辞書の生き物 #370 獅子身中の虫:しししんちゅうのむし
獅子身中の虫
組織に所属しながら、内部から害を与える人物のことや、恩を仇で返すことを指す表現です。
獅子の体内に寄生した虫が、繁殖して増え、最後には寄生している獅子を死に至らせるということからできた慣用句です。
ここでの獅子はライオンのことですが、ライオンに寄生する「トキソプラズマ」は、通常はライオンを殺すことはありません。
しかし、ハイエナに寄生した「トキソプラズマ」は、ハイエナの行動を制御して、ライオンに食べられやすくしているという研究報告があります。
寄生したハイエナを殺すという意味では、トキソプラズマは、ハイエナにとっての「獅子身中の虫」と言えるかもしれません。
寄生虫は、本来の宿主の中で繁殖し、子孫を増やし命をつないでいくことが望ましい生活環です。
その宿主を死なせてしまっては、寄生虫自身も死んでしまうことになるため、宿主に害を及ぼす生き方は失敗です。
コロナやエボラウイルス、スペイン風邪、ペストなど、多くの死者を出した寄生虫やウイルスは、本来の姿ではなく、彼らにとっても住みにくい宿主だったのかもしれません。
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