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にっこり笑ってフリージャズ その13


1970年代の(フリー)ジャズレコード店(あちこち脱線して迷走気味です)

1970年代初頭、私の働いていたジャズ喫茶ではフリージャズのレコードは主に通販を利用していました。大阪の「LPコーナー」や渋谷の「JARO」など。当時のジャズ雑誌に広告がありました。

郵送料450円の時代です。

国内盤は仙台市内で買えたし(市内にはまだレコード店がたくさんありました)、ヤマハもカワイもサンリツ(仙台では大きなレコード・楽器店、クラシックに強かった)も店内に広いレコード売り場をもっていました。私のいたアヴァンのある名掛丁商店街にも「フジ楽器」という小さな店があり、日本語解説を添えてシュリンクされたブルーノートの輸入盤が注文すれば取り寄せできたものです。それでもフリージャズの輸入盤となると市内では入手不能。コンサートやライヴを観に上京した時にはレコード店に寄って買ってくることもありました。上記のJAROや渋谷ヤマハが主です。ICP、Incus、FMPなどのヨーロッパ盤やアメリカのAACM関連や自主レーベルなど。1970年代半ばちかくになるとディスクユニオンが登場し、80年代には仙台でもディスクノートやレコードギャラリーなどマイナーな輸入盤を扱う店ができて、フリージャズレコードの入手は楽になりました。

渋谷JAROの柴崎研二さんは自分の店を開く前は渋谷ヤマハでフリージャズの担当者だったと聞いたことがありますが、四谷のジャズ喫茶イーグルの後藤さんの対談集に登場して面白いことを話しています。

後藤雅洋◎対談集『ジャズ解体新書』(JICC出版局 1992年6月)

「ひところフリー・ジャズに力いれてたとき」というのはアヴァンが通販でレコードを買っていた時期ですね。お勧めをたくさん買っていました。

脚注のノイズ・ミュージックの項に「ターンテーブル奏者のクリスチャン・マークレーをはじめ、ジョン・ゾーンの手がけた音楽の一部もノイズ・ミュージックに属する」というのがなんとも雑なくくりですね。後藤さんが書いたのでしょうか。

「フリーのファンは必ずと言っていいほど他の音楽も聴くんだよね」「バップ・ファンはフリーを聴かない人が多いし、すごく依怙地でね」「フリーが専門という人は、バップもフュージョンも聴くね」

このあたりの発言内容は今も通じる気がしますが、どうでしょう。自宅のハイエンド・オーディオを自慢してコンサバなピアノトリオだけ聴いているおっさんなどはライヴに行くはずもなく、ライヴハウスは無視してコンサートホールの「大御所ジャズ」だけに行く人たち、とか。そして4ビートのセッションをちゃちゃっと演奏して「一丁上がり!」とやっている自称ジャズ・ミュージシャンたち。コピーに終始して伝統芸能探求さながら、そして「ジャズの本場はアメリカ」を唱えます。そういう人たちはフリージャズなど視野に入ってこないのでしょう。

柴崎さんの手厳しい発言は面白いです。実態を知っているからこそ言えるジャズ愛好家の生態。

今回の冒頭の画像は古いジャズ雑誌で見つけたジャズ喫茶の広告。世界的(?)作家にして今や映画賞総なめの日本映画の原作者がかつてやっていた店。私とはジャズの好みが真逆なマスターなので行くこともありませんでした。 

今回の締めは「ノイズ・ミュージック」に属するとされたクリスチャン・マークレーを。東京都現代美術館では「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」を2月23日まで開催中です。

それでは動画のリンクを

『More Encores』


 

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