「水星の魔女」の安心感。

 いや「人が死ぬ作品」という点では全然安心ではないのですが。
 「機動戦士ガンダム 水星の魔女」、一話目の放送直後のTwitterで、「ウテナだ!」「女性へのエンパワーメントが見える!」的なコメントを見かけて興味を持ち見始めました。
 そしてタイトルの感想です。

 大前提として、作品自体がとてもわくわくします。「今の若者がとっつきやすいガンダム」というコンセプトだからか、ガンダムを全然知らない私のような人間でもとっつきやすい。
 PROLOGEから見始めた人なので、人が亡くなるところは胸が痛いし、学生たちがこの先亡くなったらそれこそめちゃくちゃ辛い。その恐怖はあります。
 が、それでもものすごくわくわくしていて、毎週毎週楽しみにできるのが幸せです。

 そして、その純粋にわくわくできる理由のひとつは「この作品は徹底して『未来』を描いている」という信頼があるからです(そして、その未来は私があこがれる要素を叶えている)。

 「水星の魔女」のインタビューを拝読していたら、「少女が主人公だからと言って、ジェンダーを取り扱うとかではない。描き方は多少変わるかもだけど、未来のことなので、多様性が当たり前になっている認識」といった発言を作り手の方がされていました。
 体のラインを拾わない制服。なんなら男女で同じ制服。着こなしによってラインを見せる、見せないを分けて、個性が際立つデザイン。体つきも肌の色も様々。いろいろな年代の女性が、いろいろな立場にいる。「大人の女性」役ではない役割を担っている。もちろん恋愛でも性別による縛りもない。
 これを「未来のあたりまえ」として描いてくれた作品を、私は寡聞にして知りません。しかも、これがテーマじゃないんです。こんなに幸せなことってあります?
 この「未来」の描き方が、どんなSF的な裏付けよりも明確に、「徹底的に作りこんだ作品である」という安心感を与えてくれました。
 「『自覚的である』物語の安心感」、そして「徹底した作りこみへの安心感」。この二点をこんなに感じられて、信頼して楽しめる作品が世に放たれたことに、感謝しかありません。

 「ガンダムなので、辛い展開もあります」というのは、これもインタビューで明示されているところです。なので、誰が死んでしまうか恐れつつ、できれば学生のみんなは健やかであってほしいと願いつつ、それでも先を楽しみにしていようと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?