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ロックが勝った夜へ〜チバユウスケに馳せて〜

チバユウスケが亡くなった。
確実に日本のロック史の代表者である一人だった。
命あるもの、必ず死を迎えるものであり、なにも不思議なことではない。しかもチバは食道がんを患っており、健康な者より身近であるだろうと予想はできるのだが、それでもこの虚無感は拭い去れない。日本のロック史の代表者でもあるし、私のロック史の重要人物の一人でもあるからだ。

自分が明確にチバユウスケを、Thee Michelle Gun Elephantを意識したのは15歳のときだった。
14歳のときに親友と二人でギターを始めて、その友人の家で情報交換をしながらギターを練習したり、バンドを教え合ったりする日々を過ごしていた。
そんな中、友人のCD棚にあったのが『ギヤ・ブルーズ』だった。
私はこれを「黒盤」と呼んでいる。アルバムを色で呼ぶ文化は様々なバンドでありえるが"黒"盤はギヤ・ブルーズ以外にないと思っている。
Syrup16gの『HELL-SEE』にしろ、NUMBER GIRLの『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』にしろ、アルバムの1曲目の1発目の音というのはとても心に残るものである。(なので結構自分の音源でも1曲目の1発目は気にしたりする)
そしてこの『ギヤ・ブルーズ』の1曲目「ウェスト・キャバレー・ドライブ」もそうだった。

ドラムが1発鳴って、そのあと地を引き裂くようなベースが蠢く。ギターがうなったあと、鋼の弦が震えてると実感させられる塊が耳を覆う。
そして続くがなり声の歌。「泥沼に生えてる俺の足」「肺から流れる煙は湿った温度で燃え上がっている。燃え上がったブルーズ」
中学生の私にはその詩のすべてを感じ取れてはいなかった。でも、確信があった。絶対にかっこ"よすぎる"やつだ、と思った。
すぐその友人にそのCDを貸してとお願いした記憶がある。友人は渋って渋って一ヶ月後とかに貸してくれた。そこまでお願いした記憶もある。
そんな出会いだった。

余談だが、何回か私は「ミッシェルとブランキー派で対立するなら俺はブランキー派」と明言したことがある。(ゆら帝派でもある)(全部好き)
多分、この「友達がなかなかCD貸してくれない事件」(事件?)でちょっと意固地になったのが始まりかもしれない。

15歳あたり、16年前で意識したと述べたが、「見たことある」ので言えば20年前になる。
あの「伝説の夜」のとき、私もテレビの前にいた。

その頃は普通にt.A.t.uが目当てだった。母親がCD買って車で聞いていたし、自分もそれは嫌いじゃなかった。
その生歌が聞けるということもあり、当時めちゃくちゃテレビっ子だったというのもあり、それでテレビの前にいた。
あとは皆さん知っての通り。伝説の夜が起こった。
このとき自分は「ロック」というものをそこまで意識してなかったように思う。毎週音楽番組のラジオを録音して色々聞いて、音楽は聴き漁ってはいたが。
でもめちゃくちゃ印象に残っている。
慌てるタモリ。アナウンサーの焦り。そこで黒スーツの男たちが爆音でビートを打つ。

今思うと、この夜は「ロックが勝った夜」だった。
もちろん相対的に誰それが負けている・悪いという話にしたいわけではない。
しかし、土壇場でギター1本を刀として(ミッシェルはエフェクターを使わないのでなおさら刀1本感がある)、颯爽と道を切り開いていくその姿は確実にロックヒーローでしかない。
もちろん"かぶせ"もないし音源に合わせた振り付けや"バミリ"もない。
それでもクールでワイルドなステージを一瞬で作り上げる。
ロックがそのとき(少なくとも)日本で一番輝いた瞬間であっただろう。

そのちょっと未来。さらにこのシーンを思い出す出来事もあった。
9mmParabellumBulletがMステに初登場したとき。
タモリに「初登場、緊張してますか?」みたいなことを聞かれていた菅原卓郎。
そこでした返しはたいていゲストを絡めて和気あいあいと…みたいになる感じがするが、はっきりと
「いつかのミッシェルガンエレファントみたいにロックバンドとして伝説の夜にしたいので全部生演奏でやります」
と言っていた。(会話になっていない)
そもそも「他がバンド体制でも生演奏じゃない」みたいになるのでこの発言だいぶグレーな気がする今思えば。
このときすでにギターを弾いていて、ロックの虜で、9mmファンだった私は否応にもミッシェルに思いを馳せるイベントとなった。これも記憶に鮮明に残っている。

そう思うと、やはり文化として重要なファクターで、こうやって伝わっていっているんだなと意識する。

チバが亡くなってショックなのもあるが、もう一つ恐れているものがある。
この一回だけではないということだ。
そんな現実が眼前に迫ってきた。
これから、自分が好きなバンドやアーティストが亡くなる瞬間はいくらでもあるだろう。
そのときに自分の心は耐えきれるのか心配になる。
ていうかそれこそ、ベンジーが亡くなったらどうなるんだ俺。

私は正直、The Birthdayからはあまり聞いていない。
それは多分自分にとってはアベフトシ( ミッシェルのギター)の存在が大きい。
今頃アベフトシと合流して仲良くやってるんだろうか。
アベフトシは私が本当に尊敬するギタリストだ。それも思い出すと、二人もバンドから逝ってしまったのは悲しい。
もしかしたら、バースデイまで聞いていない私は薄情者か?とも一瞬思ったがそんなことはないよな。だってこんなに残念なのだから。

こうやって書いていたら、だいぶ整理がついてきた。
チバユウスケ、彼が生まれて、ロックをしてくれたことに感謝を述べたい。
ありがとう。
R.I.P

「絶対に死ぬなよ」

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