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井の頭公園の散歩(4)御殿山の雑木林は私にとっては奇跡の森

 松本訓導殉難の碑の周辺は、御殿山と呼ばれ、昔ながらの雑木林が残る静かな場所である。

 私ごとであるが、私にとっては奇跡の森なのである。

 今から16年前、2005年10月初め、ステージ4期Bという末期中咽頭癌の1回目の治療を終えて退院した私は、退院したら木々がそよぐ中に身を置きたいという願いを叶えるべく、女房の肩を借りてこの場所に来た。

 そこは、高木が円形状に並び、仰ぎ見ると小枝が風に揺られている。その高木の先の空を見ていた時だった、突然キラキラと細かい金箔のようなものがシャワーのように降りそそいできた。一瞬の出来事だった。自然に涙があふれ、「生きたい」と思った。

 その後、2回目の治療を行う前に、原発部分と転移した舌や両リンパ節など全ての癌が奇跡的に消えたことを知らされた。井の頭公園に助けられた2番目の場所となった。


ぶんしん出版+ことこと舎便りVol.4 2021/9/10」掲載

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