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桜色とCHANELの48番

桜色が似合っていた。薄いピンク。似合っていたからか、それとも好きだから似合うのかわからないが私は桜色が好きだった。
リップもチークもアイカラーもふんわりすると気持ちも和らいだ。

でも20代のその当時、流行っていたのは濃いピンクや赤だった。
雑誌には口元に濃いピンクや赤をつける女優さんやモデルさんで彩られていて、明るく思いっきり笑っている姿はとても大人に見えた。
そこで紹介されていた口紅で覚えているのはCHANELの48番。
私もさっそく買ってつけてみた。
ギョッ!やっぱり口だけ浮いている。
モデルさんのように目も口も大きくて、笑うと綺麗な歯がずらりと並ぶなら似合うだろうが、それらの要素は私にはない。
それでもつけるだけでお洒落な女性になれた気がして、鏡の前で思いっきり口を横に広げて笑ってみたりしていた。はたから見ると怪奇。だがまあ私にもかわいいとこあったんだな。はは。
そんなこんなで口だけ目立つ状態でしばらくの間過ごした。流行りの髪型にしてみたりして雑誌の真似ばかりしていた。

そして当時のモデルさんは今も綺麗で今度は薄い色の口元もとても似合っている。肌に近い、それこそ桜色。
いいなあ。
あの頃は私にも似合っていた桜色、私にはもう似合わない。
薄い色をつけようものなら同僚に、「しんどそう。大丈夫?」って心配されるのがオチ。
もう真似はしない。

それでも桜色ってやっぱりふんわりした感じで好きだ。
今は桜色のハンカチを持っている。
広げると桜の花びらが何枚か舞っている。
これなら大丈夫。ね。


#シロクマ文芸部

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