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FE名古屋〜B1への軌跡〜|21-22シーズン編

スローガン

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シーズン振り返り

 週ごとの詳細な振り返りは以下のマガジンからどうぞ。

◉開幕前の話題

 このシーズン、FE名古屋はロスターの大改革に着手しました。昨年から残ったのは宮崎恭行、鹿野洵生、林瑛司、会田太朗の4人で、それ以外は外国籍選手も含めて全て新加入となりました。
 しかしその新加入の選手たちはいずれも実力者ばかり。前年のB2で個人タイトルをとったアンドリュー・ランダル(得点王)、石川海斗(アシスト王)、相馬卓弥(3P王)の3選手に、B2優勝を果たした群馬から野﨑零也とブライアン・クウェリ、前年に帰化を果たしたエヴァンス ルーク、そしてB1で主力としてプレーしていた笹山貴哉と、そうそうたるメンバーが集まりました。
 これによりFE名古屋は一気にB2全体の注目の的となり、FE名古屋ファンはもちろん他クラブのファンからも、「これは強いに違いない」「いや、スターばかりでチームとして成立しないのでは」などいろいろな意見が飛び交いました。

 また、このシーズンは選手だけでなくコーチングスタッフの拡充にも力を入れました。
 川辺泰三HC、澁澤秀徳AC体制は継続しつつ、さらに過去には千葉ジェッツでもACを務めたカルバン・オールダムACと通訳兼任の吉本和真ACを迎え、川辺HCのサポート体制を強化。
 また、ストレングスコーチやトレーナー、マネージャーもしっかりと揃え、目標に掲げたB2優勝B1昇格に向けて万全の体制を整えました。

◉離脱者続出も層の厚さでカバーした序盤戦

 序盤戦でまず気になったのはプレータイムのマネジメントでした。特に、石川海斗と笹山貴哉というB2では文句なしにトップクラスのPG2人がいる状況で、どちらを先発させるのか、共存はあるのか、というのは多くのファンが気にしていたところだったと思います。

 開幕戦では石川が先発して笹山がベンチスタートとなりますが、続く福島とのGame1で敗れると、その試合まで先発を務めていた相馬卓弥が負傷したこともあってGame2からはさっそく石川と笹山の両PGが揃って先発するようになりました。
 これで落ち着くかと思いきや、今度はエヴァンス ルークが負傷や日本代表の招集で不在となってしまい、石川と笹山を並べると高さの面で厳しくなることもあって、笹山が先発して石川がベンチスタートに回る形に。しかし、11月末の佐賀戦ではその笹山自身が負傷してしまいます。
 この負傷による離脱が思いの外長くなったことで、その間に石川を先発させる形がチームに定着。コーチ陣も大いに悩んだに違いない先発PG争いには、思わぬ展開で終止符が打たれることになりました。

 ただ、先発のラインナップが定着しない間も、FE名古屋は連敗することなく順調に勝ち星を積み上げていきました。相馬、ルーク、そして笹山と主力選手に離脱者を出しながらもしっかりと勝ち切ることができたのは、何と言っても層の厚さと、それによる日常的なポジション争いの激化の賜物だったのではないかと思います。
 特に、B1のレベルを熟知した笹山の加入は大きく、チーム全体の意識がB2レベルからB1レベルに引き上げられたことで、野﨑零也や林瑛司といった若い選手たちは大いに刺激を受けて成長できたのではないでしょうか。

◉東地区の上位対決を制してリーグ最高勝率でプレーオフへ

 年末から年明けにかけては同じ東地区の上位クラブとの連戦がありました。
 その最初となる仙台とのGame1は20点差をひっくり返されての大逆転負けを喫してしまいますが、それで火が付いたのか翌日のGame2以降は、福島、越谷×2、仙台×2と難敵ばかりを相手に6連勝を飾り、東地区首位の座を固めることに成功します。

 この間、コロナによる隔離や試合中止などがありながらも勝利することができたのは、以下の記事にもある通りディフェンスで違いを出せたことが大きかったと思います。

 この頃にはアンドリュー・ランダル、ジェレミー・ジョーンズの2人にルークを加えた3BIGによるディフェンスが強度を増してきており、より高さやパワーのある相手のビッグマンにしっかりとチームで対処することができるようになっていました。
 また、ルークを外国籍ビッグマンにマッチアップさせ、浮いたジョーンズを相手のエースガードにマッチアップさせることでオフェンスの出どころを封殺するという形がチームの強みとして定着してきたのもこの頃だったと思います。

 その後も順当に勝ち星を伸ばし続けたFE名古屋は、他クラブが激しい順位争いをしているのを横目に、早々とプレーオフ進出、そしてリーグ戦の最高勝率を決定付けました。

◉プレーオフ開幕~vs越谷~

 プレーオフ1回戦(クォーターファイナル)の相手は、昨季のプレーオフで敗れた越谷アルファーズ。
 昨季はB1ライセンスを持たないクラブ同士の対戦となりましたが、今回はお互いにB1ライセンスを取得し、B1昇格に向けても負けられない戦いとなったこの試合。

 どんな試合展開になるのかと思いましたが、FE名古屋は最高勝率で駆け抜けたリーグ戦をさらに上回る集中力を見せて攻守で越谷を圧倒し、Game1では前半だけで34点のリード。後半も手を緩めず、最終的には113-63の大差でFE名古屋の勝利となりました。
 Game2は打って変わってシーソーゲームに。しかし、石川、笹山、ランダル、ジョーンズといった主力の選手たちが要所で活躍してFE名古屋が1歩抜け出すと、焦る越谷はアイザック・バッツがルークの足に手をかけてしまいアンスポーツマンライクファウルを吹かれてしまい万事休す。結果的に、追いすがる越谷を突き放してFE名古屋が2連勝でセミファイナルへ駒を進めることになりました。

 この2試合は、とにかくFE名古屋のB2優勝B1昇格に対する気迫がすさまじく、特に石川と笹山の両PGはリーグ戦での活躍を超える『プレーオフ・モード』を見せてくれた印象でした。

◉第1の目標「B1昇格」~vs熊本~

 勝てばB1昇格が決まるプレーオフセミファイナル、FE名古屋の相手は熊本ヴォルターズとなりました。

 点の取り合いとなったGame1は、熊本に43.3%もの高確率で3Pを決められながらも、それを上回る52.9%という驚異的な確率で3Pを決め返してFE名古屋が勝利しました。タフなディフェンスをしながらも決して余計なファウルはせず、熊本のフリースローをたった1本のみに抑えたのも印象的でした。
 一方、B1昇格のかかったGame2はロースコアな展開になりました。得点源であるジョーダン・ハミルトン、木田貴明が故障を抱えていたという影響も大きかったと思いますが、それを差し引いてもオフェンス自慢の熊本を66点に抑えたディフェンスは見事の一言でした。

 これでFE名古屋はプレーオフファイナル進出を決めるとともに、目標の1つであったB1昇格を達成することに。しかし、B1昇格を喜びこそすれ、選手やコーチたちに浮かれている様子は一切なく、もう1つの目標であるB2優勝に向けて虎視眈々、という印象でした。

◉第2の目標「B2優勝」~vs仙台~

 B2優勝のかかった大一番、ファイナルの相手は仙台89ersでした。

 Game1はまずFE名古屋がその強さを見せつけた形。仙台のお株を奪うような激しいディフェンスでターンオーバーを誘発すると、そこからの早いオフェンスで得点を重ね、前半で20点のリードを築きます。
 後半は仙台もディフェンスの圧力を高めてきますが、結果的には前半の点差が大きく響き、FE名古屋としては主力メンバーを休ませながら勝利することができました。

 続くGame2、仙台は日本人ビッグマンである荒尾岳を先発起用して勝負に出ます。FE名古屋としてはその荒尾のところから突破口を見出そうとしますが上手くいかず、逆にジャスティン・バーレルのアタックによってビッグマンがファウルトラブルに追い込まれてしまいます。
 それでもブライアン・クウェリの奮闘などで前半はなんとか2点のビハインドで折り返すと、第3Qには、ファウルトラブルから戻ってきたルーク、ジョーンズの活躍でFE名古屋が逆転に成功します。
 しかし、このままでは終われない仙台が奮起し、渡辺翔太やジェロウム・メインセ、そして途中で足を痛めながらもコートに戻ってきたバーレルの活躍で再び逆転。FE名古屋も野﨑零也の3Pなどで望みをつなぐも、仙台の気迫あふれるディフェンスの前に単発なオフェンスを繰り返してしまい、1勝1敗のタイに持ち込まれてしまいました。

 そして泣いても笑っても最後となるGame3。詳細は後述の「印象に残った試合」で触れますが、ここへきてさらにディフェンスのギアを上げたFE名古屋に対して満身創痍の仙台は打開策を見いだせず、リーグ戦含むシーズン全体での最少失点でついにFE名古屋がB2優勝を決めました。

 優勝の要因は、以下の記事に書いてあることがすべてだと思います。
 「スター選手ばかりを集めて『チーム』としてまとまるのか?」とさんざん言われたこのシーズンでしたが、全員がエゴを捨ててチームのために、特に華やかなオフェンスよりも泥臭いディフェンスでも手を抜かずプレーしたことで、B2優勝B1昇格という『最高の景色』を見ることができました。

その他のTopics

◉エヴァンス ルーク日本代表選出!

 シーズン途中にはエヴァンス ルークが日本代表に招集され、FE名古屋として初の日本代表選手となりました。FE名古屋でも見せていた献身性は日本代表のトム・ホーバスHCにも認められ、その後も継続して日本代表に招集されています。
 とはいえ代表における帰化選手は一枠と非常に狭い枠で、来年開催されるワールドカップに向けては、ここ最近は代表を外れているギャビン・エドワーズやライアン・ロシターなどのライバルたちとの争いに勝たなければなりません。
 2022-23シーズンはB1の舞台でその強力なライバルたちと直接しのぎを削り合うことになるので、それも楽しみですね。

◉B1ライセンス交付

 2022/4/12、ついにFE名古屋にとって長年の悲願であったB1ライセンスが交付されました。

 長らく課題となっていたアリーナについては新設する方向で話が進んでいるようで、詳細は2022年の11月末に公表される予定とのこと。今回はその新アリーナの確実な進展を条件にライセンスが交付されているので、それが問題なく進むことを祈っています。

チーム成績

 平均得点&オフェンシブレーティング(オフェンス100回あたりの得点)はリーグ2位、平均失点&ディフェンシブレーティング(デフェンス100回あたりの失点)はリーグ1位と文句なしの成績。
 さらに特筆すべきはファウルの少なさ(リーグ1位)で、クウェリを除けば比較的アンダーサイズな編成だったにもかかわらず、安易にファウルで止めることなく全員でしっかりと身体を張ってディフェンスができたことがこの好成績につながったと思います。

勝手に選ぶシーズンMVP

 アンドリュー・ランダル

 タイムシェア&ボールシェアを優先した影響で平均得点は前年と比べて8点近く減らしたものの、チーム内では1位の成績。チームプレーに徹しながらも、苦しい場面や重要な場面では積極的な仕掛けでチームを引っ張ってくれました。
 ターンオーバーも少なく、アシスト/ターンオーバー比では過去最高クラスの成績。ディフェンスにも手を抜かず、リバウンドでもチーム1位を記録しました。
 B2屈指のオールラウンドプレーヤーとしてその力を存分に見せつけたシーズンとなりましたが、20-21シーズンの短期契約を除けば初めてのB1の舞台となる来季、どれほどの活躍を見せられるのか注目です。

印象に残った試合

 vs仙台89ers(B2プレーオフ決勝Game③ 2022/5/22) 

 前日のGame2では荒尾岳の先発起用を気にしすぎてしまったのか、かえって自分たちのスタイルを崩してしまった印象のあったFE名古屋でしたが、この日はピック&ロールやボールムーブを駆使して攻めるオフェンスと前線から激しく仕掛けるディフェンスという本来の自分たちのスタイルに立ち返った印象がありました。

 その甲斐あってか、この日は序盤からFE名古屋が飛ばします。第1Qを20-7で終えると、第2Qは仙台もディフェンスの圧力を増してお互いに譲らず、9-9のロースコアに。29-16でFE名古屋が13点リードして折り返し。
 そして後半に入ると、プレーオフを全てGame3まで戦ってきた仙台にさすがに疲労の色が見え始め、持ち前の激しいディフェンスを継続しようとするも足が動かずにファウルになる場面が増えてきます。その結果、FE名古屋は第3Qだけで10本のフリースローを沈め、点差は一気に21点に。
 第4QになってもFE名古屋はディフェンスの質を落とさず、この大舞台でシーズン最少の44失点に抑えて見事に勝利することができました。

 『最高の景色』にふさわしいバスケットを最も重要な試合で見せてくれたFE名古屋でしたが、来季B1を戦う上ではこれをスタンダードにしていかなければなりません。チームのさらなる成長に期待したいですね。

最後に

 ここまで振り返ってきたようにFE名古屋のB2での6年間は、多少の浮き沈みはあれど総じてB2の強豪として君臨し続けた6年間でした。
 ただでさえBリーグは選手の入れ替わりも激しい上、B2はB1からの降格やB3からの昇格もあって勢力図が容易に入れ替わるリーグです。その中で常に上位に顔を出し続けるのは、いくらクラブに予算があったとしても簡単なことではなかったと思います。

 また、常に上位にいるクラブにとって、21-22シーズンの開幕前のオフのような大改革は、相当な覚悟がなければできるものではありません。一歩間違えば、前年までに積み上げてきたものと一緒に既存のファンまでも失いかねないリスクのある選択だったと思いますが、見事に結果を出したクラブには賞賛の気持ちでいっぱいです。
 それに、選手が大きく入れ替わったこともあって全く別のチームになったかのように語られることも多いですが、本当にやりたいバスケットのスタイルは川辺泰三HC体制になってから大きく変わった印象はありませんでした。単純にそれを体現できる選手たちが揃ったのがこの2021-22シーズンだったというだけで、これまでの積み上げがなくなったわけではないと感じることができたのも個人的には嬉しかったです。
 これまでのB2での6年間の集大成がこのB2優勝B1昇格につながったのだという実感がありました。

 最後に、以下の記事でも語られていますが、Bリーグの開幕当初はまだまだ企業の部活色が濃かったところから、この6年間でクラブも本当に成長したと思います。その間ずっとチームを支え続けてくれた川辺泰三HCはもちろん、全てのクラブ関係者には感謝しかありません。
 来季はB1の舞台で厳しい戦いが待っていると思いますが、クラブもファンも一緒になって成長していきましょう!

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