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年末の大仕事と『老後』という言い訳

年末の大仕事といえばクリスマスケーキ。
2023年も無事、注文をいただいたクリスマスケーキを納品した。

クリスマスは1年の中でも特に忙しく、懸念していた右手の腱鞘炎の再発が現実のものとなるくらい、右手を酷使してしまった。

しかし、その甲斐もあって、クリスマスケーキは多くの人の元に間違いなく届き、注文をいただいた方々にはもれなく喜んでいただけた。

カフェスケールのクリスマスケーキ

2023年は、飲食の業界でも(悪い意味で)話題になったニュースがいくつもあった。

食中毒に関するニュースが目立ったが(私が住む尾鷲市でもお店由来の食中毒が2件発生した)、年末に飛び込んで来た大きなニュースは、クリスマスケーキに関することだった。

詳細や経緯は省略するが、同じ業界で働く者として、心が痛んだ。

クリスマスケーキを受け取った側の落胆を思えば怒りは当然のことだと思うし、作った側としても申し訳ない気持ちでいっぱいだったろう。

どちらの気持ちも理解できるからこそ、同業者として、クリスマスケーキの受け渡しは毎年プレッシャーがのしかかる。

ケーキの受注、食材(主にイチゴ)の発注、作成の段取り、作成、トッピング、箱詰め、受け渡し…..。

最後まで気の抜けないこの作業を、毎年1人で管理している。

2023年も無事にクリスマスのミッションを終えたことに、1人、安堵していた。

ところで、クリスマスケーキのオーダーをくれた友人の分を、ひとつだけ、マカロンを使った特別仕様のものを作らせていただいた。

『イチゴとマカロンのタルト』


ピエール・エルメなどの出店で、マカロンが日本で大流行した頃(2005年頃)、自分でもマカロンを作ってやみよう、と思ってマカロンを作ってみたのだけど、なかなか上手に出来ず….。

しかもカラフルで可愛いビジュアルのお菓子に、「ちょっとこれはスケールっぽくないかな?」と思って結局売り物になるレベルに達することもなくフェードアウトしてしまった。

しかしとあるお菓子のレシピ本を見ていると、マカロンをトッピングに使ったタルトが載っていて、あ、こういうマカロンの使い方もできるのか、と思って、同じことをやってみたいと、思い、マカロンの練習を再開した。

マカロンは色んな作り方があって一度は『イタリアンメレンゲ』を使った手法でルセット(レシピ)をフィックス(完成)させたが、どうも納得のいかないことがあり、試行錯誤して『フレンチメレンゲ』を使った手法に切り替え、ルセットを作り直した。

二つの手法を試してみて思ったのは、副材料で色を付ける場合はイタリアンメレンゲ、食紅などの食品着色料を使う場合はフレンチメレンゲがいいのではないか、という結論に至った。
(まだまだデータ不足ですが....)

一応なんとかクリスマスまでにマカロンが形になったので、ちょっとクリスマス用のタルトに応用させていただいた。

この手法、ちょっと他にも応用してみようと思う。

ただ、この方法で作った今回のタルト、ほぼワンオフ(特注品)レベルなので....全ての作業を中断してこのタルトを作るくらいの作業環境でないと作るのがなかなか難しく(今回のものは自分で試してみたかったので勝手にやらせてもらったのですが)、おいそれとオーダーを受けることがない。

もし、自分に『老後』というのがあれば、こういうワンオフのケーキのオーダーを受けるスタイルにすれば、歳をとってもできるのかなあ、とか想像してみる。
(1個あたり1万円とか….)

最近『老後』というワードで言い訳をして、色々と試している。
(まだ老後を語るには早いかもしれないが....てゆーか、自営業者にとって『老後』とは一体何歳からのことなのか....)

それが売り物になる、ならないは別として「もしかしたら、これが老後の生活を助けてくれるかもしれないから」というノリで、本を買ったり製菓道具を買ったりしている。

人類学の用語で『ブリコラージュ』という思考方法がある。

『寄せ集め』とも訳されたりするが、個人的には『その場にあるものでやりくりすること』と解釈している。

その場にある、余り物の材料、道具、知識を寄せ集めて、本来の目的とは違った新しいものを作る。

『設計』の思考ではなく、既ににあるものの組み合わせから新しく作り直す『再設計』『再定義』の思考。

ただ、『その場にあるもの』がゼロだとしたら、ブリコラージュも何もあったものじゃないので、まずは材料を知ること、道具を集めること、知識を蓄えることを今のうちにやっている。

これが老後に何かのきっかけで役に立つかもしれない。
(役に立たないかもしれない)

同じことを書くが、自営業者にとっての老後って一体何歳からのことなのかわかないが、できれば、歳をとっても仕事をしていたいと思っている。

お菓子づくりって、別に重労働とかではないので(面倒な仕事ではありますが)、歳をとってもできるはず。


先日、NHKの番組『プロフェッショナル  仕事の流儀』を見た。

宮崎駿監督に密着した番組。
(主に映画『君たちはどう生きるか』の制作過程を追ったもの)

めんどくさい、めんどくさい、ああ、めんどくさい

と言いつつ、何かを作らずにはいられない性分の宮崎駿監督。
(というか『業』ですね、もはや)

仕事時はエプロンをして、移動の時は2CVに乗る。

私の描く老後の理想は多分あんな感じだと思う....
(年をとってからも何かを作り続ける感じ)

『君たちは(老後を)どう生きるか』

時々、仕事をしながらそんなことを考えている。


2023年の年末の大仕事を終えて思ったこと、それは……

誰かのために美味しいものを作る。

そしてその対価によって得たお金で、今度は誰かに美味しいものを作ってもらう。

世界はそうやって回っている。

今年(2024年)も、そんなふうに生きていければいい。

今年も楽しい会話と、美味しい食べ物と、幸せな音楽に溢れた1年でありますように....

そんなことを思った2023年の年末だった。



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