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reproducibility(再現性)を高める仕事

先日、久しぶりに『イチゴのミルフィーユ』を作った。




長らくミルフィーユの生地である『パートフィユテ』(いわゆるパイ生地)は冷凍のものを使っていたが、今回は『パートフィユテ』を手作りしてみた。

ひとくちに『パートフィユテ』と言っても、その手法はざっくりと3つに別れる。


『フィユタージュ・オルディネール』...生地でシートバターを折り込む。
『フィユタージュ・ラピッド』....生地で角切りバターを折り込む
『フィユタージュ・アンヴェルセ』.....シートバターで生地を折り込む

に分類される。

今回ミルフィーユの生地に採用したのは『フィユタージュ・ラピッド』の手法。


さて、先日、知り合いに

「ハマノさん、お菓子づくり上手ですよね」

と言われたので、

「いや、そんなことないですよ。20年もやってれば誰でもできるようになりますよ」

と言うと、

「だって、お菓子づくりって計量しなきゃいけないじゃないですか」

と言われた。

.....まあ、確かに。

でも逆に言うと、『計量さえ』ちゃんとやれば、同じ味を再現できるのも、製菓のいいところでもああると思う。
(確かに、計量を面倒くさがる性格なら、製菓には向いてないかもしれません)

製菓で難しいのは『ルセットがフィックスされるまで』であって、ルセットさえできていればそれ以降は割と簡単だと思う。
(※ルセット...レシピ フィックス....固定・決定)

難しい部分があるとすれば、『いかに自分らしいお菓子を作ること』、『そのためのルセットを考えること』だと思う。

しかし『自分らしいルセット』さえ完成すればお菓子は『再現性の高いもの』だし、それが製菓の長所だと思うし、故にそのために『計量する』は製菓の欠かせない手順であり、特徴だと思う。

その点、『製菓と似て非なるもの』としては『製パン』が挙げられる。

製パンは製菓と違って、菌を利用し、発酵の過程を経るので、特に自家製の天然酵母の場合、菌の状態や、その日の気温によって発酵具合がかなり左右されるので、その点は『計量』とか『計測』などの数値ではなく、見た目で判断するしかないので、『経験』がものを言う。

その日の状態を見て菌や砂糖や小麦粉を微調整するのがプロのパン屋さん。
(実際、自家製で天然酵母を起こして育てたことがあるが、本当に毎日酵母の様子を見なければならないし、油断するとあっという間に菌が死んでしまったりする。ドライイーストはかなり安定して使いやすいが、天然酵母は本当に難しいと思う。)

話を元に戻すが、製菓は意外に簡単.....だと思う。

ただ、製菓は、専門の製菓道具と製菓材料がたくさん必要で、それらの道具と食材は製菓のためにわざわざ揃えなくてはならないので、汎用性があまり高くない。
(加えて、食材には必ず賞味期限というものがある)

お金はかかるが、しかし、製菓道具に関して言えば、手入れさえしっかりしていれば、一生使えるし、自分が作ったオリジナルのルセットも、一生モノの宝物である。
(作るケーキの9割は、頭にもう材料の分量や焼き時間や温度などは記憶して入っているので、いちいちメモを見ることもないし(そもそもメモもないが)、残りの1割(たまにしか作らないお菓子)はかなり詳細にメモを残してあるし、なんならそのメモが物質的に失われも大丈夫なようにクラウドで保存してある)

知識も技術も一生モノだ。

製菓は未だに何世紀も前の技術や知識が今でも活用されているし、基本的にはアナログな世界だ。

温故知新。

そこが気に入っている点でもある。

日進月歩で進化し、最新モデルによってあっという間に古いものが駆逐されていくデジタル技術やITの世界とは違い、極めてアナログな世界だ。

『実在的・物質的・身体的』

とも言える。

もっと言うと

『実在的・物質的な道具と材料と、積み上げてきた身体的な技術と知識の組み合わせの世界』

だ。

そして(話はスタート地点に戻るが)、

『計量さえすれば再現可能』

な世界だ。

性格の向き不向きはあると思う(何なら私はどちらかというと不向きな方だと思うが)、考えてみるとなかなか面白い世界ではあると思う。


先日観たNHKの番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』。

宮崎駿監督に密着した回。

「面倒くさい 面倒くさい」と悪態をつきつつも、80歳を過ぎてもまだなお、創作意欲を失わず、創作を続けている。

あんな風に生きたい、と思う。

そのために、今のうちに、できるだけ多くのルセットと製菓道具と知識と技術を貯めておきたい。

再現性と精度を今のうちに上げておくこと。

それしか生き残る術はない。




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