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グローバルリスク報告書2021年版

世界経済フォーラムが毎年発行している「グローバルリスク報告書 」の2021年版が発行されました。2006年以来、感染症に対する警鐘を鳴らし続けてきましたが、2020年はそのリスクが顕実化してしまいました。

今回の報告書は主に「不平等と社会分断」が導くリスクに焦点を当てており、こうしたギャップを縮められるか否かは、新型コロナウイルス対策を通じた取り組みがインクルーシブでアクセシブルな未来を考慮しているかにかかっていると分析しています。

また、これまでのリスクに加えて、「若者の社会への幻滅」リスクが新たに言及されました。新型コロナにより顕在化した環境悪化、金融危機、格差、産業構造の変化による混乱に晒されている若年世代は、今後の教育や経済的な見通しに不安を抱いて社会への幻滅を深めており、こうした社会的結束の低下は長期的に無視できない社会的リスクになると分析されています。

グローバルリスク認識:分断された未来

・ 今後10年間で最も可能性の高いリスク:異常気象、気候変動対策の失敗、人為的な環境破壊、デジタルパワーの集中、デジタル格差、サイバーセキュリティ
・ これらのリスクが世界にとって重大な脅威となる時期については、短期的、中期的、長期的なリスクに分けられる(下図参照)

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経済的脆弱性と社会的分断の拡大

・ 根底にある医療・教育・金融・技術の社会的格差が、特定のグループや国に危機をもたらす
・ 新型コロナウィルスによる人命と生計の喪失は、社会的結束を脆弱化させる

デジタルデバイドとインクルージョン

・ テレワークの可能性や迅速なワクチン開発など社会に大きな利益を与えた第四次産業革命は、不平等を拡大するリスクも伴う
・ デジタル格差の拡大は、社会の分断を拡大し、包摂的な回復を損ねる可能性がある。

若者の社会への幻滅

・  デジタル技術の飛躍的な進歩は一部の若者にチャンスをもたらしたが、多くの若者は現在雇用氷河期に突入している
・ 環境悪化、金融危機、格差、産業構造の変化による混乱に晒されているこの世代は、教育、経済的見通し、精神的健康に対する深刻な課題に直面している

国際協調後退による気候変動リスク

・ 世界的なロックダウンにより2020年前半に世界の二酸化炭素排出量は減少したが、パンデミック・ショック収束までに環境にやさしい経済へのシフトは困難
・ 国際協調が不可欠な時期に地政学的緊張が持続すれば、世界的なリカバリー促進、将来の危機に対する回復力を強化が困難になる

分極化する産業展望

・ パンデミック後は経済的損失を食い止めるための国家的な挑戦、技術革新、社会構造の変化といった現在のトレンドが、新たな刺激と勢いを与える
・ ただし長期的な持続可能な成長には、先進国経済の停滞と新興国・途上国市場の潜在力の喪失、中小企業の崩壊、大企業と中小企業の格差拡大、市場ダイナミズムの低下、不平等の深刻化などが立ちはだかる

リスク管理とレジリエンス向上のための教訓

・ 制度的権限、リスク資金調達、情報収集と共有など、世界的な備えに関する考察
・ 各国レベルでの対応は出発点が異なることを認識した上で、政府の意思決定、広報、保健システムの能力、ロックダウン管理、脆弱な人々への財政支援など5つの領域から教訓を導き出す
・ 国、企業、国際社会の全体的なレジリエンスを強化するためのガバナンス


直面するリスクを踏まえ、「ダボス・アジェンダ 」では必要とされる原則、政策、パートナーシップについて議論されます。

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子
大原有貴



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