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15. 流れに乗せる

仕舞ったままにしていた感情があった。それはまあまあ昔の、取り出してしまうと寂しさを呼び起こしそうなものだったから、そっとそのままにして、触れなければ生活は順調。問題ないと信じていた。実際、自分は今とても幸せなのだし。

最近、その感情が少し膨らみ出した。年月を経てもまだ鮮やかに生きていて、対処に困る。隠れていた親知らずが前触れもなく動き出すのに似ている。
この数年はやっぱり色々あったから、疲れてどこかが緩んだのかな。

緩みは自分にとって良くないものだったから、そこからあふれてしまうものも、頑丈に仕舞いなおすことが使命だと思っていた。
でも、どうしてもうまく仕舞いなおせなくて、今までは何となく避けてきたけれど、今回は自分から人に助けを求めてみた。そして、とてもいい距離感で見守ってもらいながら、無意識下で膨らみ続けていたものを、仕舞いなおすのではなく 外に出す体験を重ね、時間をかけて少しずつ身体が楽になってきた。
感情を言葉にした時に聞き手を重い気持ちにさせてしまう心配も一緒に、笹舟にのせて川の流れに乗せるイメージができつつある。
話したことを受け取ってもらうのではなく、自然に還す…宇宙の砂粒に還すのを手伝ってもらう感覚。こんな風にも捉えられる様になってから、申し訳なさは無くならなくても、話すことへの抵抗はだいぶやわらいだ。

人に助けてもらう尊さは、とてもあたたかい。自分にとってはとても勇気が必要だった分、意志を持ってその中に入って初めて、見えてくるものがあることも知った。
知っているつもりだった多くのことが、角をそろえるのとはまた違ったリズムで整理され、体験を通しての立体感が生まれ、周囲の世界の奥行きが丸く深くなってゆく。

光があたると、立体的なものには陰ができるから、世界は明るく前向きなものだけでは成り立てないこと、重みや陰を持っているのは自然であることも 実感をもって分かってきた。

一見、いつも同じところで回転している様でも、ゆっくり 少しずつは動けていて、だから新しい空気を呼吸できていたのだと。

自分は今 生きていて
日々何かを善くしようと試みたり、
あの人やあの人へ 感謝や喜びを届けたり、共有したりする時間がまだある。
とても とっても運がいい。









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