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お風呂場で思ったこと

仕事から帰って本を読む。自分の心の声を素直に受け止めることが大切とあったから、お風呂に入りながらノートに感情を書き出してみた。

文章は絵よりもバカにされやすそうで怖い。言葉を扱って言葉で否定されることが怖い。でも、今のわたしがそれで否定されたからと言って失うものはない。本当はなにが怖い?
努力できないこと。文章が自分に合っていないと思い知らされること。

怖い声が聞こえたときは、ゆっくり周りを観察してみる。わたしの目はカメラのレンズ。お風呂の蛇口のカビ、今にも落っこちそうなスポンジの傾き方、ピンクの布、水滴の冷えた肌。お風呂に浮かぶゴミはかつてのわたしの一部。

億劫だ億劫だと決めつける明日の光。本当はビルだらけの交差点も気持ち良いし、疲れているのに登らなくちゃいけない坂道も、よくあるドラマの帰りのシーンみたいでワクワクする。なぜか保険や家のCMでは、坂道を登る二人組が映し出されたりして手を繋いでいたりなんかするよね。坂にはドラマがある。

肩に張り付くほど伸びた髪、足の間から巣立っていく水滴のくすぐったい形。水の中でなら、酸素に触れることができるんだと、今初めて気がつく。

不幸になんかならなくたって文章は書ける。満たされている人もそうでない人も。

一度迷ったら、お風呂に入ってこうやってじっと見る。聞く。

肌の産毛が海藻のように揺らめく様、あごをしたたる汗のくすぐったさ、目の前の壁の汚れ。ドラマの主人公はわたしで、わたしのために作られた浴槽で、静かに眺めるワンシーン。

今ここにあるのは自分と時間だけ。

時間と横並びになっている、と坂口恭平さんは言っていた。時間と横並び。
わたしは今と並んで、今のためにこれを書く。そしてこの今が、過去も未来も作れることを知っている。人は時を止めたり追い越すことはできないが、今は自分の思いのままだ。今を大事にしている人は、過去や未来の編集者になることができる。

と、こんな御大層なことを言う自分も恥ずかしいけれど、OKと受け止めて、そろそろお風呂を出ることにする。こんにちは、好きだよ。

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