警告どおり、計画どおり。
青写真どおりにならなかったの?
一人で呑んでたらさ、あちらのお客様からです、のあちらのお客様が首を傾げて微笑んでいるんですけど。
なんで?
久しぶり。元気にしてた?
ああ、どうして僕の胸は彼の笑顔を見るだけでこんなに苦しいんだ。
元気だよ。奥さんは出てっちゃったけど。
あれま。うまくいってるんだと思ってたよ。
僕も昨日まではそう思ってたよ。
で、浴びるように呑んでるんだ。
他にすることもないしね。
で、わざわざ笑いに来たの?
まさか、昨日の夜戻って来たんだ。奥さんのことは今初めて聞いた。
七年前より若返ってない?
まさか。ちゃんとシワだってあるよ。
彼はそう言って顔を近づけた。
どこにシワがあるっていうんだ。七年前とちっとも変わってないじゃないか。
七年前のあの日の夜。
いつもは涙もろい彼が淡々と話をしていた。
明日からどうやって生きていくか想像してみて、って彼が言うから、僕は一生懸命泣きながら話をしたんだ。
ちゃんと仕事をして結婚して子どもをつくって両親と祖父母を安心させるって。
立派な青写真だね。そう言って彼は笑ったんだ。
今、同じ笑顔が目の前にある。
この街に戻ってきたの?
どうしようって、ふらふらしてたら、店員募集してる店があって、そこで働くことにしちゃった。
この近く?
うん、この三軒ほど先のパン屋さん。
そこ。僕の奥さん働いてるよ。
ええ?今日いた人かなあ。
そうかも、今朝仕事行く時、もううちには帰ってこないって言って出てった。
ね、もう呑まないほうがよくない?まっすぐ座れてないし。
だーいじょーぶ。
背中を反らそうとして椅子から落ちた。
ね、ね、もう帰ろう。
彼に支えられて歩き出したけど、どこに向かってるの。
僕は一体どこに向かってるの。
ま、いいか。彼と一緒なら。
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