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住宅の断熱性能は断熱材の厚さで決まらない

昔は住宅の断熱性能は断熱材の厚さで語られることが多かったように思います。
これは断熱材を入れる場合は充填断熱が多く、充填断熱の場合はグラスウールを使用されることが多かったためだと思います。
同じ断熱材であれば厚さで性能を比較することができます。
ただ、現在は断熱材の種類工法もかなり増えてきていますので、単に厚さでの比較はできなくなりました。

熱伝導率

材料の熱の通しやすさは熱伝導率で表します。
数値が小さいほど熱を通しづらい材料です。
たとえば「グラスウール断熱材 通常品 GW16-45」の熱伝導率は0.045、天然木材の熱伝導率は0.12、ステンレス鋼の熱伝導率は15です。

断熱材は種類がありますが、たとえば「押出法ポリスチレンフォーム断熱材 3種」は0.022、「硬質ウレタンフォーム断熱材 2種 2号」は0.021で、断熱材も種類によって性能は異なります。
また、同じグラスウールでもGW10-50は0.050、GW16-45は0.045、GW96-33は0.033で、グラスウールでも差があります。

充填断熱・外張断熱

充填断熱は柱と柱の間に断熱材を充填します。
このとき柱は断熱材を貫通する形になります。
木材は一般的に断熱性能が高い印象がありますが、木材の熱伝導率は0.12でグラスウールの熱伝導率は0.045で、熱伝導率的には2.6倍の性能差があります。
そのため、充填断熱の場合は柱の影響も加味しなければなりません。(面積比率法

下地材を使用しない外張断熱では断熱材を貫通する部材がほとんどないので、木材などによる性能低下がありません。
そのため、同じ断熱性能であれば外張断熱は充填断熱よりも厚さが薄くなります。

昔は断熱材が入っていなかったり、入っていても薄かったりしたため、窓の性能はあまり重視されていませんでした
しかし、断熱材がしっかり入るようになると、窓の性能は住宅の断熱性能に非常に大きく影響します。

日本の住宅は窓面積が大きいので、窓の断熱性能が低いと住宅全体の断熱性能が下がります。
開口部比率が大きな住宅ですと住宅全体の熱損失の半分以上が窓から逃げていることもあります。
このような住宅は断熱材の性能だけを高めてもあまり効果は上がりません。
そのため、窓の性能を高くする必要があります。

窓の断熱性能はU値(熱貫流率)で表します。
U値が小さいほど性能が高いことを表します。

住宅のすき間

住宅のすき間が大きいと、暖めた空気(冷房時は冷やした空気)はどんどん外に逃げていってしまいます。
特に冬は壁の中の空気が暖められると壁内で上昇し天井に抜け、天井から外に熱がどんどん逃げてしまいます。

人が生活する上で換気は必要です。
ただ、すき間が多いと必要な換気量よりも多く空気が排出されてしまい、熱が無駄に逃げてしまいます。
気密性能が低い住宅では、この熱損失が多くなるため、断熱性能を高くしても効果が上がりません。
そのため、高断熱化する前に高気密化して住宅のすき間を少なくする必要があります。

このように住宅の断熱性能は単に断熱材の厚さだけで決まるのではなく他の要因も影響します。
そのため、断熱材の厚さなどの単純な比較ではなく、計算して性能を比較する必要があります。

たとえば、住宅全体の断熱性能は外皮平均熱貫流率(UA値)、各部位の断熱性能は熱貫流率(U値)を計算して比較します。


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