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HAPPY 2022/04/12

夏目漱石は彼の作品の『草枕』冒頭でこう述べた。

智(ち)に働けば角が立つ。情に掉(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

これは意訳すれば「賢さ見せりゃやっかまれるし、情け深ければ不必要に頼られてうざったい。自分の意見を強く主張すりゃ誰かと衝突して問題児扱いされる世の中だ。まったく人付き合いはコストパフォーマンス悪いぜ」というものだ。そしてそんな現実に疲れてしまった人間は、主張を抑えて透明になり、ふわふわしたことしか言わないクラゲのような存在になっていく。しかし、逆張りして過激に行動すれば明日のウィル・スミスはあなただ。

そんな悲観的な考え…………そういうものに感化されそうになるときがある。それはくたくたに疲れているときに悲しいニュースを聞いたり、ずっと楽しみにしてたイベントが直前で中止になったり、山積みの問題が何一つ解決していないのに日曜が終わろうとしているときなどだ。全てを投げ捨て、3000時間くらい眠ってしまいたくなる瞬間だ。

そういうときは世を捨てて山賊になるしかないのだが、残念ながらそれは最終手段だ。我々は残り少ない理性をかき集め、何かしらで元気を出さなければならない。つまり、元気を出す……そういう手段が必要なのだ。

美味しいものを食べたり、ゆっくりと風呂に入ったりが代表的な手段だが…………もうひとつ、"趣味"がその手段足りうる。そう、趣味だ。自分の好きなものに没頭する時間……それはかけがえのないもので、明日を生きるための元気の水脈だと言えるだろう。

私の場合……いくつかの趣味があるが、そのひとつに"イラスト"というものがある。イラストレーション…………描くのも好きだが、見るのも好きだ。クールだったりキュートだったりするキャラクターが描かれたイラストや、世界観が全面に描かれた神秘的なイラストなども大好きだ。それをじっくりと眺めている時間は至福の瞬間だと言っても良いだろう。

そしてそんなイラストの中には……特別な種類がある。それは。「自分のために描かれたイラスト」だ。ルネサンス以降、肖像画として人間は自分の姿を描かせた。ナポレオンがいくつの肖像画を描かせたか知っているか? そしてそれは何百年経過した現代においても、アバターという形で継承されている文化のひとつなのだ。

……そろそろ勘づいたか? 今日の日記は、私が自慢をするための日記だ!

それはつまり、友人が絵を描いてくれたということだ!

イエ~~~イ! とてもキュートなイラストを描いてもらった! 私と、描いてくれた友人本人が楽しそうに両手を掲げバンザイしている。まさにハッピーを体現したステキ・イラストレーションだと言えるだろう。私の元気の源になる作品であることは間違いない。この日記はここまで約1000文字だが、この喜びを表現するための1000文字である。

私は昨夜、ウキウキでイラストを見つめる夜を過ごした。生きているとたまに良いことがある。人の世もまだ捨てたものではないということだ。夏目漱石が『草枕』で言った悲観的な発言に対しても、私は自信をもって「そんなヒネるなよ。きっと明日にゃいいことあるよ」とアンサーできるだろう。漱石もイラスト描いてもらえばよかったのに。明治時代にはSkebとか無かったんかな。


……と思ったが、よくよく考えると死ぬほど描かれてたなアイツ。

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