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幼い私を輝かせつつも蝕んでいったもの

世俗的成功者があるとき「農業こそ文明の基本」とリタイア宣言して土地を買って農業にいそしむ話をたまに目にします。

ただそうのは、広大な家敷があってその塀の内側を田んぼや畑にしているのと実質同じのケースが多いようです。

個人主義を貫くには、塀で囲まれていないと成り立たないのです。

それから個室ね。

読書という忌まわしき快楽、新興宗教。

(幼い頃、本を読む以外に何もできない、重度身障者な日々を過ごしたのがスタートライン)

これらを支えてくれるのは親の資産、それなりの家敷。

その足元に広がるのは堅固な社会階級か、でなければ親やその親からの知的資産。

でなければ当人の圧倒的な才能。

子どものときの私は向かうところ敵なしでした。主観です。本当にそうだったわけではありませんが。

テレビのクイズ番組でどんな問題にも即答して勝ち上がっていく(または勝ち残っていく)のを才能とか天才とか呼ぶのであれば、その類の子どもではあったと思います。

答えを事前に知っていれば誰だって即答できます。

母によると、自分は子どもの頃怖いくらいご陽気な子どもだったそうです。それは恐怖の裏返しでした。いずれ食いだめが効かなくなる、この独り勝ちはいつまでも続かないと、ことばにはしなくても感じ取ってはいたのでしょうきっと。

先月亡くなったあの漫画家さんの出世作には、能天気な人々がいっぱいでてきます。ゲンゴロウ島にあるというペンギン村の住人たちです。桃太郎さんやゴジラたちとともに、何があってもAHOなことを楽しむ住人たちの暮らす、能天気で楽天的な世界。

やがて連載終了が近づくにつれて、唐突に神様が現れ、この地球は滅ぼさねばなるまいと前から考えていてそれを実行しようとするのですが村の人びとのアホぶりを見て、しばらく放っておこうと考えます。「どうせいずれ滅びるし」

ご陽気世界を描く裏で、冷徹な作者の目線がちらっと現れたように思います。



話が脱線してしまいました。子どもの頃の私のご陽気さは、今思うと「これは長くは続かないし」という諦観と恐怖の混じったものだったのかなって、実際続かなかったその後の長い長い時を今も生きている私は、ときどき思うのです。

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