命乞いする蜘蛛 #毎週ショートショートnote
「餌いねーかなー」
一匹の蜘蛛が天井から糸を垂らして降りて来る。
「あっ、クモさんだぁ」
2歳になったばかりの友理が、カーペットを這う蜘蛛を見つけ、ロックオンした。
ドタバタと蜘蛛のもとに駆け寄る友理。
「ねぇクモさーん」
殺気を感じた蜘蛛は全力で逃げる。
「ちょっ…、なんなんだい、こちとら潰されるのは御免だぜ。人間のガキはやべぇってのは、蜘蛛の世界じゃあ常識だからな」
蜘蛛の常識など露ほども知らぬ友理は一心不乱に追いかける。綺麗好きな母により整理の行き届いた部屋では、隠れる場所も見つからない。
必死で逃げる蜘蛛。
無邪気に追う友理。
「ねぇクモさんってばー」
壁を這い上り始めた蜘蛛を、遂に友理が捕獲した。
「かっ、勘弁してくれよっ!オイラなんにもしてねーだろ。まだ死にたくねーよ」
青ざめ命乞いをする蜘蛛。
捕まえてニコニコ笑顔の友理。
「あらゆうちゃん、クモさんは幸せを連れて来てくれるのよ。だから逃がしてあげなさい」
「はーい」
母の言葉で、蜘蛛は無事生きながらえたとさ。
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