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#4 メガネ的びっくりした薬アワード2023 編集後記 制吐薬適正使用ガイドラインを眺めてみる

おはこんばんにちはなら!編集担当のメガネです。
あっという間に寒くなったと思ったら、一気に年末ですね。
皆様、2023年はどんな1年でしたか?
メガネは以前から大好きだったラジオを自分で始めることが出来た、
そんな1年でした。
こんなに簡単にラジオができるとは…
Vtuberも好きなので、そのうちバ美肉しているかもしれません(おっ)。

ラジオでは、そんなメガネがびっくりした薬で1年を振り返ってみました。
本編はこちらからどうぞ!!

Noteでは…
制吐剤適正使用ガイドライン第3版について、眺めていきたいと思います。
https://www.jsco.or.jp/news/detail.html?itemid=460&dispmid=767


久しぶりの改定!!

初版が2010年、第2版が2015年、第2.2版(Web)が2018年。
そして、最新の第3版が2023年となっております。
メガネが働き始めたのが2010年なので、同期みたいなもんですね、制吐剤適正使用ガイドライン。

制吐剤の歴史を振り返る
(一部、メガネの私見)

1990年代までに第1世代の5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロンとか)は開発されています。ステロイド(デキサメタゾン)と組み合わせることで、急性期(抗がん剤投与24時間以内)の悪心・嘔吐はかなり抑えることが出来るようになりました。
しかし、遅発期(抗がん剤投与2日~5日)の悪心・嘔吐はまだまだでした…。
しかし、人類は積み重ねられるところが凄いところです。
弱点を補うため、日進月歩。
2010年ころ~国内でも新薬が続きます。

  • 2009年 アプレピタントカプセル(イメンド®)、後発品あり
    国内初のNK1受容体拮抗薬。
    実臨床的には、内服なので処方忘れがよく起こる。
    Day1は治療前に内服する必要があり、外来化学療法室での運用が煩雑。
    Day2以降、自宅で患者さんが内服を忘れる可能性あり。

  • 2010年 パロノセトロン注(アロキシ®)、後発品あり
    第2世代5-HT3受容体拮抗薬。半減期長い!(40時間)
    5-HT3受容体に対する結合親和性と選択性に優れている。
    遅発性の悪心・嘔吐に有効。

  • 2011年 ホスアプレピタント注(プロイメンド®)
    NK1受容体拮抗薬が注射になった!Day1に注射すればよい!
    が血管痛、混注が手間、なんといってもパロノセトロン注と一緒に混ぜると配合変化が起こる…。これは実臨床的にとてもメンドクサイ!!
    結果、流行ったんだかどうだか。(食道がんなど、内服が難しい患者さんには重宝しました)

  • 2017年 オランザピンの適応拡大:多受容体作用抗精神病薬、後発品あり

  • 2022年 ホスネツピタント注(アロカリス®)
    2番目のNK1受容体拮抗薬の注射薬。Day1に注射すればよい!
    血管痛の軽減、パロノセトロン注と一緒に混ぜてもOK!
    (その他、配合変化あるのは注意…)

抗がん剤も次々開発されていますが、制吐剤も次々に開発されていますね。
痒い所に手が届く…そんな開発がされています。
そして後発品が発売されていっているのも、(お金的には)心強いですね。

第3版の特徴(メガネ的まとめ)

高度催吐リスクレジメンにオランザピン追加が強く推奨された!

今回の改定の一番目立つところではないでしょうか。
ラジオでも言っていますが、Day1-4、夕食後、5mg、です。
注意点として

  • 糖尿病or糖尿病の既往のある患者
    禁忌は絶対禁忌。海外では併用注意かもしれませんが、ここは日本です。
    イエローレターを忘れるな。

  • 高齢者(75歳以上)
    J-FORCE試験(国内のオランザピンの有効性・安全性を調べた試験)で高齢者入っていない。
    高血糖、転倒、傾眠注意。
    と・く・に!睡眠薬服用している場合!!オランザピンと併用すると危ないで。転倒リスク高いで。

  • なんとガイドライン上、ドパミン受容体拮抗薬との併用は勧められていません。作用点が重複するため、錐体外路症状などの副作用出現の恐れあり。
    ほな頓用の制吐剤どうするの~。結構こまります。
    オランザピン追加はエビデンスがないため、ガイドライン上は推奨されていません。
    う~ん。まだ使用していない5-HT3受容体拮抗薬内服とかでしょうか。

中等度催吐レジメン(カルボプラチン以外)は、パロノセトロン注+デキサメタゾン Day1のみ?

いつも、中等度催吐レジメンは頭を悩ませますね…。
ガイドラインにも記載されていますが、はっきりとしたエビデンスがあるようなないような…それが中等度催吐レジメン。
そして、ステロイドスペアリングも考える必要があります。

※ステロイドスペアリングとは?sparing≒控えめな
ステロイドはなるだけ使わないほうがいいよね~。という風潮があります。
やはり、高血糖、骨粗しょう症などの特徴的な副作用のせいでしょう。
しかし、ステロイドスペアリングをしてこれらが少なくなる、というはっきりとしたエビデンスはありません。

ガイドラインをまとめると、
・5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロン注がBetter
・パロノセトロン注を使うなら、ステロイドスペアリング考慮して
・カルボプラチン以外でNK1受容体拮抗薬の有効性をはっきり示したエビデンスないで
となるので、『中等度は、パロノセトロン注+デキサメタゾンDay1のみ』
です。よろしくお願いします。
ただ、根本的な問題として、カルボプラチン以外、NK1受容体拮抗薬を追加するメリットがしっかり示されていない、ことが問題のようです。
この辺どう判断するかは、各施設・各診療科で相談が必要かなと思います。
また、患者側に催吐リスクが高い因子がある場合(若年、つわり歴ありとか)、制吐療法を強くしていく仕組みも必要かもしれません。制吐療法も患者さん一人一人に合わせて選択していきたいですね。
そのためには、PBPM(プロトコールに基づく薬物治療管理)が…。
おっと、話がどんどん入り組んで来ました。
とりあえず次に進みます。

カルボプラチン AUC≧4は中等度催吐レジメンの中でも、高度寄り!NK1受容体拮抗薬+パロノセトロン+デキサメタゾンDay1?

中等度の高度よりってなんやねん。ほな別の名前つけてくれへんか?!とメガネは思いました。
ただ、NCCNガイドライン等の記載とも合わさないといけませんもの。
仕方がないのですよ。わかります。
中の上、中の中、という感じですかね。
中の上のカルボプラチンは、
・NK1受容体拮抗薬の有効性が示されているので、使いましょう
・5-HT3受容体拮抗薬は第1世代グラニセトロンでも良いでしょう
 (高度レジメンでNK1受容体拮抗薬を使用した場合、グラニセトロンとパロノセトロンで有効性に差がない。じゃあ中の上でもグラニセトロンでええやろ、という理屈)
・5-HT3受容体拮抗薬にパロノセトロン使うなら、ステロイドスペアリング

いや~。いよいよ難しいっすわ。
各施設、各診療科で判断が分かれそうです。
お金の面でいうと、パロノセトロンも後発品があるので、グラニセトロンと値段がかなり近づきました。
悪心・嘔吐は自分は嫌なので、できれば、パロノセトロンを使ってあげたいかな…。治療意欲も下がってしまいますし、ごはんおいしく食べてほしい。
ただ便秘等のリスクもあるので…。

軽度催吐リスクは(特にエビデンスないけど)5-HT3受容体拮抗薬もエエで

ええんや。
デキサメタゾンだけだと思っていましたが、第3版から軽度催吐リスクでも5-HT3受容体拮抗薬使ってもええやんになりました。
これも後発品があるおかげです。後発品で薬価が抑えられましたからね。
みんな、後発品もがんばっているのです。

非薬物療法にも注目された、が…。

・ショウガ・鍼・経皮的電気刺激・指圧・運動・漸進的筋弛緩
・ヨガ・アロマ・食事・音楽・呼吸・患者教育・オステオパシー
・リフレクソロジー・マッサージ・セルフケア
・ベッドサイドウェルネス
が挙げられていますが、残念ながらエビデンスが不足しており、ガイドライン上は「悪心・嘔吐ならびに予期性悪心・嘔吐に対して非薬物療法を併施しないことを弱く推奨する」となっています。
鍼治療による悪心抑制、運動療法による悪心・嘔吐抑制、アロマ療法による悪心抑制はガイドラインでも記載されています。
こういった分野のエビデンスも積み重ねも必要なんですね…。

超遅発期が注目されている?!

我々医療従事者が気付きにくい、超遅発期(抗がん剤投与後6日以降)の悪心・嘔吐が昨今、世界で注目されているようです。
まずは超遅発期の現状を知れるように、地域の力も借りながら、対応していきたいな、と考えています。

まとめっ!

支持療法の中でも、制吐療法はその複雑さ、患者個々人での催吐リスク・悪心嘔吐の実際の違いなどのため、チーム医療の力が出しやすい箇所だと思います。
そして、それは患者さんのQOL向上に役立つはず!

実際に、制吐療法を行うためには各施設で登録レジメンの変更・各診療科との協議が必要だと思います。
これがなかなかに地道ですが、薬剤師の得意分野だと思います。

このNoteで興味を持っていただいた方!ぜひ、制吐剤適正使用ガイドライン第3版をお手にとっていただき、一緒に勉強していただけると幸いです。

以上です!

2023年最後の投稿になります!!
メガネは、年末年始は、ハイボール片手に楽しくインプットします!!
2024年、さらにパワーアップしてきますのでよろしくお願いします。

皆様、よいお年をお迎えください!!

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