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シーラカンス #27 辞書の生き物

生きる化石

 「生きる化石」と呼ばれる「シーラカンス」という古代魚がいます。恐竜と同じ時期に繁栄し絶滅したとされていましたが、アフリカのマダガスカル島やインドネシアのスラウェシ島などで生きた状態で釣りあげられました。剥製は静岡県の沼津市にある「沼津港深海水族館」などで見ることができます。
 生物学的に貴重で、捕獲された個体は博物館や研究者が高値で購入します。そのため、マダガスカル島やスラウェシ島周辺の漁師の中には一攫千金を狙ってシーラカンスを釣り上げようとしている人もいるようです。

 6500万年くらい前の白亜紀終盤のものとされる化石と、現在見つかる個体ではほとんど差がなく、進化していないとされています。深海で捕食者も少なく、変化する必要がなかったのでしょう。
 シーラカンスの特徴はその背骨です。魚類を始め、人を含めた哺乳類まで、背骨は椎骨(ついこつ)と呼ばれる複数の骨が連結した構造を取っており、それにより身体を前後左右に曲げることができます。代わりに椎間板ヘルニアなどの病気の原因にもなるのですが…
 ところがシーラカンスには椎骨がなく、1本の管状の背骨で体を支えています。速く泳ぐ必要がなく、ゆっくりと体を動かす程度であれば、柔軟な背骨は必要なかったのでしょう。シーラカンスという名前もこの管状の背骨に由来しており、「からっぽの背骨」という意味の古代ギリシャ語から命名されました。最初に解剖した研究者も、化石ではなんとなくわかっていたでしょうが、実物を見て驚いたでしょうね。
 東京慈恵会医科大学解剖学教室の岡部教授は、シーラカンスの研究もなさっており、上皇様にご進講されたこともありますが、彼の名刺にはシーラカンスのイラストが描かれています。

http://www.jikei.ac.jp/jikei/finance/sankangaku/sankangaku0_02.pdf

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