会うことができなくても
いつも心に居てくれて
毎年　金木犀の香りを待つこの季節には
殊に　想いが募る
あこがれの人がいる

人としての生の内に
あらゆるタイミングが重なって
出会えたこと

大好きな素敵な人





∴ ∵ ∴ ∵ ∴ ∵ ∴ ∵ ∴ ∵ ∴ ∵ ∴

美しい言葉を話す人
たたずまいに品がある人
内面で誇り高い人
抱えている不安にくじけても
幾度も向き合っている人
を
素敵だな　好きだな　と感じる

そう在りたいのと
もっとよく知りたいという想いで
そんな人と居る時　出会った時には
心も現実の距離も
近づきたくて
感覚を開く

美しい言葉はやさしい言葉
まっすぐな興味 と
重ねた思慮の先　
静かに空気をゆらす
謙遜　疑い　見栄　羨み　から遠く
憶測　比較　判断　を離れ
受け手の心を顔を円くする

自然の中に何も手にせず立ったなら
品のあるたたずまいの人は
大地や海　草木や空　氷や雪にとけて
清らかさを深め

誇りを秘めた気高い人は
眼差しに思索をよぎらせたとしても
誰をも急かすことはしない

不安に向き合う人は
悲しみを通ったかもしれない
逃げる方向へ歩みを進めたことだって
気付くことが多すぎて
顔を上げられない日日を
送ったかもしれない
でも
思い出せた人
大切な人がいること
見ていてほしい人がいること
触れたい人がいること
ここまで手を離さずにきてくれた人が
いること

こんな人が本当にいる
纏う空気のあたたかい人が

共に過ごしたことがある
問いへのこたえを
その笑顔だけで充たしてくれる人と

何かがあって
視野が小さく暗くなってゆく時
ここへ戻ってこよう

思い出すために
素敵で大好きな人たちに
まもられてきたこと
そして
折折出会えていることを

忘れないために
本当はいつも
助けあえていることを
誰かのひらめきの小さな一翼を
担えている時だってあると

聞き逃さないために
真に必要な言葉や音楽　
香りを

　　〈舟越保武 作　聖セシリア像〉
　　　　　　　　　　2023 8 撮影