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"別れを笑顔に"




みなさま
いつも読んでいただきまして
ありがとうございます。

実家でぬくぬくしていたら
あっという間に日が経ってしまいました。

今回のイディオムは
"make my day"です。

"make my day"の意味

「あなたのおかげで最高の日になった。/
あなたのおかげで幸せな日になったよ。」

相手に何か良いことをしてもらった際に
使えます。

ちなみに
ポジティブな意味で使用されることが
ほとんどですが
使い方の状況次第で
(例えば
相手と険悪な状況になってしまった時、
喧嘩中など)
相手を挑発するような言葉として
捉えられてしまうことも
あるそうです。

*ご参考までに‼︎

“別れを笑顔に"  
イディオム小説風ストーリー


真冬に
あえて冷たいジンジャーエールを
自販機で買って
学食前のベンチに座る。

冷えた液体が
身体に染み渡り
目が覚める。

ジンジャーエールのラベルには
"Canada"
と書かれていて
その国名は
涼介にとって
親しみのある国名のはずなのに
こうして日本に戻ってくると
はるか遠くの国に感じる。

「そろそろ、旅時(たびどき)かもしれない。」
と思う。
旅時は
涼介が勝手につくりあげた言葉で
旅に出る時期かもしれないなぁと
身体が感じるのだ。

そうなると
居ても立っても居られなくなり
スマホで格安航空券を検索する。

韓国、タイ、ベトナム
次々と表示される国名をみて
まだ訪れたことのない
異国の地に想いを馳せる。

「お、涼介じゃん。
キャンパスにいるのめずらしい。
てか、授業ちゃんと出てんのかよ。
またお前の代返すんのは、勘弁だからな。」
とクラスメイトの宗谷に
突っ込まれる。

涼介が返答するより先に
「ちょっと。代返したあげたのは、宗谷じゃなくて、あたしね。
麻美様に感謝しなさいよね。」
と冷ややかな
麻美の声がふってくる。

「げっ。でたよ。そうやって恩着せがましくするのやめろよな。可愛いげがないんだよ。」
「なによ。失礼ね。」

二人はいつも
こんな調子なのだ。
物静かな涼介と違って
はっきり意見を言える
二人の性格は
羨ましかった。

「涼介もなんか言ってやってよね。もう。」

苦笑いしながら
二人を宥めるために
自販機でジュースを奢る。

「おっ、サンキュー。
てか、何でジンジャーエールなんだよ。
寒いじゃんか。」と宗谷。
「冷たっ。
でも、久しぶりに飲んだから、美味しく感じるかも。」嬉しそうに飲んでいる麻美。

相変わらず賑やかな
二人を尻目に
格安航空券一覧表を確認する。

いつもなら
直感で良さそうな
フライトを決めて
そのまま即購入するのだが
スクロールする手が思わずとまる。

気が進まないのではない。
さっきまで確かに
旅に出たいという気持ちはあったのだが
突然届いた友達申請の通知をみて
思い出してしまったのだ。
カナダで出会ったアルンのことを。

アルンとは
留学センターで知り合った。
留学生の口座開設や
学生保険の申し込みなど
生活する上で必要な手続きは
わざわざ留学センターに出向いて
行わねばならず
長蛇の列に
退屈していた涼介に
アルンは
人懐っこい笑顔で
話しかけてきた。

人見知りの涼介は
突然話かけられて
驚いたものの
アルンの物腰柔らかそうな話し方には
好感をもてたので
話をすることができた。

あんなに退屈だった順番待ちも
アルンと話していたら
あっという間に過ぎた。

去り際に
"Ryosuke, you made my day! "
と朗らかな笑顔で言われ
去って行った。

連絡先でも交換すれば良かった
と思いながら
ふと
"make my day"
という言葉が気になった
調べてみると
 「おかげで良い一日になった
/ 最高の一日になった」
という意味だった。

アルンにぴったりな表現
だなぁと
納得しながら
また会えたらいいなぁと思った。

数日経って
奇跡的にキャンパスで
アルンと遭遇した。
相変わらず人懐っこそうな笑顔で
"Ryosuke, hows doing!"
と話しかけてくれた。

その後何回か
キャンパスで会えば
一緒にランチしたり
ジムに行ったり
遊ぶようになった。

アルンは別れ際に必ず
"You made my date!"
と言ってくれた。

そんなある日
アルンがいつものように
"You made my date!"
と別れ際に言った際
思わず
"You don't need to say that to me always!"
と笑いながら涼介がいうと
アルンはすごく真面目な顔で
"Ryosuke, for me it is very important to say that instead of good bye.
There is no guarantee that we can meet up again, right?"
と言われた。
その時は
アルンの言葉を深く考えなかった。

アルンが過去に
どんな辛い別れを経験したのか
涼介には知る術がなかった。

というのも
アルンは急遽母国のタイに帰ることになり
それっきり会えなくなってしまったのだ。

それ以来
度々アルンの言葉と“You make my date"
というイディオムを思い出す。
あれが最後になるなら
笑わなきゃよかったなと時々後悔していた。

SNSでアルンの連絡先を探して
連絡を取ることは容易い。
でも
何となく気が留めてしまい
ずっと連絡できなかったのだ。

それが
突然アルンから連絡が来たのだ。
これはもしかしたら
チャンスかもしれない。

真っ暗な携帯の画面に
もう一度ふれて
友達申請のボタンを承認する。

今度の旅は
タイにしよう。
そしてアルンに会って話をしよう。

「お〜い、涼介、飯いこうぜ。
腹ペコなんだよ。」
気付けば二人は
食堂の入り口に向かっていて
涼介に向かって
大きく手を振っている。

-終-

*このお話はフィクションです。登場人物の名前は実在の人物と一切関係がありません。




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