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#下克上箱根駅伝 エピソード2006(亜細亜大学)

もうひとつの下克上

昨年放映された鈴木亮平さんが主演を務めるTBS日曜劇場『下克上球児』というドラマをご存知でしょうか?
『下克上球児』は、10年連続で初戦敗退していた三重県立白山高校が、2018年に甲子園出場を果たした実話に基づいて作られたドラマです。
しかも甲子園出場選手の殆どが第一志望への進学が果たせなかった生徒達であることから、まさしく「雑草軍団」による下克上でした。

この白山高校が「日本一の下克上」を成し遂げる一回り前の戌年、12年前に、もう一つの下克上がありました。

第82回箱根駅伝を優勝した亜細亜大学です。

当時は駒澤大学が4連覇中であり、出雲駅伝王者の東海大や全日本を制した日本大学が優勝候補に名乗りを挙げていました。
優勝候補校のランナーはインターハイ出場当たり前、世代最速、全国一位が揃うエリート集団であり、この構図は第100回大会を迎える2024年と変わりありません。

一方、亜細亜大学は、出雲8位、全日本11位であり、優勝候補とは縁遠い立ち位置にありました。
また選手についてもエースで、何とかインターハイ(それも3000m障害)に出場している程度で、実績の無い無名集団でありました。
直接関係はありませんが、学生自体も第一志望で入学している者は珍しく、全員が何らかのコンプレックスを持っている「雑草軍団」というのが当時の亜細亜大学でした。

ここまでディスって学校関係者に失礼では?とお思いでしょうが、心配ご無用です。私もコテコテの亜細亜大学卒業生です。

駅伝の魅力

詳しい方には釈迦に説法になりますが、駅伝は10人が襷をつなぎ最後の走者が、一番最初にゴールテープを切ったチームが勝利する競技です。
なので10人のコンディション管理や、走者順やペース配分などの作戦が重要となることから、駅伝は個人競技が多い陸上競技の中では数少ない集団競技といえます。

スーパーエースが活躍しても、どこかの区間で大ブレーキが生じると勝負の行方はわかりません。11時間という長い時間をいかにリスクコントロールするかというのも駅伝の魅力です。

そのような競技を「雑草軍団」はどのように制したのでしょうか。

出来る事を確実に

亜細亜大学の第二区順位は13位です。
このままだとシード権も獲得出来ない順位ですが決して慌てません。

「出来る事を確実に遂行する」

才能も実績も無い人間は、実直に自分の出来る事をするしかありません。
才能がある者よりも、選択肢が少ない分、迷わず割り切ることが可能です。
その後、慌てずペースを保ち確実に順位を上げて往路は6位で終了します。
しかし往路6位からの逆転優勝は史上どの大学も成し遂げていません。

波乱の復路

2日目の復路は気温が急上昇しました。
首位を独走していた順天堂大学の選手が脱水状態となり失速。
他校も暑さでペースを落とす中、暑さに強い亜細亜大学の益田選手が本領発揮して、5位から2位に順位を上げます。
亜細亜大学は9区で初めて首位になり、そのまま大手町のゴールテープを一番で切ることとなりました。

繰り返しますが、駅伝は10人が襷をつなぎ最後の走者が、一番最初にゴールテープを切ったチームが勝利する競技なのです。

うさぎとかめ

亜細亜大学は、往路重視のチームが多い中、復路に強い選手を揃えていました。強さの基準はタイムだけではありません。
雨にも風にも雪にも、そして暑さにも負けない強さもあります。
まさしく雑草の強さです。

彼らは身の丈を知り、脇目も振らず実直に自分の役割を果たしました。

童話「うさぎとかめ」で、うさきが亀に負けた原因は、うさぎは亀に勝つために走り、亀はゴールをひたすら目指したからという説があります。

くどい様ですが、駅伝は10人が襷をつなぎ最後の走者が、一番最初にゴールテープを切ったチームが勝利する競技なのです。

往路も復路も一位では無いが、総合優勝する。
そんな勝ち方が出来るのも団体競技である駅伝の醍醐味です。

今年は記念すべき第100回の記念大会です。
陽の目に当たらずとも実直に頑張っている人達を勇気づける大会になる様、密かに祈念します。



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