勝手に動画分析 #31「細かく仕掛けられたマイルドなコラージュ動画」
こんにちは、BYNDのNATUです。
BYNDではナビゲーターやTAとしてセッションに参加しています。
noteでは「週末にゆっくり嗜む動画」というコンセプトで個人的に気になった動画を毎回一つ取り上げ、4つのベース項目と1つのエクストラ項目の計5つを軸にその動画の唸るポイントを分析したり解説したりしてみたいなと思ってます。
今回はここ数年流行りが廃れないコラージュ動画から個人的にちょっとした新しさを感じた作品を。
SXSW 2024 Film & TV Festival | Opening Titles
(via vimeo|Coat of Arms)
Designers: Elena Chudoba, Paige Lu / Animators: David Reyes, Peiqing Lu, Carly Johnson, Daiqi Cui, Jordan Knight, Meng-Hsueh Lin / Composer: Wally / Sound Mixer and Designer: Jennifer Pague
Creative Directors: Clara Lehmann and Jonathan Lacocque / Concept Development: Jonathan Lacocque, Clara Lehmann, Elena Chudoba, David Reyes / Design Director: Ryan Butterworth
Art Director: Elena Chudoba / Producers: Clara Lehmann and Jonathan Lacocque / Associate Producer: Grace Lawson
今回の5項目チャートはこんな感じです。
今回のエクストラ項目は「ぬるコラ」。ぬるぬる動くコラージュの略です。
そしてそれぞれ5つの項目のショートコメントがこちら。
[LOOK:★★★★★]
コラージュの持ち味である切り抜き写真風のビジュアルは維持しつつ全体の画面デザインや配色もとてもクオリティが高く、作品全体のLOOKとしてしっかり作り込まれています。SXSWのイベントの持つ遊び要素や楽しさを感じる空気感もしっかり織り込まれているのも見事です。
[音:★★★★]
LOOK同様にBGM&サウンドデザインもイベントの「らしさ」をしっかり表していて、それぞれのクリエイターのレベルの高さが伺えます。音の有無の選択や音量加減もきっちり抜け目なく、全体通してスッと聞き流せてしまうのはハイクオリティなサウンドの証ですね。
[編集:★★★★★]
コラージュという違和感のある技法を使いながら「違和感のないアニメーション」につなげるという、モーションデザインとしてかなり難易度が高い表現を行っています。コラージュと相性の良いレトロなコマ撮り風の動かし方をベースにしながら「なにか違う今っぽさ」を感じるこの作品、後述のエクストラ項目でもう少し深掘ってみたいと思います。
[構成:★★★★]
コラージュ技法を使うことのデメリットとしてゴチャついたカオス感による主題の伝わりにくさがあると思うのですが、モーションデザイナー側としてコントロールしやすいテキストやシェイプを多めに混ぜていくことによって主題ブレをかなり抑えている構成になっているのがうまいです。
[ぬるコラ:★★★★★★]
初見の感想は、なにかマイルドなモーションコラージュ作品。コラージュ作品独特の「尖り」がないことで単純に楽しさだけが際立つんですけど、なんでだろうと何度も見ていると実は細かい箇所でヌルヌルっとしたアニメーション表現がコラージュに使われてることに気づきます。写真自体をくにゃっと歪ませたりパーツ配置をほんの少しずつ段々とずらすことによりスムーズに見せていたり。いわゆるモーションコラージュっぽいカクカクした動きではない「アニメーション」な表現になっています。この表現によって作品全体にマイルドな雰囲気が生まれてるんですね。しかもうまいのが、目立つ動きにはあまりそういった動きはさせてなくて、脇役とか意識がいかないようなところにそんな動きが仕込まれてるもんだから、作品の印象としてはコラージュらしさをしっかり保っているんですよ。でも意識外からのアプローチにより「なんかマイルド」な雰囲気が作られている。切り抜きを使うコラージュの面白みにモーショングラフィックス的なスムーズなアニメーションを加えることで生まれるこの奇妙なマイルドさはなんかとても新しい体験でした。すごい表現。
さて、以上いかがでしたでしょうか。
動画の面白みに少しでも触れてもらえたなら嬉しいです。
それではまた次回。NATUでした。
(Writer:スタッフ NATU)
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