無声映画シアターオルガン

State Theatre Organ with John Muri

無声映画時代にも活躍したシアターオルガン奏者 John Muriについて

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2023年3月31日 第776回無声映画鑑賞会にて観賞した作品のうち『醜女の深情け』(Tillie’s Punctured Romance)のサウンド版の音楽が、「John Muri」のオルガンスコアでした。古き良き時代の無声映画は、日本では「カツベン」活動写真弁士による説明が発展し、伴奏は三味線、クラリネット、バイオリンなど和洋の楽器をおりまぜた「楽士」と呼ばれる職人のようなスペシャリスト達が、映画の和洋を問わずに担っていた様子だが、欧米では音楽のみの演奏が中心で、各映画館には、座付きのシアターオルガ二スト、そして、オルガンのみならず、時には打楽器も内臓されたような巨大なシアターオルガンがあったそう。

☆筆者の無声映画楽士としてのアーカイブ
https://wp.me/P7yF5g-vm

私が無声映画楽士になったきっかけのうちのひとつに、母校の国立音楽大学で郡司すみ先生の「楽器学」の講義を受講した際に、「無声映画楽士」「シアターオルガン」の映像を視聴しながら解説をしていただいことが、とても大きな位置をしめています。
(私が楽器製作をしていることも、ここにルーツがあります。)

私は、ピアノだけではなく、カトリック教会のオルガン奉仕を小6〜大4までしていて、日曜のミサだけではなく、死者ミサ、そして、ごくたまに横田基地(米軍ベース)で日本人司祭によるミサが行われる際には、ベースの教会にあるオルガンも演奏していました。ストップ(音色選択機能)もたくさんだけれども、ボタンがたくさんあって、その中には、シアターオルガン系の「ソープオペラ」(アメリカ製作のメロドラマ)にありそうなたくさんのニュアンスの音色がたくさんあって、私にとってのファンタジーでした。

無声映画の動きも、そして、その動きに音楽をつける手法についても、つくづくそれらは欧米のダンス文化と深く結びついているのだなぁ〜と思います。私は、バレエ、歴史的舞踏にも親しんできたので、動きからなんとなくそれらを検索するキーワードが浮かぶので、例えば、男女ペアが二組いたら、それは「カドリーユ」かな?と思って、動画を探して、その音楽の特徴を掴むとか...。そんなコツコツとした積み重ねをしながら伴奏モチーフを探していっています。

John Muriの伴奏は、「ここはカーニバルです」「ここは山です」みたいな情景が、かなり強めなリズムでも主張されていて、わくわくとした期待が弾みます。状況、絵的な描写など、大変参考になりました。

しかし、カツベンとあわせるとなると、説明にかぶらないようにアクセント部分をずらしたり、距離感として、伴奏が遠景に感じられるようにトーンを落とすなどのスキルも必要になってくるでしょう。ここいらへんは、研鑽の日々です。

アメリカ大陸の田舎には、まだこのような「シアターオルガン」が残っている映画館もあると聞きます。私は、無声映画伴奏時には、シンセサイザーで、ローランドの音源を使って組み合わせいるのですが、自分でつくった組み合わせにはそれぞれ「名前」をつけてメモリーしています。邦画では、和楽器の音色も使用するので、「化け猫」と名付けた『鉦』などが、アメリカンな音とともに保存してあります。

その他、チャップリンやキートンなどのコメディには、当時流行した「チャールストン」の所作などがでてきたりもするので、自分なりにいろんな当時のダンススタイルのモチーフのストックもつくっているのですが、John Muriの演奏では、それらは、本当の2小節くらいで、さらりと挿し色のごとく使っていたのが、印象的でした。ダラダラと長く使わないことが、当時の粋なのだとしたら、またひとつ勉強させていただきました。


無声映画観賞会は、毎月末に東京都内、随所のホールで上映されます。4月は、生伴奏つき。私も年に数回、出演させていただいています。詳しくは、マツダ映画社HPにて。
https://www.matsudafilm.com
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2023年3月31日 概要

第776回無声映画鑑賞会

[チャップリンとヴァレンチノ]
『椿姫』CAMILLE(19:40~)
1921年 米 メトロ映画作品 

監督/レイ・C・スモールウッド

出演/アラ・ナジモヴァ、ルドルフ・ヴァレンチノ

弁士/澤登 翠

『醜女の深情け』Tillie’s Punctured Romance
1914年 米 キーストン作品 (42分)

製作・監督/マック・セネット

出演/チャールズ・チャップリン、マリー・ドレスラー

弁士/坂本頼光

覆面番組
弁士/樗澤賢一

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