動」以外のライブは初めて来る。
アニメキャラクター名義でキャスティングされた、アニメのライブという形の演目に、僕は初めて来たのだ。

マクロス関連楽曲も多少知っている程度、オタクとしての一般教養レベルでしか知らない。本当にお前もう帰れ、と怒鳴られても反論もできないほどのぺらぺらの知識と熱意で座席に座っていた僕が観た2時間30分ほどのライブは、間違いなく「ワルキューレ」が「そこにいた」。

「マクロスΔ」の作中で、戦術音楽ユニットの「ワルキューレ」は人々の希望の灯のような存在になっていたと記憶している。
僕は人生の中でアイドルにハマったこともなければ、いわゆる「推し」のような感覚を明確に持ったこともない(便宜上「推し」という言葉を使うのが円滑なコミュニケーションになると判断したことはあるが、それはそれだ)。

正直熱量がなかった僕に、たまたま会場に居合わせていたレベルの僕に、ワルキューレの歌はゴリゴリにぶっ刺さった。

正確な人数はわからないが、5桁規模のライブで声出しOKで、しかも8年活動してきた戦術音楽ユニットがライブをやるとこんなにも圧倒的なパフォーマンスを見せるのかと度肝を抜かれた。

この際だからはっきり書くが、「ま、どんなもんかお手並み拝見しましょうかね」レベルに上から目線で会場にいたのを、開始10分で粉砕された。

あそこにいたのは紛うことなき、ワルキューレだった。

僕が見たツアー1日目を総括しての感想を書けば、「ワルキューレ」というよりも「マクロスΔ」のライブだった。劇場版エアプだった僕には意味不明だったり知らない曲だったりもたくさんあり、前提知識が足りなかった部分はたくさんあった。
しかし、それを補ってあまりある、JUNNAの歌唱力たるや。
あんなに歌が上手いを通り越して「歌唱力で殴る」人のライブは初めてだったのではないかと思う。横隔膜5個ついてんのかという声量、人生5回まわってきたかのような表現力。あと顔がよかった。
明らかに歌唱面で引っ張るJUNNA。残りのメンバー4人が圧巻だったのはライブパフォーマンス。カメラ目線でキャラを意識したポージングを取る、立ち居振る舞いを見せる、キャラ同士の関係性を表現する。その部分は明らかに「声優」の域を超えた、新たなるなにかだった。

アニメから数々のユニットが現実世界に現れてきた。記憶にあるものだけでも、探偵オペラミルキィホームズ、EGOIST、Girls Dead Monster等々、次々思い浮かぶ。だが、「アニメを現実世界に連れてきた」ような存在として、ライブパフォーマンスとして継続してきたようなユニットは、パッとは思い浮かばない。

本来フィクションであるはずのそれを、現実世界で魅せてくれる。それは非日常体験であり、可能にしているのはメンバー5人のたゆまぬ努力と、エンターテイナーの資質がかみ合い、数々のスタッフやクリエイターが下支えとなり、生み出されている。
最後のツアーと銘打たれているが、僕はこれを目の当たりにできたことを本当に幸運に思う。
明らかに日本人の5名の演者がマクロスのキャラクターに見える瞬間が何度も何度もあった。
そうそうない稀有な体験だった。


余談だが、ライブ終了後、僕は友人ににっこにこでチケット代を払った。
金を払ってでも見るべき最高の時間だった。


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