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はじめまして、「座る学」


はじめに

この記事をお読みのみなさん、いま座っていますか?

ご自宅のソファでなかば寝転んでいる方、電車の座席に座っている方
あるいは職場や研究室のデスクでオフィスチェアに座っている方…
もしかしたら畳や芝生などに直に座っていたり?

大きな噴水を囲って休む人々
上野公園大噴水前
撮影:Ryoma Okamoto 2023.6.17

せっかくなので、もう少し座っている状況について踏み込んでみましょう。

みなさんは今どんな姿勢でしょうか?
脚を組んで背にもたれたり、ソファに伸びきっていたり、あぐらをかいている方もいるでしょうか。

座っているのはどんなところでしょうか?
柔らかいクッション地の椅子、木製の椅子、あるいは畳や板の間…
路上なんて方もいますかね。

座っている周りの環境はどうでしょう?
室内あるいは屋外、家あるいはお店やオフィス、乗り物の中…
日差しがあったり風があったり、隣に人がいたり。
もしかすると何人かで集まっているところでしょうか?

低椅子に腰かけて談笑するイームズ夫妻
Eames house (Los Angeles, Calif), 1958
photograph by Julius Shulman
© J. Paul Getty Trust. Getty Research Institute, Los Angeles (2004.R.10).


そこに座ったのはなぜでしょうか。
リラックスしてスマホをみるために、ソファを選んだ方もいるでしょうし、畳に寝転ぶことにした方もいるでしょう。

また日本でお読みの方が多いかもしれませんが、もしかすると海外にいらっしゃる方も?国や地域によっては、「そこに・そのように座ることはタブー」なんてこともありますよね。

ざっと挙げただけでも、座っている場面は無数にありそうです。

あまりに日常的な行為である「座る」ですが、姿勢や座ることを支えるしつらえ、座る状況を生み出している要因にまで目を向けると、「座る」さまにひそむ文化や人の意識が顔を出してきそうです。

こうした気づきから生まれたのが「座る学」なのです。


「座る学」の概要

「座る」は、「歩く」「寝る」に加えて人間の基本姿勢だといわれますが、
「歩く」には移動、「寝る」には睡眠という目的が伴う一方で、「座る」は、休息や作業、食事などさまざまな行為の目的がある点で、前の二つとはやや異なるでしょう。

「座」の字形


そもそも「座」の字は、土の上に人間が二人居ることを意味する「坐」に「广」が屋根をかけて坐す人を護るさまを表しており、覆いの下の空間の広がりを含めて「座」であることがうかがえます。

自然の土地にいかに自分たちの「座る」居場所を構えるか、気候や文化・慣習、坐の目的や周囲の環境に即しながら空間を伴ってさまざまな形式が編み出され、地域や時代を越えて多様な相を呈しています。

脚を折ったプラスチック製椅子で休む女性
ベトナム・ホーチミン ティゲー市場(Cho Thi Nghe)
撮影:Ryosuke Koizumi, 2020.8.21


そこで、「座る学」では、具体的な「座る」の場面をみることを通じて、「座る」の在り方を分野横断的に把握する枠組みをつくりながら、さまざまな「座る」場面を体系的に捉えることを試みます。そしてその先に「座る」の在り方の骨格と多様性、さらには身体と環境にまつわる新たな体系を見出すことを目指します。

「座る学」の方法

「座る学」では、座ることを成立させる基礎的要因と字形の成立ちに由来して、以下の四つの水準によって「座る」の在り方を捉えます。

  • 座姿勢:人間の身体にみる坐の姿

  • 座部:人間の坐を直接支える部分

  • 座環境:「广」の広がりに示されるような周囲の環境

  • 座文化:「座る」に関連した文化・慣習

「座る学」の見方

私たちはこのような水準で、様々な時代・地域の「座る」を観察し、「座る」にあらわれた土地の文化を探っていきます。

ようこそ、「座る学」へ!

儀礼村で祭礼の準備をする風景
Saga Traditional Village, Flores island, Indonesia
撮影:Satoshi Nasu, 2018

(つづく)

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