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マンション管理士は稼げる?


はじめに

昔、マンション管理士です。と組合関係者に話したところ、「管理人さんになるにも国家試験が必要なのか?」と言われたほど、マンション管理士の社会的な知名度は低かった時代があったらしいです。
さすがに今は、分譲マンションの管理組合で役員を経験される方も増え、マンション管理士をマンション管理士の専門家と認識してもらえるようになってきました。
先日、管理会社に勤めるフロント(今年マンション管理士に合格)から「マンション管理士って稼げますか?」と聞かれました。
と言う訳で、マンション管理士事務所を開設して2年目の新人マンション管理士の実情と他のマンション管理士の状況をお話します。

マンション管理士資格は、合格率が10%程度で難しい国家資格と言われています。
毎年1万人前後が受験し、1,000名程度の合格者。
合格してすぐに起業する方はほとんどいないのではないかと思いますね。
難しいわりに独占業務が数年前までなく、稼ぐ方法はマンション管理組合のコンサルティング業務契約が中心になります。
実際のところ、全国に分譲マンションは700万棟(2022年国土交通省調査)程度ありますが、マンション管理士と顧問契約を結んでいる組合はほんのわずかです。
その理由は、「顧問料が高いこと」「日常の管理で必要性を感じない」ことだと推測しています。
そのため、年間契約よりも必要な時に契約する短期契約が多く、マンション管理士が顧問料だけで生業に出来る方は限られた方です。
では、マンション管理士はどうやって稼いでいるのか
幾つか紹介します。

1、自治体の事業の手伝い

自治体では5年おきにマンションの実態調査を行います。
ほとんど自治体で行っている調査です。
この調査を各自治体から日管連が受託し、所属するマンション管理士に仕事を再委託します。
マンション管理士の仕事は、実際にマンションを訪問、調査票にある項目を理事長にヒアリング、その結果を集計します。
東京都の場合、地域や区ごとに設置されている支部が担当地域の管理士に依頼をしているようです。
件数が多い自治体では、これだけで数カ月は食べていけるようです。

これ以外にも東京都では常設の電話相談担当や各区で行う相談会に相談員として報酬を得ているようです。
自治体によっては財政的な問題もあり、それ程の予算がつかないこともあり、地域の格差が大きいようで大都市ほど仕事にありつける傾向にあるようです。

2、国の補助事業

管理計画認定制度のような制度が立ちあがると、普及活動の一環として疑問や相談を受ける窓口が必要になります。
日本マンション管理士会連合会は国土交通省の補助事業を受託して行っている業務が「管理計画電話相談」です。
マンション管理組合、管理会社、行政(実施機関である自治体)からの様々な質問や相談に答えています。
この活動はボランティアではありません。
国の補助事業ですから報酬が支払われます。
これだけで生活することはできませんが、起業開始時に一定の収入を確保することはできるのは非常にありがたいことです。

もうひとつ、重要なことはその制度のスペシャリストになれる可能性があることです。
疑問や相談を受けると言うことは、資料を読み知識を習得する必要があります。そのための資料や情報は、他では得られない貴重な経験の場になります。
そのうち、セミナー、研修の講師の依頼もあります。
この報酬もそれ程、期待できる金額ではありませんが、人前で話す経験、プレゼンの構成、資料の作り方をお金を貰って学ぶことが出来る機会は会社員ならまだしも、自営業では滅多にありません。

これが将来、管理組合に対してプレゼン時にも大きな武器になります。

士業の団体に加入すること(マンション管理士であれば日本マンション管理士会連合会、以下日管連)でこのようなチャンスを得ることが出来ます。
日管連に所属するといろいろな仕事への募集があります。
「できるかな?」と思うよりまずは手を挙げることです。
誰でも初めは初心者です。
経験を積むことが重要で、何もせずに待っていても仕事は来ません。

3、マンション管理士を宣言すること

マンション管理士のようなマイナーな資格は、自ら存在をアピールしないと誰も気づいてくれません。
そのために、必要なことは次のことです。
➀ 事務所を持つこと(自宅でもOK)
➁ ホームページを持つこと(簡単でOK)
➂ 名刺を作ること
➃ 事務所案内を作ること
最低でもこれだけは準備しましょう。
意外に重要になるのが、「事務所案内」です。
最初からマンション管理士の実績は書けませんが、積極的に相談会等に参加していることをアピールすると良いでしょう。
*税務署への登録は必須ではありませんが、屋号の口座は将来的に必要になります。また、事務用品や会費等の費用も経費で認められます。
よく考えて決めることが重要です。

4、初めから欲をかかないこと

地道な活動をしていると顧問契約や短期の規約改定などの仕事を得るチャンスは意外にあります。(ただし、営業活動は必要ですよ)
多くの場合は、相談の中で依頼されることが多いです。
最近は組合もいろいろ考えている様で複数のマンション管理士から選ばれることが多くなりました。
この時に経験もないのに高額な顧問料を提示しないことです。
実績も知名度もあるマンション管理士ならまだしも、駆け出しで経験も少ない管理士がいきなり「顧問料は月10万円」などと提示してもその場で一蹴されます。
経験が少ないけど、日管連と言う組織に所属していて、ベテランの先輩に不明な点はアドバイスを受けながら進めることを素直に伝えそれに見合った顧問料を提示するべきです。
実際、日管連では顧問業務の中で分からないことなどは先輩や仲間に相談でき、適切なアドバイスをくれます。
このような経験を積んでいけば、幾つかの仕事を請負ことになり「事務所案内」の内容も自然と充実した内容になります

5、保険会社のお手伝い

日管連では日新火災から依頼を受け、マンションの管理状況を診断するサービスを行っています。
「マンション管理診断サービス」と言います。
診断結果によっては、損害保険の保険料が優遇されることから最近、応募件数が増えているサービスです。
この診断業務は、日管連から地元のマンション管理士に提供されます。
それならの報酬を受取ることが出来ます。
ただし、マンション管理士であっても次のことが必要になります。
1、日管連に所属していること
2、損害賠償保険に加入している
3、診断マンション管理士になる講習を受け試験に合格していること
この業務を1つ受けると、日管連の年会費の元は取れます。
中には保険の代理店として業務を受けている方もいるようでこれだけで生計を立てている方もいると聞きます。

6、組合の顧問、短期契約

最後は、マンション管理士の本来のお仕事です。
よくある仕事としては、理事会だけでは解決できない案件へのサポート業務があります。
● 住民間のトラブル
● 規約の法的解釈
● 細則の策定
● 管理会社の運営の問題点
契約としては理事会への訪問回数(円/回)が多いようです。

案件単位の契約もあります。
● 管理会社のリプレース作業
● 規約、細則の策定
● 修繕工事のサポート
● 長期修繕計画表の作成・見直し
● 認定制度の取得サポート
ほとんどが成果物を伴う契約になります。
これが所謂、期間契約です。

これに対して相談業務を含めて管理組合の運営をサポートする業務が顧問契約です。
理事会や総会に参加して、意見を述べ、組合運営を補助、助言、指導をします。
ほとんどは1年契約で毎年再契約をします。(働きが悪いと再契約を断られます。(笑))
契約によって、実務を伴う業務(規約の改定など)は別途費用を請求する契約方法もありますが、これは個々のマンション管理士によって様々です。顧問契約は、理事会との信頼関係がとても重要です。
複数の顧問契約を持つことでマンション管理士の生計はかなり安定しますが、契約は年度契約です。また、顧問料は決して安くはありません。
ただ理事会や総会に出席しているだけでは、「役立たず」と言われます。
有益な情報の提供、理事会メンバーのサポート、監事のサポートとやることはたくさんあります。
結果として住民から信頼されるマンション管理士になれるかどうかによって契約の延長が決まると言えます。

7、最後に

「マンション管理士は稼げるか?」をテーマに自身の経験を基に紹介しました。
事務所設立2年目ですが、マンション管理士の資格だけである程度の稼げるようになりましたが、まだまだ上を目指したいと思います。
これからマンション管理士を自営として起業を考えている方に言えることは
1、資格を取得したから稼げるわけではなく、自ら積極的に業界に飛び込む勇気を持つことが大事。
2、新人には、管理組合と接するチャンスは少ないが、機会(相談会)があれば積極的に参加して経験を重ねることが重要。
3、資格に奢らず、謙虚に管理組合に役立つことを常時心に持ち、最新の情報を入手しておくことが大事。
4、自分が理解していることを相手にわかっても貰うための説明スキル、プレゼンスキルを高めておくことが重要。
5、誰でも初めは初心者。初めから上手にやることを求めることも重要ですが、顧問契約は人間力が最大の武器になることを忘れないことが重要。

参考になれば幸いです。


組合規約の改定のお手伝い






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