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取材日記 赤ちゃんクラブの会員は、なぜかエリートばかり

 20年以上前の話になるが、会員制の赤ちゃんプレイ専門店を取材した。場所は吉祥寺で、保育士の資格を持つ女性がママになり、男性はおむつを着用し、2時間赤ちゃんになりきって払う金額は3万円。

 どんな会員が多いのか30代の経営者に聞くと、なぜか社会的地位が高いエリートばかり。医師、弁護士、スポーツ選手、公務員、それから銀行員や証券マンもいた。彼らの目的は赤ちゃんに戻って大泣きすること。保育士に「なぜそんなに男性たちは泣きたがるんでしょう?」と質問してみた。

「皆さん、仕事ではたくさん辛い体験をしてストレスが溜まっているんです。でも、愚痴を奥様に言おうものなら、『男でしょう?しっかりしなさい』『強い男だと思っていたのに幻滅したわ』などと批判されるんです。だから、すべての演技から解放される場所が必要になるんです」

 取材中にも「わあ~っ」と複数の個室から、号泣する様子や「よしよし、オッパイ飲む?」といったやり取りが聞こえてきた。会員は哺乳瓶からミルクを飲み、おむつの中にオシッコをすると、スッキリした気分でまたやる気が出るらしい。

 保育士さんたちは大人の両足を持ち上げておむつ替えをするので、あまりの重さにみんな腰を痛めてしまうという。この部分は介護職と一緒だ。人気だったのは、「お泊り保育」で一泊してママに添い寝してもらう企画で一晩7万円。

 苦しいときに男らしい演技をしながら生きるのは辛いこと。寝るのと泣くのが主な仕事だった、赤ちゃん時代に戻りたくなるのだろうか?

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