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アゼルバイジャンの幻想的な映画『鳥たちへの説教』

観ていて、とても不思議な感覚におちいる映画だった。今年の東京国際映画祭コンペティション出品作の中で、もっとも異色といえるのではないか。

古木が生い茂る美しい森の中にたたずむ男女。アゼルバイジャンに行ったことがないので、想像もつかないが、こうした風景が身近にある国なのだろうか。アシの生える沼沢地も現れる。こちらは、隣国イランのカスピ海沿岸地方にもよく見られる景観だ。

俗世と隔絶したような森の中にも、戦争の影が忍び寄っている。砲弾の着弾音や銃声が聞こえる。そして悲劇が起きる。戦闘シーンを描かず、戦争の具体的な内容を一切説明しないからこそ、今、世界のあちこちで起こっている武力紛争を想起せずにはいられない。アゼルバイジャンも、長期にわたり、隣国アルメニアとの紛争を続けている。人間という生き物の悲しさを感じずにいられない作品に『鳥たちへの説教』という題名がつけられているのも、また謎めいている。

2021年の東京国際映画祭に『クレーン・ランタン』を出品し芸術貢献賞を受賞したヒラル・バイダロフ監督の作品。通常中東には含めていないアゼルバイジャンの作品だが、戦争を主題に扱っていることもあり、このnoteマガジンに含めて紹介することにした。

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