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モンゴルとゴビ砂漠⑦遊牧グルメ編その一

ズルガナイオアシスではモンゴリアンデスワームを確認する事はできなかったが、後日動体検知カメラに謎の動きをする物体が一瞬映り込んでいる事が判明した。これが一体何なのか、未だデスワームの可能性を捨てきれていない。
それをまだ知らずにオアシス調査を終えた我々は再び長距離移動し、聞き込みを兼ねて新たなゲル集落を訪問しゴビグルメに舌鼓を打つのであった。


モンゴルの遊牧民にとって馬は何と言ってもかかせない。老若男女誰もが乗りこなすという。
かつて無敵と謳われたモンゴル帝国の強さたる所以は馬による物が大きい。
モンゴル以外の世界では一般的に馬を所有し乗りこなすということは相当稀であったそうだ。当時の騎馬は現代に例えると戦闘機のような物だという話を聞いたことがある。
つまり当時のモンゴル帝国は各家庭が戦闘機を所有し、かつ全員操縦できるというイメージだ。機動力と攻撃力が凄まじかっただろう。
多くの国を攻め落し、驚異的に領土を拡大していったのも納得が行く。

戦闘機と少女

現代ではすっかり戦闘のイメージは薄れてしまったが、脈々と馬との関係は受け継がれている。
以下の写真を見て欲しい。
分かりづらいが少年の乗馬の練習風景で、奥側に祖父らしき老人がバイクで並走しながら指南しているのだ。

バイクという便利な移動手段があるのにも関わらず、しっかりと子供に乗馬を習得させるのは感慨深い。
馬は今も昔も大事なパートナーなのだ。

馬との付き合いの重要性は馬乳酒にもある。
野菜不足など元来栄養に偏りがちな遊牧生活には大事なものだ。
季節性繁殖の馬から搾乳されるミルクは発酵過程を経て夏頃に馬乳酒となって飲まれる。アルコール度数は1〜2%程度で栄養価はとても高く、シーズンになると馬乳酒以外食べ物を摂取しないで過ごす人もいるというから驚きだ。

我々は集落で馬乳酒が飲める情報を聞きつけご相伴に預かることができた。
それは集落ではなく広大な大地にポツンと一軒佇むゲルにあった。

来客を見守る犬たち

ゲル内には赤ちゃんを抱く女性とその夫がいた。
ガイドのOさんは馬乳酒を飲ませて欲しい旨伝えると、茶碗に入った白い液体が我々に振る舞われた。
グビッと口に含むとほんのり酸味のあるサッパリした味わいが広がった。例えるなら甘くない飲むヨーグルトといった印象だ。
クセがなくゴビの乾燥した気候に潤いをもたらすようにゴクゴク飲める。美味しい。

馬乳酒


Oさんの通訳を交え主人と会話をしていたところ、突然奥さんが着ていた服を捲り上げ乳房が露わになると、抱えていた赤ちゃんに母乳を飲ませ始めた。
我々調査隊は声を発せずとも明らかに狼狽してしまった。母乳を飲む赤子の向かいに馬乳を飲む男性陣とはとても異様な光景であった。主人は気にする素振りは微塵もない。
我々は目のやり場に困り飲み干した茶碗の底をただただ見つめるばかりであった。


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