憲法記念日に寄せて(数日遅れ

皆様こんばんは。
5月3日は憲法記念日ということで休日でした。

憲法はすべての上位法である!という言説は間違ってもいないですが正確ではありません。憲法は統治機構の基礎を定める部分と人権保障の基礎を定める部分に分かれます。これらの条項を定めた憲法に違反する法令は違憲となるというのが現在の裁判所における違憲審査制度です。
「違憲審査制度は具体的事件に付随して行われる」という付随違憲審査制のあらましなどについてはいつぞやの判例時報の増刊号で詳しく述べられていましたので、そちらをご覧いただきたいです。

さて、法令自体が違憲となった事例はほとんどありません。
尊属殺人規定違憲判決、薬事法距離制限規定違憲判決、議員定数配分規定に関する違憲判決(ただし選挙結果自体は合憲)、森林法共有林分割制限規定違憲判決、郵便法免責規定違憲判決、在外邦人選挙権制限規定違憲判決、非嫡出子国籍訴訟判決、非嫡出子法定相続分規定違憲判決、女性再婚期間規定違憲判決、在外邦人国民審査権制限規定違憲判決、性別変更要件(生殖機能喪失)規定違憲判決です。

適用違憲判決はまあまああるのでいちいち述べません。

さて、これらを審査する裁判所の予算はどうでしょうか。
国会、行政、司法という国家権力の3分の1の機能を担うはずの司法の予算は、国家予算の1%にも満たないのです。
参考:
https://www.aiben.jp/page/library/chukei/c1408yosan.html

裁判所の予算ひっ迫は深刻であり、職業裁判官のリクルートにも影響していると伺います。本来は検察官と裁判官を増やすことも前提に進められたはずの司法制度改革は完全に失敗し、巷には弁護士が溢れています。社会問題が法的に解決されることも増えたとは思いますが、検察官と裁判官に掛ける予算がもっと多くならないと話になりません。

最近、国政では共同親権の導入など、家庭裁判所の仕事を増やすような法改正をしようとする動きがあります。仕事を増やすならば予算も増やすべきです。
また、裁判が遅滞している原因は職業裁判官と裁判所書記官/裁判所事務官の数の不足です。特に地方の裁判所の支部では、裁判官は1名か2名で、彼/彼女は多忙さは破滅的です。給与もその職責に見合うものとは到底思えません(それはキャリア官僚にも言えます。)。いまだにバランス釜の風呂に入る裁判官ですよ?人は衣食住足りて法を知ります。マジで国頑張れ。

もちろん、社会保障費も大事です。私も抗がん剤で生きており、社会保障費の削減は死に直結します。しかし、国家としての制度を整えることの重要性がないがしろにされているのではないでしょうか。
そして、こっからは個人の意見ですが、政治家は市政から金を集めることも仕事の一つであり、各種の制限は撤廃するべきとも考えています。金がないと人は来ませんが、行政と司法は国からの予算(もしくは使途を定めない寄付)で運営されるべきと考えます。

憲法を守れというならば、デモで訴えるべきことは司法予算の拡充です。
70代80代の街中デモおじいさんおばあさんはそのことを理解しているのでしょうか。理解しようとしているのでしょうか。自分たちは年金でほくほく暮らし、もしくは生活保護で何もせずとも金がもらえるような人たちが、国家予算を使った警察に安全に守られた状態でデモをしても、何が政治かと思います。

一方、政治家は命を懸ける仕事であり、改憲を叫ぶならば(とくに大日本帝国憲法への回帰を目指す自民党案ならば)、相応の覚悟を持つべきです。
憲法記念日には年齢が高い順から、自民党の衆参議員の先生が、一年一人、国会前で、「天皇陛下万歳」「大日本帝国万歳」と叫んで腹を切るべきだと思います。私はその日を待っていますが、誰も国に殉ずることをしていません。

護憲派も改憲派もちょっと認識が甘いんとちゃうかと。

私たち法律家(学者の先生方も含む)は、現在の憲法学の発展と深化のために、論文を読んで知見を世間に提供しています。
ただ、それらはあくまで判断の前提として皆様に提供するものです。そのうえで、活動されるのは政治家の方々であり、国民一人一人だと思います。わたしも国民の一人としてこのnoteを記すものです。

空虚な護憲論、改憲論がはびこっていますが、どちらも真剣さが足りません。
護憲を叫ぶ方々には、生活費を削って裁判所へ寄付することをお勧めします。憲法を守れとは、すなわち今の司法制度を守れということです。ならば裁判所への寄付が一番でしょう。
また、自民党の先生方には、命を懸けた改憲運動を希望しています。
私は政治家の方を尊敬しています。安倍元総理のように命を落とされる方もおられます。批判も強いでしょう。何をしても批判される職業です。
それでも、言説と行動で国を変えようとしている姿は尊敬するべきだと思います。ただ、曲がりなりにも70年ほどの歴史が積みあがってきた憲法です。国の形を変えるものです。「国体」を変えるならば、国会議員は命を懸けるべきと思います。

憲法記念日に寄せて、敢えて少し過激なことを書きました。お目汚し失礼しました。


追記
後期の三島由紀夫を読むとこんな感じになります

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