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"本音が言えない彼女と私"



はじめに


いつも読んでいただきありがとうございます。

寒さが厳しくなるにつて
自分の動作も遅くなっている気がする
この頃です…。

この記事では
英語のイディオムの紹介と
そのイディオムを用いた小説風の短編ストーリー
を楽しめる内容となっています!

英語が苦手な方も
ぜひ
お気軽に読んでいいただけたら嬉しいです。

今回のイディオムは
"beating around the bush"
です!

”Beating around the bush"の意味

意味:「遠回しに言う」
言いづらいことを避けて話すときに使用する
表現です。

"本音が言えない彼女と私" 小説風イディオムストーリー

本音がいえなくなってしまったのは
一体いつからだろう。

日に日に
自分の意見が意味を持たず
日常が
同じことの繰り返しに思える。

おそらく
キーシャには
そんな百合の姿が
全てお見通しだったのだろう。

遂にお昼休みの時間に
"well, Yuri, do you
have a moment?"
と呼び止められてしまった。

"Yes, of course! What's up?"

堅苦しい雰囲気にしたくなくて
薄っぺらい笑顔を貼り付けたまま
明るくキーシャに応答した。

キーシャはますます心配そうな顔で
"Yuri, did something happen to you these days?
You look exhausted."
と問いかけてきた。

"Nothing, just a little bit tired
because I have keep myself busy these days. well, I have to go now."

これ以上
フェイクの笑顔を貼り付けるのは
無理そうだったので
急いで立ち去ろうとすると

"Wait! Then, what about Eric?
I can't contact him since yesterday."
と真剣な眼差しで問いかけられた。

ギクっとした。
もちろん何があったかは
知っている。
昨日の夜
二人で夜ご飯を食べに行って
酔っ払ったエリックが
手を滑らせて
携帯を川に落としたからだ。

でも
そんなこと言えなかった。
別に疚しいことがあったわけではない。
ただご飯を一緒に食べただけだ。
昨日も一昨日もその前も。

エリックは
キーシャの恋人だし
誰かの恋人に手を出したりする程
自分はそんな
卑怯な人ではない。
そんなことを思っていると
キーシャは
心配そうに話続けている。

エリックは、
ちょっと抜けてる所があるし
最近私も忙しかったから
そっけなかったかもしれないし...
でも百合と一緒にご飯に行くとは
言ってたから大丈夫だと思っているし
云々

単刀直入にきいてこない
キーシャに思わず
" Please stop beating around the bush!
You can just say your honest thought!"

こんなことを
言える権利は百合
には全くなかった。
むしろ"beating around the bush"
をしているのは
自分自身だった。

驚いているキーシャに
追い討ちをかけるように
"Yes, I also met him yesterday!
We had a such a wonderful time!"
と言った。
キーシャは
大きな目をさらに見開いて
"I can't believe it!"
と言って
そのまま走り去っていった。

これで良かったのだ。
自己暗示をするかのように
自分に言い聞かせる。

キーシャとは
同じ大学で仲良くなった。

日本の大学ではなく
海外の大学で挑戦して
海外で成功したいのだ。

親を無理やり納得させて
海外の大学に入学した。

もちろん
そこそこしか英語ができない
百合にとって
現地の学生と同じように
授業の単位を取るのは容易ではなく
腱鞘炎になるのではないかと
心配になるくらい
重たい鞄を毎日抱えて
朝から晩まで大学の図書館に通っては
必死で授業についていこうとした。

そんな時
遂に身体が
悲鳴をあげ
図書館で貧血を起こしてしまった。


たまたま近くにいた
キーシャが
救急センターまで付き添ってくれて
初めて会ったばかりだというのに
栄養不足の百合にのために
親切に夜ご飯まで作ってくれた。

それから
一緒に勉強したり
プライベートでも出かけるようになり
距離を縮めていった。
オーストララ出身のキーシャとは
お互い母国語が英語でないからか
気後れせずに
英語で話すことができた。

大学卒業後も
母国に帰らないことを決めた百合と同様に
キーシャも
アメリカに残って
就職先を見つけることになった。

幸い
二人とも自分達の目標が叶う会社
かつ
驚くべきことに
部署は違えど同じ会社に就職し
努力が報われた喜びをお祝いし
ゆくゆくは
二人で起業する目標まで語り合った。

それなのに
いつからか
百合にとって
日々は同じことの繰り返し
あんなにやる気があった仕事に対しても
モチベーションが
上がらなくなってしまった。

一方で
キーシャは相変わらず
熱心に仕事に取組み
プロジェクトにも参加できるようになり
笑顔で生き生きしていた。
そしてプライベートでも
同期のエリックと付き合い始めたと紹介され
3人で度々食事にいったりした。

"Yuri,
you are the first one to know my news!"
と言って
なんでも一番に報告してくれた。

嬉しいはずなのに
百合はいつからか
心の底から喜べなくなっていた。
黒くモヤモヤした気持ちが
だんだんとたまっていって
卑屈になる自分が嫌いでたまらなかった。

心が悲鳴をあげていた。
限界かなぁ。と思っていた百合に
声をかけてくれたのは
エリックだった。

エリックは陽気な性格で
百合の悩みをきちんときいて
それでいて
"Well, then, let's eat before great meal gets cold!"
と言って
美味しいご飯を一緒に食べてくれた。
百合にとって
それは
大きな支えになっていたが
もちろん恋愛感情ではなく
キーシャの大切なパートナーとの
楽しいひと時に過ぎなかった。

それは
エリックにとってもそうだったし
だからこそ昨日
酔っぱらったエリックに
最近頻繁に一緒にご飯を食べるのは
実はキーシャに頼まれたからだ
と打ち明けられた時も
心は痛まなかったが
一方で
キーシャにも
エリックにも
可哀そうだと思われていたことが
すごく惨めだったのだ。

もちろん
それは
実際には
可哀想と思われていたのではなく
憔悴している百合を元気づけてあげてほしい。
きっと自分が相談にのってあげるより
エリックの方が
今の百合にとってはいい気がする
と心底心配してくれた
キーシャの計らいだったのだ。

結局
百合はキーシャと気まずくなったまま

シアトルの空港で
フライトを待つため
一人ぽつんと座っている。

少しの間でいいから
バケーションが欲しいと
会社に申請したら
案外あっさりと許可が出たので
思い切ってバケーションを取ることにした。

キーシャと一緒に観ようと
約束していた
オーロラを観にいくことにした。

そろそろセキュリティゲートへ向かおうと
席を立った瞬間
”Yuri!”
と呼び止められた。

そこに立っていたのは
なんとキーシャだった。
驚く百合を
何も言わずに抱きしめ
"I will not let you go to see the northern lights alone! "
と言った。
"I am so sorry everything."
と泣きながら百合も言った。

"You are so silly!"
と笑うキーシャの笑顔を見て
やっぱり彼女には叶わないけれど
誰よりも大切な人だと思った。

-終-

*このお話はフィクションです。登場人物の名前は実在の人物と一切関係がありません。

















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