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車のグレード商法オワコン化を感じた、ポルシェのEVタイカンを体感した話。

アイディ e-tronスポーツバックに続き、ポルシェのフルEVであるタイカンの試乗車がディーラーに来たので試乗、体感してきた。(どうしても”タイカンを体感”と言いたい病)

グレードはタイカン ターボ。「EVなのにターボ?」というツッコミはあるけど、もはや、ポルシェはエンジン車でも素のグレードからして実態はターボがついており、ポルシェにおけるターボは「グレードとして速いやつ」の記号的な意味になっている。

ちなみにタイカン ターボの0-100km加速は3.2秒。サーキットでなければ試せないレベルで、街なか試乗ではアクセルを開けきれない。

深海魚なエクステリアと、先進的なインテリア

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デザインは個人の好き嫌いの世界だが、正直フロントマスクは少し深海魚っぽくて、個人的にはそこまで嫌でもないけど、すごく愛せる気もしないのが第一印象。

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一方でリアのデザインは保守的で、最近のポルシェデザインの文法に沿って、パナメーラや911と共通の一文字で結んだLED。これはもう見慣れたし、何も違和感はない、いつも通りのポルシェ。
ディーラーでも、タイカン専用スペースというかEV充電スペースを設置し、床も充電設備をPRしており、ポルシェ ジャパンの気合を感じる。

実際にシートに乗り込むと、思ったよりもシート位置が低い。つまり車内に低く体がうまり、スポーツカーっぽいシートポジション。

インテリアデザインの要素を細かくみればいつものポルシェっぽいが、角のとれた少し柔らかいフォルムで、似たサイズのポルシェ同門パナメーラよりも、少しソフトで洗練された、そしてちょびっとだけ素材感含めてECO感ある印象。

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メーターまわりは、メーターフードがほぼなく、少しプラスチッキーにも見えるけど不思議と安っぽさはない。インテリアは過去との継続性と先進感~ECO感をバランス良く手堅くまとめている。

走らせるとEV云々ではなく、車体の挙動が完璧すぎる異次元の進化を感じる車

タイカンはバッテリーのせいで重量2.4トン弱なものの、実際に走らせるとスポーツカーのテイストがありつつ、乗り心地も恐ろしくいい。アウディのA6~A8も恐ろしいほどのフラットライドだけど、タイカンはスポーツカーばりの低重心と挙動でありながら乗り心地がいいという、これまでどの車でも感じたことがない新しい次元の二律背反を克服した乗り心地。

車重が重くても重心が低いと、こんなに新しい世界の乗り心地があるのかと感動する。(何かの記事で呼んだが、重心そのものはスポーツカーの911より低いらしい。おそらく過去のガソリン車にはないレベルで重心が低いことで、サスを無理に固めなくても車体のロール*傾きを抑えられるため乗り心地が良いのでは?と推察できる)

ボディサイズは大きな車だが、決して直線番長ではなく、重いのにコーナリングも楽しい。ステアリングの剛性感やコーナーの振る舞いは、完全にポルシェ。車の姿勢制御は新次元で、完璧と呼べるレベルで、ひたすら4輪のタイヤがきれいに路面に接地している安心感がある。(ちなみにポルシェからお金もらって書いてる記事ではない笑)


動力はエンジンではなくモーターのフルEVなので、ひたすらにスムーズで、音も静か。スポーツモードにするとやや派手なSFのワープ音みたいな電子音が車内に響く。でも、物理的な排気音とは違うし、音でアドレナリンが出る感覚はない。個人的にはディズニーランドのスペースマウンテンに乗ったときみたいな気分になる音(笑)

アクセルと連動した電子音と、完璧に制御された車体の挙動フィーリングにより、よくできたテレビゲームの車を運転しているような新体験。

個人の趣味としては、エンジン音と振動の鼓動が欲しい守旧派なので、自家用車を一台だけ選べと言われれば時代に逆光してもエンジン車を選びたい。でも、そんな自分でもタイカンはかなり惹かれるデキの良さで、初めてEVで欲しいと思えた車だ。

これまで、日産リーフ、テスラ、アウディe-tron、ポルシェ タイカンと4メーカーのEVに短時間ながら乗った経験があるが、タイカンは初めて、動力源のモーターによる進化ではなく、車体の挙動として新しい次元に進化したものを感じた。

過去のEVに惹かれなかった人にこそ、乗ってみて欲しい。価格の高さを除いたら、4人乗りで家族も乗れる最強~完璧なスポーティーなファミリーカーだと思う。

ただ、リアシートはかなり頭上が低めなので、後席に小さな子どもではなく中高生や大人が乗るならば、リアシートの頭上が高いタイカン クロスツーリズモというワゴンバージョンのほうがおすすめ。

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クロスツーリズモは、エアサスの長さが伸びて、ある程度オフロードもいけるので家族キャンプもOKという万能選手。

動力がEVになっても高級ブランドは生き残るのか?答えはYes!

今回のタイカンと前回のアウディ e-tronの試乗経験でよくわかったのは動力がエンジンからモーターになっても、シャシーやステアリングのフィーリングにはメーカーブランドの個性が色濃く残るし、そのフィーリングにブランド間の個性や違いは大きくあるということ。

アウディe-tronはエンジン車からEVの変化で違和感ゼロと書いたが、ポルシェのタイカンはむしろEV化でバッテリーによって低重心化したことにより、シャシーの性能やフィーリングが更に研ぎ澄まされ、新しい次元に進化した感すらある。(私はポルシェは2台所有経験あるのでポルシェ贔屓な面は差し引いてほしい)

テスラはエンジン車がないので比較不可能だが、リーフに乗れば日産は日産だし、e-tronに乗ればアウディだし、タイカンに乗ればちゃんとポルシェ。これはつまり、EV化されても、嗜好品としての高級車ブランドビジネスはシャシー性能の違いによって残る面があるということだ。そこは確信がもてる。

EV化で浮上するメーカーのビジネス問題は、動力源の質感・パワーの差が感じにくいこと

自動車メーカーのビジネス問題として、EV化で問題になることのひとつは、モーターはどれもフラットトルクでスムーズにシュルシュルと回るため、動力源の洗練性という意味では、エンジン車ほどブランドや価格で差異は感じないことだ。

言い換えれば、EVならば高級車じゃなくて大衆車でも、スムーズな動力フィーリングが手に入ることを意味する。これまでのエンジン車は、高級車と大衆車では、エンジンの出力数字だけでなく、回転の質感にこそ大きな差があった。安い車のエンジンは、ザラザラとガサツな質感が残り、高級車になるほどフリクションが少ないスムーズな質感。
先ほど、シャシーやステアリングの質感の差は残るから高級車ブランドビジネスは残る!と書いたものの、動力源においては価格差は感じにくくなる。

また、もうひとつの問題は、高級車ブランドの同じ車種におけるグレード差を感じにくくなる問題だ。

例えばタイカンを例にすると、、

・タイカン/0-100km加速5.4秒/1,171万円
・タイカン4S/0-100km加速5.0秒/1,448万円
・タイカンターボ/0-100km加速3.2秒/2,023万円
・タイカンターボS/0-100km加速2.8秒/2,454万円

もちろんバッテリーの容量や、細かい装備での違いはあるが、これまでの高級車のビジネスは、グレードがあがることに比例して、エンジンの気筒数と出力が増え、加速性能があがっていくという世界。もちろん同じエンジンだけどソフトウェア制御で出力特性を変えるという手法も混ざってくる。

ただ、0-100km加速で4秒を切った領域は、もはや公道でアクセルを開けて実感できる世界ではないし、高速道路でも文字通り制限速度まで4秒かからず終わってしまう世界で、特に日本ではアクセルを開けきれない世界。(ドイツの速度無制限な高速道路アウトバーンでは意味のある違いかもしれない)

それでも一定レベル以上の比率で高いグレードが売れた理由には、「とにかく一番高いの!」という富裕層の存在以外にも、エンジンの気筒数やセッティングの違いで、速さの違いだけでなく「動力源の音・鼓動振動・回転の質感の違い」で差を感じさせてきた面は小さくない。乗り比べると4気筒より6気筒、6気筒より8気筒みたいな質感の違いはある。高級車はもはや嗜好品なので、その違いに魅せられ、お金を支払う面はある。

つまり、グレード間で比較したとき、速さの差は使い切れなくても、動力源のフィーリングに大差があったので高いグレードを買う意義があった。

でも、EV化によって動力源のフィーリング差は大きく減っていると推察される。タイカンの全グレードを乗り比べたわけではないが、おそらくエンジン車よりもグレード間で動力源の質感の違いは感じにくい構造だと思われる。

タイカンで言えば、一番低いグレードと一番高いグレードでは約1300万円もの差がある。でも、当然ながら製造原価にそこまでの違いはない。つまり車のビジネスとは、低グレード車の大量販売で製造数のスケールメリットで原価削減しつつ、高いグレードの高単価車の販売で大きく利益を稼ぐという構造がある。(同じ車種のグレード間で原価率=利益率は大きく違う)

エンジンからEVに移行したとき、自動車メーカーはエンジン車のときと同じ用に高いグレードが売れる比率を維持できないと、その収益性を大きく落とすことになりかねない。

これは高級車ブランドビジネスにおいて、無視できない話になる。そのためポルシェは高出力~高グレード専用のモーターやバッテリーを開発しているというニュースもあり、メーカーはオプション装備構成の違いを含めて差別化の方法を模索すると思うけど、動力源の差異はつけにくくなる世界に見える。
(ユーザー目線で言えば、価格における原価率という視点だけで見れば、一番低グレードの車は常にお買い得なのだ。高いグレードの顧客が負担した開発原資の恩恵を一番効率よく受けると解釈できるし、基本的なシャシー性能も更に高い動力スペックを受容できるゆとりがある)

このグレード間の違いは、エンジン車ほどの違いは感じられず、高いグレードの販売比率が下がるのでは?と感じたのがEV試乗を通じて得た実感だ。

アウディ e-tron、ポルシェ タイカンと立て続けに既存の高級ブランド自動車メーカーのEVに試乗した感想を書いたけど、タイカンは特に新しい次元のシャシー性能があるため、感心ある方はぜひ乗ってみて欲しい。ポルシェの試乗車があるディーラーに行けば、普通に試乗できます。

きっと、タイカンの新次元の性能を”体感”できると思う(最後もしつこくダジャレ!)

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