「わらしべ長者」についての一考察
最近、
いつも行っている山のお寺で、よくアブに出合います。
参道のお地蔵さんの掃除をしていたり、本堂でお祈りしていたりすると、私の周りをアブがブンブン音を立てて翔び回っています。
昨日は、アブが怖くて手を振り回し、逃げ回っている女性を見かけました。
その様子を見ていたら、ふと、「わらしべ長者」というお話に、アブが出てきたことを思い出しました。
お金持ちになりたいと願った貧乏な侍が、長谷寺の観音様にお参りをすると、観音様が、どうしたらお金持ちになれるかのヒントをくれます。
お堂を出た後に最初に手にしたものを大切にして、西へ向かって行くようにという、観音様のヒントを告げられた侍が最初に手にしたのが、わらしべですね。
そのわらしべが、どういうふうに変わっていくのか、改めて原文の『宇治拾遺物語』で調べてみました。
わらしべ(わらのクズ)
↓
アブをつけたわらしべ
↓
みかん3個
↓
白布3疋=6反(1反は、25メートル)
↓
馬、馬具(くつわ、鞍)、馬の食べ物と自分の食べ物
↓
田んぼ、米、屋敷
となっていて、めでたく侍は長者になるのですが・・・
私は、この話に、昔から違和感を感じていました。
それは・・・
アブです。
アブをわらで括る?
人の周りをブンブン翔ぶのは、大型の吸血性のアブ、具体的には、ウシアブなどです。
まず、これらのアブを、補虫網もなしに、元気のいい状態で、殺さずに捕まえることはかなり難しいです!
ハァハァ(荒い息遣い)
万が一捕まえることが出来たとしても、わらしべでは括れません。
何故ならわらが太すぎますし、元気なアブは、すぐ翔びますので一人では括れないからです。
もっと細かなことを言えば、押さえつけただけでそのまま括ったのでは、アブを翅ごと括ることになって(アブは翅を閉じてとまるため)仮に括れたとしても、アブは翔べません!
翔ばしたければ翅を開き、翅の下にわらしべを通してから括らなければならず、一人ではとても無理です。
私はこの話がずっと気になっていましたので、昔、カナブンをテグスで括って翔ばして
みたことがあります。
これだとうまく行きます。
括りやすいですし、ちゃんと翔んでくれます。
だから、このお話は、アブではなく、カナブンなんだと、私は思います。
そして、今回『わらしべ長者』を読んで、もう一つおかしなことに気づいてしまいました。
みかんです。
アブが翔ぶのは、今の季節。夏なんです。正確には6月から8月です。
でも、大抵の柑橘類が実るのは・・・
そうです
秋から冬にかけてです。(9月から出回る極早生品種は近年開発されたもの。『宇治拾遺物語』が書かれた鎌倉時代にはありませんでした)
収穫期がずれる夏みかんでも、3月から5月なんです。
言い換えれば、みかんの季節に、ブンブン人の周りを翔ぶ虫なんていません。
だから、アブとみかんは、一緒に登場しちゃいけないんです!
ドン(机を叩く音)
ハァハァハァ(かなり荒い息遣い)
私は、この果物は、みかんではなく梨だと思います。
梨は、弥生時代から、日本で食べられていたようですし、瑞々しくて喉の乾きも止まります。そして、時期的にもピッタリです。
物語が伝えられる過程で、梨がみかんに入れ替わったんだと思います。
いかがでしょうか。
こんな話を、息子にしていたら、それを傍らで聞いていた女房が、
「そんなん、おとぎ話やねんから、おかしなことなんか、ぎょーさんあるに決まってるやん」
「舌切りスズメの話かて、ハサミでスズメの舌切ったてなってるけど、スズメに舌ある?見たことないで〜」
「・・・・・・・」
「・・・・・」
ギャフン!
おとぎ話を考察しても仕方ないですね。
失礼しました。