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『転生』志賀直哉 著

カフェ店主おすすめの一冊と、個人的に気に入っているツボをご紹介します。
今回は志賀直哉の小説『転生』。著者の代表作品が収録された短編集『小僧の神様・城の崎にて』の中の一編です。

癇癪持ちで叱言(こごと)の多い夫と、気が利かなくて忘れっぽい妻のお話。夫は妻に苛立ち続け、妻は夫に叱られ続けながらも、お互いに生まれ変わっても一緒になろうと、来世は夫婦仲の良いとされるオシドリに生まれ変わることに決めます。
夫は癇癪を起し続けて先に逝き、妻はますますモウロクして気楽にしばらく生きる。約束通りに先にオシドリに生まれ変わった夫は、その妻の様子を「相変わらずだ」と思いながら待ちます。

そして何年か経った後に死んだ妻ですが、生まれ変わる時になって何に生まれ変わるかを忘れてしまってさあ大変。迷いに迷ったあげく、「自分はいつも夫に『迷う二つの場合があると、お前は宿命的に間違った方を選ぶ』と言われていた」と思い出し、結局生まれ変わる動物を間違えてしまう妻。
それでも、オシドリの夫とついに再会を果たします。
ラストは落語のようにオチる痛快さ。

この小説のツボは、再会した夫婦の結末。
大学生の頃、はじめてこの小説を読んだわたしはこの結末に、これは究極の愛ではないかと思ったものです。

『叱言(こごと)の報い』という教訓とされていますが、妻はいったい何の動物に生まれ変わり、夫とどんな再会を果たしたのでしょう。
今読むとモラハラ的にピリピリとくる描写が多々あるので、寛大な心持の時に読むことをお勧め致します。わたしも夫と喧嘩中には『釣りキチ三平』の三平のユリッペに対する態度にさえイラついて内容が入ってこなくなります。
そんな『転生』ですが、とても短いお話です。ぜひ、珈琲と一緒に軽くお楽しみください。


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