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男の元を去った女 日記2016 冬 浮遊


某日

なんだか冬眠中のシロクマのように
彼とくっついて眠る
本棚から 人のセックスを笑うなを引っ張り出すと
頁が歪んでいた
そういえば バスタブにおっことしたんだった

彼が言うには
純がいないと いない感がハンパないのだそうだ
純は湯たんぽなんだとさ

「だから荒野で」で鈴木京香が食事を作ると
うまかーと言われて
本当に嬉しそうにしていて
食事を作って おいしいと言ってもらえる事って
大切なんだよね
と、
うんうんと見ていた

某日

昨夜はカポーティのあるクリスマスと
春樹の風の歌を聴けを読んだ
風の歌は フライドポテトが食べたくなる小説だ
指が4本しかない女の子は ちょっと小川洋子を思い出した


彼はかなり春樹の影響を受けている
春樹によって 良い読書体験 良い音楽
そういうのが
良い意味で感化されるのは素晴らしい、
と思う一方で

で、一緒に暮らしてる女が純?
という疑問が湧き上がらなくもない

それは おせんべいを食べながら、珈琲を飲んでいるような
にわかな 歯痒さとでもいうべきか、、
うーむ



見れないと思っていたNHKのガラスの家が見れた
重力の虹、ピンチョンが出てきてウォーっと思う


彼はあゆみという女の子をあゆみと呼び捨てにするくせに
純のことは純ちゃんと言う
LINEで純とメッセージしてきて
わざわざ 間違えた
と、送ってくる

なんでやねん(笑)

いっくら 純が呼び捨てにしてと言っても
純ちゃんは純ちゃんの方がイメージ と言う
大学生のゆうきと付き合った時もそうだった
まあいっか
可愛いって言ってたし(ぇ)


彼に純の才能に惚れたっていう人もいるんだよ
と言っても
秒速でスルーする
だが、純の悪口話とかは にこにこと楽しそうに読んでいる
こんにゃろめ

さて、風呂に入ってくるか

某日

ガラスの家を観終えて
江國香織の神様のボートをこんな話だっけ?と思いながら再読する

ガラスの家も神様のボートも
だんなさんをあっさりと捨てて、別の男の人に恋する話で
不埒な純は不覚にも 見ていて癒されてしまう


夜の色を映したような白いというより
灰色の雪が降り積もる庭を見ていた
不機嫌な顔をして喜一(元夫)が 唇を尖らせる
山形のスキー場
あれは何年前だったか

なんで純はいつも男の人の人生をめちゃくちゃにして
しまうのだろう

ガラスの家では あなたは私を愛していない
征服したいだけよ、と妻が言う
征服したいのも愛だと男が言う


取り残された男たち
終(つい)まで 添え遂げられなかった者たちの
取り残された愛は 亡霊のように彷徨い続けるのか

けれども 男の元を去った女にも
いつまでも想いは浮遊するのだ


降り積もる雪も
始まりは地面に落ちた 雨粒が天に戻り
再び 舞い降りてきたもの


掌にのせれば 儚くとけてゆく

遠い記憶の温んだ雨水を
孕みながら


すべてが 零からの 始まり同士
なんてもんは 存在しない

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