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森に住む猫の晩年 穏やかな日々

猫の14-15歳は人間でいうと70代なのだそう。私が自宅近くの小さな森に住んでいる「くろちゃん」と名付け可愛がっていた猫を13年前からお世話している方が昨年病院へ連れて行き、くろちゃんは腎臓の病気でもうあまり長くないかもと教えてくれました。その時のくろちゃんは無垢な表情でじっと私を見つめて何だか穏やかに悟っているようだったのが今でも目に焼き付いている。でもその時は餌もちゃんと食べていたし水もよく飲んで元気そうに見えたのでまさかと信じていなかった。

くろちゃんに出会ったのは5年ほど前。5年の間に2回行方不明になっていた。前回は3年前の初詣に行った帰りに再会して、昨年9月のお彼岸のお墓参に行った帰り道にまた偶然の再会をした。この猫は何か特別なものを持っているなと思っている。 しばらくしてくろちゃんが毎日現れる時間と場所がわかり又休日に会いに行く日々が始まった。

くろちゃんが怖がっていた「ライオンちゃん」という大きな猫とは相変わらず苦手みたいだったけど少なくとも隠れてしまうことはなくなっていた。でもカラスに餌を譲ってしまうのは5年前から変わらなかった。餌スポットには入れ替わりにいろいろな人が来ていた。犬の散歩をしながら餌を器に入れていく人もいたり、サラリーマン風のおじ様がお弁当箱のようなものを持参してきたのも見た。病院へ連れていった方は薬をミルクに溶かして器にいれて置いたりして、くろちゃんがが飲む時もあればライオンちゃんが飲んでしまう時もあった。

2021年の元旦、初詣の帰り道まだくろちゃんが現れる時間よりだいぶ早かったが遠くから聞きなれた鳴声が聞こえてきて、くろちゃんが木の茂みの中から出て来てくれた。もしかしたらと思って携帯しやすい「ちゅーる」を持ってきていて美味しそうに食べた。

1月になってからの3連休の頃、朝の気温が氷点下で寒い日が数日続きくろちゃんが心配で休日は毎日様子を見に出かけた。くろちゃんは元気そうに見えたがこの頃から水を飲まなくなっていたのが気になっていた。日中も晴れてない時は気温が低いから多分冷たい水を飲めなかったのかもしれない。ぬるま湯を持ってきてあげればよかったと後悔している。

1月17日、いつも遠くから私の姿を見つけると駆け寄ってくれたのにこの日は枯れ葉の上に横たわっていてゆっくりと起き上がり餌はいつものように食べていた。食べ終わると私の後ろ側にそっと寄り添ってきた。この日がくろちゃんと会うのが最後になってしまうなんてその時は分からなかった。それから3日後くろちゃんは皆の前から静かに姿を消してしまった。

続く