武田暢高

長年住宅の環境性能に関する仕事をしてきました。 気密測定や換気、省エネルギー基準に関す…

武田暢高

長年住宅の環境性能に関する仕事をしてきました。 気密測定や換気、省エネルギー基準に関することや、暖冷房エネルギー、室温、結露などのシミュレーションに多くかかわってきました。 快適で省エネで健康に過ごせる住宅が広く普及してくれればと思っています。

マガジン

  • 気密測定

  • 省エネ基準

    省エネルギー基準(省エネ基準)や説明義務制度などに関する記事のまとめ

  • 省エネ基準の計算方法

    住宅の省エネ基準の計算方法についての解説です。 外皮平均熱貫流率(UA値)、冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)、暖房期の平均日射熱取得率(ηAH値)の計算についてご説明します。

  • 省エネ性能の説明義務制度

    住宅の省エネ性能の説明義務制度についての投稿をまとめたものです。

最近の記事

気密測定のエラー

気密測定をすると測定エラーになることがあります。 気密測定時の主なエラーとしては三つあります。 隙間特性値(n値)エラー気密測定した場合、理論的には隙間特性値(n値)は1~2の間に入ります。 そのため、n値がこの範囲外の場合には測定に何らかの問題があったことになるため、再測定が必要になります。 n値はすき間の状態を表す数値です。 一般的にはすき間が小さいと1に近づき、穴が大きくなると2に近づくと言われています。 厳密に言いますと、n値が1に近ければすき間から入る空気が層流

    • 住宅の気密測定方法(手順)

      今回は気密測定の方法を順を追ってご説明します。 気密測定器で測定する場合、自動測定というモードがありますので、基本的には測定開始したら自動で測定を開始し結果を表示します。 ただ、これでは測定の手順がわかりませんので、ここでは手動測定モードの説明をします。 手動と言っても測定自体は難しくなくセミオートという感じで、人がやるのは測定点(圧力差の位置)を決めることです。 前に気密測定方法について書いていますので、今回はもう少し具体的に書きます。 気密測定器の電源を入れる気密測

      • 気密測定の減圧法と加圧法

        気密測定する場合、減圧法と加圧法という二つの方法があります 減圧法は住宅内の空気を外に出して住宅を減圧して測定する方法です。 加圧法は住宅内に空気を吹き込んで加圧して測定する方法です。 減圧法と加圧法では送風機の向きが変わります。 加圧法は送風機の向きの関係で送風機などを外に設置することがありますが、そうしますと気密測定器の設置が難しくなります。 また、設置方法によっては風などの外の影響を受けやすくなり、データのばらつきの原因になります。 加圧法は外のほこりなどが中に入りま

        • 気密測定の準備

          気密測定するための準備についてご説明します。 住宅の延べ床面積を計算する図面から住宅の延べ床面積を計算しておきます。 これは現場で相当隙間面積(C値)を計算するときに必要なためです。 気密測定器で測定すると総相当隙間面積(αA)がわかります これを延べ床面積で割ったものが相当隙間面積(C値)です 閉める場所、目張りする場所、開ける場所気密測定する場合は、 目張りせずに閉めるだけの場所、目張りする場所、開ける場所があり、これらは決まっています。 なお、目張りする場所は201

        気密測定のエラー

        マガジン

        • 気密測定
          18本
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          51本
        • 省エネ基準の計算方法
          14本
        • 省エネ性能の説明義務制度
          8本

        記事

          気密測定のマニュアル

          気密測定器は元々コーナー札幌(株)という一企業が開発した測定器で、この測定器の取扱説明書が唯一の気密測定のマニュアルでした。 その後気密測定はJIS化(JIS A 2201)され、現在はこのJISが気密測定のベースになっています。 IBECsの気密測定技能者マニュアル一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)が気密測定技能者養成事業を行っており、ここで気密測定技能者を登録する制度が設けられています。 気密測定技能者はIBECsが行う講習を受け、試験に合格した

          気密測定のマニュアル

          なぜ気密測定が必要

          住宅の高気密化を始めた当初、木造住宅の気密化は大変でした。 そもそもどうしたら気密化できるのかがわかっていませんでした。 その後気密化方法が開発され、気密施工に必要な専用部材も販売されるようになりました。 現在は気密化方法がマニュアル化され、そのマニュアルに従って施工すれば、ある程度までの高気密化は可能になりました。 気密施工方法が確立されているのであれば、なぜわざわざ気密測定をしなければいけないんでしょうか。 重要なのは気密測定は施工をチェックできるということです。 空気

          なぜ気密測定が必要

          気密測定の基礎知識

          最近気密測定の質問が増えてきています。 以前いくつかの記事を書いていますので、よろしければまず以下のマガジンをご参照ください。 また、最近建築士などのプロだけでなく施主の方も独自で勉強している方が増えてきているようです。 ただ、ネット上の情報は古いもの、誇張されたもの、間違ったものがあり、混乱されている方が増えてきているように感じます。 施主の方が間違った知識で建築士を詰問することもあるようなので、今後いくつかに分けてもうちょっと詳しく気密測定について解説していきたいと思い

          気密測定の基礎知識

          省エネ基準で共同住宅の温度差係数が変更されました

          住宅の省エネルギー基準(省エネ基準)の共同住宅の温度差係数が変更になりました。 変更点は以下の通りです。 ・共同住宅で隣接空間が住戸の場合、熱貫流率(U値)の基準を満たしていると界壁・界天井・界壁の温度差係数をゼロで計算できる 温度差係数は外皮平均熱貫流率(UA値)を計算するときに使用します。 温度差係数をゼロにできるということは、住戸に接している部分の熱損失がゼロになるということです。 熱貫流率の基準は「平成28年国土交通省告示第266号」に示されている熱貫流率の基準値で

          省エネ基準で共同住宅の温度差係数が変更されました

          住宅の省エネ基準は地味に更新され続けている

          2021年4月に住宅の省エネルギー基準(省エネ基準)の計算方法は変更になりました。 その後も地味に計算方法が変更になっていますが、あまり知られていないようです。 一次エネルギー消費量はWeb上のアプリで計算しますが、割とこまめに更新されています。 https://house.lowenergy.jp/ 2021年4月の時点ではVer.3でしたが、現在の最新版はVer.3.3です。 そのため、計算するバージョンによって同じ入力データでも計算結果が変わってくることがあります。

          住宅の省エネ基準は地味に更新され続けている

          住宅の省エネについて考えてみる

          今さらですが住宅の省エネについて考えてみたいと思います。 住宅では様々なエネルギーが消費されます。 たとえば、暖房、冷房、給湯、調理、照明、家電などです。 エネルギー消費量の割合環境省の調査(平成29年)によりますと、関東の1年間のエネルギー消費量は以下になります。 暖房: 6.2GJ 冷房: 0.6GJ 給湯: 11.4GJ 調理: 2.5GJ 照明・家電等: 10.2GJ これを円グラフにするとこのようになります。 一般的に暖房・冷房のエネルギー消費量が多い印象だと

          住宅の省エネについて考えてみる

          日よけ効果係数とは?

          前回日よけの効果をそれぞれの方法で計算してみました。 その中で日よけ効果係数が精緻な計算と説明しましたが、日よけ効果係数とは具体的に何なのでしょうか。 窓の日射熱取得率を計算するときに取得日射熱補正係数を計算します。 取得日射熱補正係数を計算する方法はいくつかありますが、その一つが日よけ効果係数を使用する方法です。 日よけ効果係数を計算する方法は非常に複雑です。 そのため、手計算できるものではなく専用ソフトを使用して計算します。 ホームページに公式Webアプリが用意され

          日よけ効果係数とは?

          日よけの適正な寸法は?

          庇などの日よけは夏の日射を遮ることができ省エネになります。 ただし、庇が長すぎると冬の日射も遮ってしまうため、室内に日射が入らなくなり、暖房のエネルギーが増えます。 そのため、日よけは夏と冬の両方を考えなくてはなりません。 太陽の高さ(太陽高度)は季節によって変化します。 夏は太陽高度は高く冬は太陽高度が低くなります。 日よけの効果は太陽の高さによって変わります。 夏太陽は高い位置にありますから、日よけで影ができやすく日射が室内に入りづらくなります。 冬太陽は低い位置にあり

          日よけの適正な寸法は?

          日よけの効果を計算する(計算例)

          前回「日よけの効果を計算する」を投稿しました。 今回は、実際に取得日射熱補正係数を計算して、計算方法によってどのような違いが出るか確認してみます。 ちなみに窓の日射熱取得率は、 [日射熱取得率] × [取得日射熱補正係数] で計算します。 そのため、取得日射熱補正係数が小さくなれば日射熱取得率は小さくなり日射熱取得量も小さくなります。 日射熱取得量が小さくなるということは、平均日射熱取得率が小さくなるということです。 計算の条件は以下の通りです 6地域で窓は南面とし、窓

          日よけの効果を計算する(計算例)

          日よけの効果を計算する

          夏の日射を遮り冬の日射を取り入れれば省エネになります そのため、住宅の省エネのためには日よけを利用して日射をコントロールすることが重要です。 省エネ基準の平均日射熱取得係数(ηA値)では日よけの効果を考慮することができます。 窓に庇(オーバーハング)などの日よけがあれば、冷房期の平均日射熱取得率を小さくすることができ、基準をクリアしやすくなります。 日よけは、壁面からの張出し(出)が長ければ、その分日射を遮ることができます。 ただし、窓と日よけの距離が離れていれば、日よけ

          日よけの効果を計算する

          住宅の省エネ計算は嫌われる?

          2021年4月に省エネ性能の説明義務制度が始まって、省エネ基準の計算(省エネ計算)をする機会が増えた建築士の方たちは多いと思います。 自社で計算する場合は計算にかかる手間は建築士の負担になります。 モデル住宅法などの簡易に計算する方法もありますが、それでも計算する時間がゼロになるわけではありません。 計算よって従来よりも仕事量が増えるわけですから、省エネ計算を嫌っている方もいらっしゃると思います。 省エネ計算は住宅の省エネ性能を判断するためのシミュレーションです。 本来省

          住宅の省エネ計算は嫌われる?

          省エネ計算の基礎・土間床計算の注意点(新計算法)

          2021年4月から省エネ基準の一部の計算が変更になりました。 基礎・土間床計算も新計算法が提示されました。 旧計算法は現在のところ期限が設けられていませんので、旧計算法での計算も可能です。 新計算法は対応している断熱方法などが限られるため、計算方法によっては不利な計算になりますので、敢えて旧計算法で計算するのもありだと思います。 新計算法の土間床等外周部の線熱貫流率の計算方法は以下があります 基礎形状によらない値を用いる方法もっとも簡単な方法です。 断熱ありなしにかか

          省エネ計算の基礎・土間床計算の注意点(新計算法)