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突然の猫ミーム #毎週ショートショートnote

昭和最後の文豪と呼ばれる荒方怪太。

齢八十二になるが筆の方は衰えることなく、現在も3作の小説を並行して書き進めている。

「先生も如何ですか。ファンは喜ぶし、先生のイメージとのギャップは良いトピックになると思いますよ」最後に「ボケ予防にもなるし」と冗談も付け足して、担当編集である安里依乃が薦めてくれたのはSNSだった。

孫世代の安里だが、荒方に無い新しい感覚は、時に物語のヒントをくれた。未だに手書きの荒方だが、安里の提案に乗り、PCを購入した。

本人も驚くほどPCに馴染むのは早かった。「昔ワープロは使ったことがある」と言うと、安里はポカンとしていたが。

「せ…先生、何やってるんですか」
「猫ミームというのだ。孫が教えてくれた」
ある日のブログに突然猫ミームが掲載され、猫の画像に不似合いな堅苦しい言葉の吹き出しがウケ、バズった。
「知ってます。さすがにこれは先生のイメージには…」
「でも、こっちのが楽しいから」

こうして荒方は静かに筆を下ろしたのだった。


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