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【ポストカードを眺めながら振り返る逆噴射小説大賞2023セルフライナーノーツ】  

 ポストカードが好きで時々買い求めることがある。旅行に行った時もそうだし、本屋さんや博物館、どこかで開かれる催し物で手に取り気に入ったものを買って帰る。
 好きな傾向としては絵の物が多くて、写真のものはあまり買うことはないかなぁ。
 今日はそのいくつかを眺めながら書いていこうと思う。

 


茂木淳子さん作

 近い場所と遠い場所の表現や、建物などを描く線の角度が個性的でリズミカル。上田現さんの作る楽曲を聴いた時のような、世界のどこかで永遠に続く世界をチラッと見たような。
 猫ちゃんたちには表情があって、街の人に表情はない。きっとこの絵は猫から見た世界なのかも。

 何を書くにしても今は心のどこかに穴があって、それは思いついたことや考えたことがすっぽり抜け落ちるような穴。抜け落ちるのだけどわたしはそれを忘れているわけではない。ただ穴から抜け落ちる。掴んでも指の間から砂のように抜け落ちる。
 それに対してワイキキの砂浜の上に消えていくピナ・コラーダのような喪失感を感じながら、やれやれって呟いている状態。病んでいるわけではないよ。極めて正常に日常を暮らしています。もちろん心配は無用にゃの。わたしという人間はひとりでなんとかする能力に長けている。しかも毎朝少しでも走ったり運動することにしたよ。おかげで食欲は増すばかりだ!
 
  

はやかわゆきこさん作

 器もお料理も素敵で目が離せなかったので購入を決意。ずっと眺めているとこれがサッカーのフォーメーションのように見えてきて楽しいの。イカスミ汁からゆし豆腐までががっちり沖縄の豊かな食卓を固めていて、前線のナーベラーやティビチ、ゴーヤーなどの観光客からもよく知られたおかずに向かっていくラインがなんとも美しくて奥深い。

 沖縄のお料理は命を感じるの。文字通りの生きる力がある。沖縄の市場ではそのことを実感できるはず。

 

 

 

ほんまわかさん作

 イラブチャーの表情がすごく好きで購入。鳥っぽさがとにかく魅力的。英語だとパロットフィッシュだからやっぱり鳥の仲間なのかもね。
 鳥は恐竜の一部の生き残り。恐竜という大きな括りの中にダチョウもチキンジョージ先生もKFCオリジナルチキンもロピアの焼き鳥も無印のバターチキンも肥後さんも一緒にいるのだと思うと、地球の環境の変化や生物の変化って面白いよね。
 これもまた不思議なもので、この星の環境の変化を学ぶことと宇宙の中でのこの星を学ぶことは大きく違った印象を受けます。同じ地球についてでもいろんな見方がある。

 

鶴田陽子さん作

 メスのヤギ、みーひーじゃーのポストカード。
 この草ってきっと誰かにあげるためのものなのかなって思った。全てが描かれていない絵だからこその魅力があるよね。

 草で思い出した。市場の八百屋さんにはおばあちゃんやおばさんがいて、ラッキョウなどの皮を丁寧に取り除いている姿をよくみます。これに改めてはっとします。
 すごくおいしいお料理になる食材。その中にはとびきり手間をかけないとその魅力を引き出せない食材もあります。そしてわたしたちはその過程を見る機会がない。
 命を頂いて自分の命を、生きる時間を得る。その過程を市場では見ることができる。市場は生きている。もちろん市場は生きるための場所でもある。

鶴田陽子さん作

 これも唸る。わたしが描いたわけじゃないから真意はわからないけれど、ヘタの部分をあえて葉書の中心に置くことによってゴーヤーの存在する空間が広がっていく。
 ゴーヤーの表面の描き方もまた好き。ひとつのゴーヤーが沖縄であったり琉球であったりと時間軸での広がりを感じるの。瓜の中の種もすごくいい。青い水蒸気を含んだ空気が漂ってきて、今自分がどこにいるんだろうって混乱する。教えてほしい。ゴーヤーさん、わたしは今一体どこにいるの?


「メキシコの荒野さ」

 

 ということで、逆噴射小説大賞2023のセルフライナーノーツです。

 今年は2作までとのことで、1作目は真面目に、2作目はいつも通りの作風で行こうと考えました。

 1作目。この作品のテーマは恋だとか欲情といったものと、好奇心。ヴェラキトル万座という謎の男性とそれにまつわる噂に引き寄せられた男がそれらを遠くから探っていたらいつのまにか魂を掴まれた。そんなお話。
 主人公の懐疑的な視線とヴェラキトル万座の絡みつく視線が交錯する緊張感であるとか、それに伴う二人の身体の動かし方だとかにいろっぽさがあって、みんなヴェラキトル万座に釘付けになったと思うの。この人どんな人なんだって気になるはず。これから先も時々ヴェラキトル万座のことを思い出して、来年は噂を辿って沖縄へ向かうはず。


 2作目。会話劇です。うまく会話が噛み合わないうちに話が少しづつ大きくなっていく。自分で言うのもアレだけどうまく書けたと思ってます。噛み合わない論点のズレ方と展開が上手いなって、我ながら思ったっていいじゃないですか!


 以上で逆噴射小説大賞2023のセルフライナーノーツを終えます。今年も参加できてよかったです。では皆様。健康に気をつけて、また来年メキシコの荒野で会いましょう。




【続く!】




本日も【スナック・クリオネ】にお越しいただいき、ありがとうございます。 席料、乾き物、氷、水道水、全て有料でございます(うふふッ) またのご来店、お待ちしております。