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示現流チェスト問題~チェストに悩む当事者たち~

 先日のクルーズ旅行で鹿児島に寄港した折、示現流兵法所資料館へと立ち寄り、そこでスタッフの方から詳しい説明を受けることができた。


味深いお話を色々とお伺いしたので、それを皆さんにもお伝えしたいと思う。今回は特に上記の「示現流チェスト問題」に関して、広くお伝えしたいので、そこまでは無料で読めるようにする予定である。

■示現流チェスト問題

 これは何かというと、示現流では打ち込みの際に「チェスト」と掛け声を出すという誤解が一般に広まっている、という話である。

 薬丸自顕流の横木打ちの動画を御覧いただきたい。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm14759052

 これを見ても分かると思うのだが、「チェスト」とは言っていない。「キィェェェェ~~~~~~~エエエッ!」という感じである。基本は連打なので、「スト!」で声を止めるタイミングがないのだ。

 これは薬丸自顕流の話なので、もしかすると示現流では「チェスト」と叫ぶこともあるのかと思っていたが(薬丸自顕流は示現流からの派生)、やっぱりそんなことはないらしい。資料館スタッフの方の説明によると、基本の掛け声は「エイ」であり、それが「(チィ)エェェェ~~~~エエエッ!」とか「(キィ)エェェェ~~~~エエエッ!」とかに聞こえることはあるだろう、とのことだが、「スト」で止めることはやはりない。

 現場では入門者が「チェスト」と掛け声を出そうとすると注意が入るという。上記の理由から、単純に「チェスト」の掛け声で打ち込みを続けることができないからだ。しかし、大抵の人は示現流といえば「チェスト」というものだと思い込んでるので、現場ではまあまあ困っているようである。

 ただ、私はエンターテイメントを生業とする作家という立場上、それらの事実は尊重するにしても、「チェスト」という掛け声が示現流、ひいては薩摩藩士の象徴的ミームとして、広く親しまれている事実も直視せざるを得ない。「チェスト」は歴史的事実ではないにしても、例えば『衛府の七忍』に出てくる「誤チェストにごわす」がエンタメ的に間違いかと言われれば、明らかに正解と言わざるを得ないのだ。

 というわけで、私としては、チェストをエンタメとして楽しみつつも、皆さんには示現流(薬丸自顕流)とチェストの実際も踏まえて承知しておいて頂ければ……という立場である。

■現代の示現流道場

 現代において、示現流はどのような立ち位置なのだろうか? どのような人たちが、どのような動機から入門し、示現流を修めているのだろうか?

 まずは道場の様子からご紹介しよう。

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