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大量生産・消費時代の金沢デザイナーのアウラ

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 株式会社雪花 上町達也さん

2020年8月3日(月)、secca inc(株式会社雪花)の上町達也さんのお話を伺った。上町さんは、先端の3Dデジタル技術や新素材に、金沢で育まれた伝統工芸技術を掛け合わせて新しいものづくりを追求している、Secca(雪花)の創業者兼デザイナーだ。上町さんのお話で印象に残っているのは、「自分の得意な領域で勝負をしないといけない」ということである。

「色々やってみたいという気持ちはとても分かるが、得意な部分以外をそぎ落としていくことで、周りから信頼を得られて仕事がついてくる。僕もデザインしかやってこなかったのに、ビジネスで収益を上げることに挑戦したら、赤字続きで夜も眠れないくらい忙しくなった」

上町さんがいう「色々やってみたい気持ち」というのは個人的にはとてもよく分かるのだ。僕も興味・好奇心が拡散しやすいので実践するのはなかなか難しそうだが、せめて得意な部分を磨くことくらいはしようと思った。

でも、今回はその格言よりも、作品の美しさに圧倒されたのでそれについて書きたい。上町さんは自身のことを「メーカーとデザイン事務所の間の子みたいな感じ」と言い、先端3Dデジタル技術を基盤に、伝統技術を掛け合わせた独自のものづくりを展開している。
岐阜県出身、金沢美術工芸大学卒業の後にニコンに入社、プロダクトデザイナーとして当時ニコンが新規参入したミラーレス・NIKON 1のデザインに携わっていた。ニコンで働き続けいている中で、熟慮し丁寧に作り込んだ製品も、一年もすれば型落ちとなり見かけばかりのモデルチェンジを強いられる世界に疑問を持つようになり、「自分たちにしか生み出せない、世の中をより良くする価値を造形したい」という想いが強くなり、大学時代を過ごした金沢に舞い戻って柳井友一さん、宮田人司さんと3名でSeccaを創業。当初はビジネスのやり方が判らず大変苦労したが、今では国内外から高い評価を得ている。

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それぞれに想い、ストーリーがあるそうだ。単純に伝統工芸に傾倒していることがわけでもなく、テクノロジーにのみ軸足をおいているわけでなく、我が道を行くデザインに突っ走っているわけでなく、うまく伝統技能と最先端テクノロジーを融合させてデザインセンスによって作品を形作っている。これはもう、商業用の工芸品ではなく一点物のアート作品である。ウォルター・ベンヤミンのAuraアウラというのはこういう工芸品のことを言うのだと思った。

僕は上町さんは「稼ぐのに向いていない」というところも含めて、デザイナーというよりアーティストだと思う。上記の作品は(写真の撮り方も含めて)どこか、高品質な一眼レフカメラの広告と共通する美しさを感じる。それが上町さんの世界観であり、美しさの表現なのだろう。

最後にその世界観を最も強く感じられた、雨が多い金沢の街の美しさを最大限に引き出したホテル「雨庵(うあん)」のイメージ広告をどうしても載せたい。

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この他にも、「ホテルアゴラ」という茶の湯文化を体現するホテルがありこちらも「雨」がテーマになっている。金沢に行ったらぜひ見てみたい。

#武蔵野美術大学 #造形構想研究科 #クリエイティブリーダーシップコース #Secca  #金沢  #雨 #芸術作品  # Aura

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