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今、そこにある店を愛して欲しい

尾鷲市内のある飲食店。

オープンして3年が経つそのお店は私の地元では、一番注目を浴びているお店だと思います。

毎月大きなイベントを企画し、毎週小さなイベントも実施しています。

オープン以来交流のあるそのお店は、3周年のイベント終了後に、リニューアルオープンのために1ヶ月の休業に入りました。

そして3年間働いていた数人のスタッフも卒業することになりました。

そのスタッフの新たな旅立ちの門出を祝して、ケーキを作らせていただきました。

『リースタルト』(リング状のタルト)の真ん中にさらにタルト。
真ん中のタルトは、その日の主役が食べる権利があります。


ドワーフのケーキピック。新しい道を開拓していく友人に幸あれ。




さて、ある日の夜、別のSNSサイトに殴り書きした文章。

夜中に酔った頭で殴り書きした支離滅裂な文章ですが、意外にも内容が良かったのでこちらに転載します。

以下、転載。


先日、商工会議所青年部の新年度の総会と、親睦会・懇親会がありました。

懇親会で食べる料理や飲料を、青年部にゆかりのある飲食店などで分担して用意します。

私も食後のデザートを人数分(約30人分)仰せつかりました。
ありがたいことです。

全然関係ない話なのだけど....この仕事を始めてから、しばらくずっと、自分の仕事のことをぐるっとひとまとめで『カフェのお仕事』と呼んでいました。 『飲食店』とかではなく、『カフェのお仕事』と。 別にどうでもいいといえばどうでもいい話なんですけどね。

カフェというのは.....お客さんに、定食とか、丼とか、麺とかを、食べてもらってお腹を満たして帰ってもらう、というタイプの飲食店とはちょっと性質が違ってまして。 そういう、『お腹を満たすための飲食店』はもちろん飲食店として『本来の姿』だと思うし、私もそういう飲食店を多く利用します。

ただ、カフェ、というのは、売り物にしているのが、コーヒーとかスイーツ….いわゆる『嗜好品』なわけですから、『腹を満たして帰ってもらう』とはちょっと違っていると思います。

だから、季節の花を飾ったり、季節や天気に合わせて音楽を流したり、写真を飾ったりします。

なんとなく、『そういうこと』を明確に意識したのは『へうげもの』という漫画を読んでからのような気がします。

『へうげもの』は戦国時代の『茶の湯』をテーマにした、『茶人』たちの活躍を描いたギャグ漫画(←誤解を恐れずに言うと、僕は『へうげもの』はありとあらゆる手法を使って戦国武将や茶人が『一発ギャグ』をぶちかます漫画だと思っています)で、ギャグ漫画であると共に、日本における『現代アート』や『デザイン』の原点について触れている内容だと思っています。 (女性にはすこぶる評判の悪い漫画だとも思っています)

『へうげもの』の中で『茶室』は、現代的な用語でいうところの『インスタレーション』であることがわかってきます。 それと同時に茶室や茶の湯が『明日の命もどうなっているかもわからない戦国の世において、命がけで人を『もてなす』ということはどういうことか』を各茶人が披露する場でもあります。

『へうげもの』の主人公、古田織部の場合、その『命がけのもてなし』が『笑い』『一発ギャグ』として個性を爆発させていきます。 (織部の師匠である利休は織部とは逆に、極限の狭さと小ささと地味さにおける緊張状態が作り出す美学を追求していきます)

『一度使った『ギャグ』はもう二度と使わない』というのがおそらく、この漫画の中の織部における(利休とは違った意味での)『一期一会』なのだと思います。

20代の頃はしばらくこの漫画に多分に影響を受けていたように思います。(今もそうです)

なので、自分の仕事を長らく『カフェの仕事』としていた(『へうげもの』で例えるならば、茶人が茶室という空間を作るということ)し、なんとなく、漠然と、そういう定義をしていたし、自分のことを『職人』でもなければ『表現者』でもなく....なんとなく自分のことを『茶人』だと思って、そんな風に気取って、振舞っていたように思いますし、今でもそういう部分はあると思っています。 (別にそれが悪いとも思ってないですし)

ところが、なんとなく、自分のことを、もっと『職人』とか『表現者』としてやってみたい、という欲求のようなものが、遅ればせながら30代も後半になって出てきたように思います。 (もちろん自分で自分のことを『職人』とか『表現者』と名乗るにはあまりに出すぎたことだとはわかっていたので、そんなことは口にはしてませんが....)

そう思った時に、やっぱりこの仕事において『職人』とか『表現者』として入り込める部分があるとしたら、それはやっぱり『製菓』の部分なんじゃないかと改めて思うようになり、30代後半からやっぱりちょっと『製菓』についてもっと上達したい、と思うようになりました。
(と同時に『コーヒーの焙煎』という分野も、自分でやってみたい、という欲求も出てきました。『焙煎』という行為もまた、『表現活動』の一つなのかな、と思うようになりました)

私は別に表現者でもなく、表現活動・表現行為をする者でもありません。 絵画や動画や音楽や身体表現によって人を楽しませる、ということをしておりませんが(むしろもっぱらそういうことを楽しませてもらってる側です)、もし、一雫でも『表現行為』のようなものを忍ばせることができるとしたら、それは『製菓』なのかな、と。

お菓子を作ることを僕の中での『表現行為』としてもいいですか?
しますよ?
しますね!

という心境の変化が、明らかに30代の後半からあって、コロナを経てそれは明確になったような気がします。


 

ちょっとまた話を『商工会議所青年部』に戻しますが、青年部は若手の事業主や、事業主の2代目・3代目が多く所属しています。

これは以前に持っていた私のイメージで、そしてそのイメージは当たらずとも遠からず、という感じだと思うのだけど、どちらかというと、『職人』や『表現者』タイプの人はあまり所属していない、もしくは所属していたとしてもあまり会議に出席しておらず、出席するのはやはり『経営者然』とした人が多かったように思います。

故にちょっとあまり足が向かなかったのも正直あるのだけど、数年前にちょっとした改革があり、色んな人が出入りするように変わったように思います。

『職人』とか『表現者』とまでは言わないものの、私と同じく飲食店の人の参加率も多くなったように思います。 ただ、それでもやっぱり、個人的にはちょっと苦手な部分もあり....例えばゴルフの話でめっちゃ盛り上がったりする部分などは正直未だに馴染めないのですが(そういうお付き合いも大事だとは思いますが)、まあ、それでも私が『青年部』に籍を置いていられる時間もあと少し(年齢制限があるので)なので、楽しく刺激的な集まりから離れる寂しさもあれば、苦手なお付き合いから解放されるという喜びもあります。

もちろん、飲食店の経営者なので、経営についても真剣に考えないといけないし、そういう部分において、商工会議所青年部に所属する、というこの期間は自分にとって『経営者としての自覚をより促すもの』として、とても有益だったと思いますし、実際、有益な情報をたくさん得たと思いますし、コロナ禍を利用して、ずっと放置案件だった『事業継承』を遂行したのも、青年部に所属したいたことがきっかけでした。

『職人』としてやっていきたい、という欲求もありつつ、でも『経営者』として、事業を成立させる必要性もあります。

例えばこれを『スタジオジブリ』で例えるなら、

『職人』『表現者』としてやっていきたい宮崎駿がいて、その宮崎駿に存分に創作する環境を整えてやる『経営者』としての役割の鈴木敏夫がいるわけですが、 小さな飲食店を細々とやっている者が『表現』だの『職人』だのと大層なことを言ってる場合ではなく、まずは、経営者としてしっかりとした経営をやっていかなあかんわけで、でもその一方で、その経営を支えるための『商品』『売り物』がしっかりとしている必要もあるわけで。

他の代替可能なものを作り続けるわけにはいかないのです。

だから、『経営者』としてしっかりやっていかなければいけない、というのと『表現者』『職人』としてもちゃんと技術を磨いていかなければいけない、というのは車の両輪なわけで、、、でも大体において個人の小さな飲食店には宮崎駿と鈴木敏夫が分担して存在しているわけではなく、そのお2人の能力の100万分の1の能力しかないとしても、強制的にその2人分のお仕事を同時にこなさなければならないわけで、まあ、日本にある多くの中小企業、飲食店、個人事業主なんて、そんな無理ゲーとも思われることをやっていたりしますし、そんなことをひたすら続けているうちに誰も引き継ぎできないような状態になっちゃってたりして、結局、奇跡的に、宮崎・鈴木の役割をこなせていたとしても、その代で終わってしまいます。 (多分カフェスケールもそう)

今、存在している奇跡的なお店は、本当に、今、その瞬間に奇跡的に存在しているのであって、1年後はもうどうなっているかわかりません。 全国にある『今あるお店』は、ほぼ、例外なく、『奇跡的に今あるお店』で、次代に引き継がれることはありません。

だから今、その町にあるそのお店を、今、愛してあげてください。
(次代は次代で、『新たな奇跡的なお店』がその時代に合わせた形で出現はするでしょうが。)




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