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これならわかる「はやぶさ」① ~つまみ読みでお子さんの興味関心を広げよう#1


2019年は宇宙イベントが目白押し

2019年は年初から重要な宇宙関連のイベントが続いています。

▶1月:NASAのニューホライズンズが太陽系の最果てにある小惑星「ウルティマ・トゥーレ」への接近飛行(フライ・バイ)に成功
▶2月:JAXAのはやぶさ2が小惑星「リュウグウ」への接地(タッチダウン)に成功
▶4月:科学者グループが史上初のブラックホール写真撮影に成功

この機にお子さんの天体や宇宙開発への興味を高めたいとお考えの方、2020年度の中学受験に備えてお子さんにこれらの話題をお話したい方も多くおられるのではないでしょうか。

そこで、お子様の興味関心を広げる読書ガイド第1弾は、まさに今JAXAからの報告が続々とあがっている「はやぶさ2」、そしてはやぶさ2の先行機「はやぶさ」について学べる本を3回シリーズでご紹介したいと思います。


短めの絵本で気軽にスタート

お子さんにも読みやすいよう、はじめの1冊には絵本「おかえりなさい はやぶさ 2592日の宇宙航海記」を選んでみました。全部でたった33ページ。きれいな写真やCG、図解が多く、文章も少ないので読みやすいです。

では早速、この本をお子さんと一緒に読むための予習をしていきましょう!


なぜ?どうして?で効率よく予習を

初めてふれる分野の本にお子さんが興味を示すかは、最初の数ページ、読み始めて数分の印象にかかっています。この点「おかえりなさい はやぶさ 2592日の宇宙航海記」では、はやぶさの”最後の瞬間”から話を始めることで読み手の関心を惹いているのが良いですね!

ただ、1ページ目の文章は

それは、宇宙のはるかかなた「イトカワ」という小惑星から地球に帰ってきた、探査機「はやぶさ」の最後の姿でした。約60億キロメートルも飛行を続け、人類初の偉業を成しとげたあと、地球をおおっている大気圏で燃えつきたのです。その光景は、世界中で見守っていた、多くの人々を感動させました。(中略)これは「はやぶさ」の、約7年間にわたる奇跡の航海記です。

このまま読んだのでは、何が「偉業」で「感動」で「奇跡」なのかがわからないので、お子さんはそれほど興味を示してくれないかもしれません。大人の場合、なんとなくわかったふりをしてしまうことがありますが子供は正直なので…。

ですから、お子さんに興味を持ってもらうためにも、ご自身がこの本の内容をよりよく理解するためにも、遠慮なく「なぜ?どうして? どうやって?」とツッコミを入れながらこの本を読んでいきましょう!具体的には

▶質問1:はやぶさはイトカワへ何をしに行ったの?それはなぜ?
▶質問2:どうやってイトカワへ行ったの?なぜそれができたの?
▶質問3:イトカワでは実際何をしたの?それの何がすごいの?

を知りたいので、この3つの質問を頭に入れてページをめくっていきます。

ポイントをしぼって効率的につまみ読み

 1つ目の質問「はやぶさはイトカワへ何をしに行ったの?それはなぜ?」への答えは「おかえりなさい はやぶさ 2592日の宇宙航海記」の4ページに書かれています(注:MUSES-C=はやぶさ)。

「MUSES-C」の任務は、太陽系の誕生のなぞを研究するために、地球と同じ太陽系にある「イトカワ」の岩や砂などのカケラを持ち帰ることです。

ここで、はやぶさを飛ばしたのは太陽系誕生のなぞを研究するためだということがわかりました。ただ、この説明はとても短いので

・イトカワの岩や砂から太陽系誕生のなぞがわかるのはなぜ?
・今回の目的地はなぜ他の惑星ではなくイトカワだったのか?

などは書かれていません。そこで2冊目の本として、はやぶさのプロジェクトマネージャーを務めた川口淳一郎さんの著書「はやぶさ、そうまでして君は」をつまみ読みしてみましょう。

p22を読むと、惑星から採取する岩や砂などのかけらを「サンプル」、それらを地球に持ち帰ることを「サンプルリターン」と呼ぶことがわかります。今回のサンプルリターン計画の目的とイトカワ(のような小惑星)が選ばれた理由はp39~42に書かれています。


どうして小惑星なの?火星じゃダメなの?

P39~42で私が特に面白いと感じたのは、次の部分です。

太陽系の起源、地球の起源を調べるなら、大きな惑星を、そもそも地球を調べれば良いのではないか。もっともな疑問ですが、丸い惑星というのは、端的に言えば、液体の玉です。質量の大きい惑星は、内部に強い圧力がかかり、熱が発生して、地球の溶岩のようにドロドロに溶けています。(中略)地中の奥深くを探っても、実は、もともと地球を構成していたであろう材料、地球の起源を調べることはできないのです。他の大きな惑星も同じで、火星や金星などの球形の大型惑星からサンプルを持ち帰ったとしても、変質している、あるいは、ごく比重の小さい物質であって、太古にその惑星を形成した物質を理解するという面では、あまり意味はありません。
小惑星は丸い形をしていません。大きな岩をイメージするとわかりやすいと思いますが、これは高い熱を発していないため、内部が溶けていない証拠でもあります。つまりそこには、太陽系が生まれた当初の物質、地球をつくったものと似た物質が、変質しないまま、かつ比重の大小にかかわらず表面に露頭して残っている可能性が高い。そんな小惑星に探査機を送り、サンプルを持ち帰ることに成功すれば、これまで謎に包まれていた太陽系と惑星の起源をひも解く、貴重なヒントが得られるかもしれないのです。

地球をつくったものと似た物質を手に入れるためには、地球や火星などの大型惑星ではなく小惑星へ行かなくてはならないことがわかります。

ちなみに、イトカワのような小惑星の質量が小さいこと、内部がすきまだらけということについては、こちらも川口淳一郎さんの著書「こども実験教室 宇宙を飛ぶスゴイ技術!」のp.14に載っている実験「大きさの違うガムボールで重さを比べてみよう」をすると、お子さんの理解がさらに深まりますよ!


無謀すぎると言われたサンプルリターン

地球外から人類が持ち帰ったものと言えば「月の石」が有名ですよね。実はその後もそうしたサンプルが持ち帰られたことはなかったのです。

小惑星からサンプルを持ち帰った例などあるはずもなく、そもそも人類が地球外の天体から持ち帰ったのは、アポロによる月の石だけ。しかも月は、あくまで地球圏内の天体です。(「はやぶさ、そうまでして君は」p37より)

月ではない、はるか遠くにある小惑星からサンプルを持ち帰る。しかも、宇宙開発予算も少ない日本がそれを実施することはとてつもない挑戦でした。

国内では宇宙科学研究所(※JAXAの前身のひとつ)と文部科学省にその挑戦を認めてもらうために奮闘しつつ、海外ではNASAとのかけひき――先を越されないように牽制しながらも、足りない予算を補うために一部では協力を求めるという難しい関係――を繰り広げていたはやぶさチームの奮闘は、「はやぶさ、そうまでして君は」のp.34~80に書かれています。

p78を読むと、NASAとの関係の中で打ち上げが延期になり、目的地も当初予定していた小惑星からイトカワに変わったことがわかります。「はやぶさ」は出発前からさまざまな想定外を乗り越えてきたのですね。

***

ここまでの本文と、本のご紹介したページを読むと

▶質問1:はやぶさはイトカワへ何をしに行ったの?それはなぜ?

の答えがわかってくると思います。次回は、

▶質問2:どうやってイトカワへ行ったの?なぜそれができたの?
▶質問3:イトカワでは実際何をしたの?それの何がすごいの?

の2つについて、「おかえりなさい はやぶさ 2592日の宇宙航海記」を中心に再び読み進めていきたいと思います。

次回もぜひお楽しみに!

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